「少年よ、嘘をつけ」『深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)& 読みたいことを、書けばいい。』
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2019年9月19日 夜
スナックふかよみ
え?冗談でしょ?
そう。ジョーダンよ。
アタシはジョーダン川博士。
みんなからはパレスチナのジョーって呼ばれてる。
やめてよ良介山ママ… もうわかったから…
だからその良介山ママって誰なのよ。わけわかめ。
まさかヒロノブさん恋しさのあまり、ついに…
しっ!
ねえ!アタシをいつまでここに立たせておく気?
早く席に案内しなさいよ!どこに座ればいいの!
あっ、僕とアキノブさんの間が空いてます…
どうぞこちらへ…
・・・・・
失礼しまーす。ライフ・オン・マース。
え?
冗談よ冗談。
ところで大将。
は?
なにスットボケてんのよ。
アンタが大将でしょ?
大将って… 寿司屋じゃないんだから…
あたしはこの店のママ、深代です。
一国一城の主なんだからアンタが大将。
ところでこの店って、歌うの別料金?
歌は自由に歌えるシステムです。歌いたくなったら、いつでもどうぞ。
このピアノ使ってもいいのよね?
ええ、もちろん。
それじゃあ挨拶代わりに歌わしてもらいまーす。
歌はもちろんライフ・オン・マース。
うっひっひ…
ん? この歌詞って…
いやあ。お上手ですねえ。
サンキューベリーマッチョ。
ところで、その黄色と黒のシャツ…
もしかしてアンタも虎党?
党首やってました。
わお! すごいじゃないの!
アタシたち気が合いそうね!
ラ~ブリ~タイガース💛
(あの仕草といい喋り方といい、絶対に良介山ママだと思うんだけどな…)
では『ライフ・オブ・パイ』に戻りましょう。
次はパイの学校時代の回想シーン。
中年パイによる「なぜパイという名前になったか?」の説明です。
このシーンも全部パイの冗談、つまり「嘘」よ。
ちょー笑えるんだから(笑)
ホントにこれが全部嘘なの?
そう。ぜんぶ嘘だ。
そもそもパイは「円周率」なんて書いていない。
ええ!? じゃあ何なの?
順を追って説明しよう。
11歳までのパイは、自分のことを上手く説明することが出来なかった。
それが大きく変わったのは12歳の学年になってから。
年度最初の授業で前に出て「自分の名前はPI」と説明したんだね…
え~「日」という字わ~
あれは「日」じゃなくて「㊀」です。
円と直径ですから。
ほぼ「日」でしょーが!
なんてケツの穴が小さいこと言うのアンタは!
このバチカンがァ!
それを言うなら「バカチン」です。
人の言葉尻を捕らえて偉そうに! ほんとムカつく!
はいはい二人とも。そこまでにして。
そもそもあの「㊀」は「円と直径」でも「日」でもないのよ。
え? 違うんですか?
もう忘れたの?
「PI」とは「パレスチナ・イスラエル」の頭文字だったでしょ?
あ、そうでした…
1947年の11月に国連総会で決議された「パレスチナ分割案」では、パレスチナ地方におけるアラブ人国家とユダヤ人国家の面積の割合が、ほぼ「半々」だったんだ。
「パレスチナ側43%、イスラエル側56%」って、パイが黒板に描いた「㊀」の割合と同じっぽくない?
たぶん、わざと2つの半円の面積を違うように描いたんだと思うよ。
面積比をパレスチナ分割案と一緒にするために。
神は細部に宿る…
だからパイはこう説明したのね。
「割り切れない無理数です」
そういうこと。
そしてパイ少年は、この後の授業で徐々に「円周率」を披露していく…
どんどん「長く」ね…
ええ。
次はフランス語の授業…
その次は地理の授業…
そしてついに数学の授業で「その時」がやって来る。
パイの噂が学校中を駆け抜け、人々が数学のクラスへ殺到した…
渡り廊下を走って…
パイが「円周率」を何百桁も書いていくのよね。
それでみんな大興奮してた。
先生たちも「信じられない」って言ってましたね。
しかしこれは全部「嘘」だ。
少年パイは「円周率」なんて暗記していなかった。
マジで?
そもそも、おかしいと思わない?
どう見ても「普通の子」だったパイが「円周率」を何百桁も暗記できると思う?
そういえば、そうね…
頭は良さそうだったけど、神童まではいかない感じよね…
しかしなぜパイはそんな「嘘」を?
聞き手である作家に「神を信じさせる」ためだよ。
この「少年パイ(12歳)の学校での一日」という逸話は…
「少年イエス(12歳)の神殿での一日」のジョークなんだ。
『救世主の発見』
ウィリアム・ホルマン・ハント
ああ!これは!
『ルカによる福音書』第2章、神童イエスの神殿デビュー!
だから「柱」がたくさんある場所でパイは「円周率」を披露してたんですね!
そう。面白いわよね(笑)
『ルカの福音書』によると、イエスは「12歳」の時にエルサレムへ行き、神殿でヘブライ聖書をすらすらと暗唱し始めた。
人々は、12歳の少年が聖書の隅から隅まで暗記しているので、とても驚いたんだ。
パイの学校の人たちみたいに(笑)
『神殿での少年イエス』
ハインリヒ・ホフマン
やられた…
先生が分厚い本を開いて驚いてたのも、これだったのね…
大ボラ吹きじゃん…
そう。
12歳のパイが暗記してたのは「円周率」じゃなくて「ヘブライ聖書」の「トーラー」だったというわけ。
ユダヤ教では13歳前後に成人式「ミツワー」を行うんだけど、その「ミツワー」とは、神から与えられた戒律「トーラー」のことなのよね。
その数は「613」…
つまり円周率「3.14」とは「613」のジョークだったの…
「3.14」と「613」じゃ順序が逆だけど。
ヘブライ語は字を「右から左」に書くのよ。アラビア語とかみたいに。
あ、そっか。
パイの話は「嘘」が9割9分5厘6毛(笑)
嘘もここまでくるとアッパレよね。もう応援したくなるわ。
歌っちゃおうかな。
何を?
決まってるじゃない。
大勢の人に渡り廊下を走らせた「ウソつき少年の歌」っていったら、これしかないでしょ…
深代、歌いまーす♫
うわあ。深代ママさんはアイドル系もイケるんですね。
すごいなあ。
うふふ。年はフィフティだけど、心は永遠のフィフティーンだからね。
ウウウウウウ…
どうしました?
もう我慢… できない…
え?
アタシ、踊る!
つづく
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