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選評*一茶忌や母の名刻む竹定規
一茶忌や母の名刻む竹定規 岡田 耕
何かの折に手にした母の名が刻まれた竹の定規。きっといつも母が縫物をしていた時に使っていたもので、今は艶やかに飴色を帯びたものだろう。それを手にする度にせっせと縫物をしていた母の姿を思い出し、懐かしい思いがすると。そしてふと一茶の生涯に思いを馳せたのであろう。
一茶は三歳の時に母を亡くして祖母に育てられていたが、八歳の時継母が現れ、弟が生まれると以後継母との折り合いが悪くなり、更に十四歳の時唯一の庇護者であった祖母が亡くなり、居場所の無くなった一茶は十五歳で江戸に奉公に出たと伝えられる。まだ幼かった一茶にとって母の死はどんなに悲しく淋しかった事であろう。「我と来て遊べや親のない雀」は誰もが知る一茶の代表句のような句だが、この句はそんな一茶の八歳の時の作だと言われる。
作者の母はご存命かどうか知らないが、母の名の刻まれた竹の定規を手にして、自分が幼かった頃の母を懐かしく思う気持ちと、そんな一茶への思いは相通じるものがあろう。
☆小林一茶の生涯・・・flow Essence 美年~mitoshi~ さんが詳しく記事にされています。ご紹介します。
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