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西行が見た「花の雨」

【御礼】#桜前線レポート 応募作品の中で、「歳時記を旅する13〔桜〕後*上千本中の千本花の雨」が先週特にスキを集めました!とのことでした。
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 雨中落花
梢うつ雨にしをれてちる花の惜しき心を何にたとへむ

佐佐木信綱 校訂『新訂 山家集』岩波文庫

これも西行が雨の桜の近景を詠んだものです。
山家集には、雨の吉野山の遠景を詠んだ歌がないので、西行は雨の日には庵に籠って外へ出歩かなかったのかな、などと思ってみたりしていました。

あらためて西行の花の歌を読み直しました。
多くの歌がそのときの天候に触れていないだけなのだ、と思うようになりました。

まがふ色に花咲きぬればよしの山春は晴れせぬ嶺の白雲

佐佐木信綱 校訂『新訂 山家集』岩波文庫

春の吉野地域は、周りの山々が水蒸気にぼやけて、少し遠くの山は姿を隠しやすくなる「霞」の季節です。雨となれば近くの山でも水蒸気が立ち込めて山気に満ちた様相になります。

その歌の背景がどんな天気だったのかは、読者が地域の気象を踏まえて、好きなように想像してみればよいのです。

Webマガジン『Garden Story』の連載記事、松本路子さんの「吉野の桜と、吉野をめぐるものがたり」が、noteにも投稿されています。
吉野の歴史が素敵な写真とともに綴られています。
雨の吉野山の写真もありますので、ぜひご覧ください。お薦めです。

(岡田 耕)


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