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北鎌倉駅から「紫陽花」の寺へ

【スキ御礼】「歳時記を旅する3〔天道虫〕中*紫陽花の寺へ臨時の改札所



北鎌倉駅の東口を出て、線路沿いに南へ歩いて円覚寺の前を過ぎたところを左に曲がる道がある。
ここが「紫陽花」の寺の明月院がある明月谷戸の入口になる。
谷戸とは、台地や丘陵が浸食されてできた谷の底面をいう。
谷戸は鎌倉だけでも四十か所以上あるという。

詩人で随筆家の尾崎喜八は、晩年の1964年にこの明月谷戸の奥に転居して、亡くなるまでの十年ほどを過ごした。

明月谷戸の入口から先、明月院までの道案内は、尾崎喜八の五十年ほど前の随筆に譲ることにしよう。

二〇〇メートルばかり行った明月院の石の門まで道の右手は山裾の急斜面、左はゆったりと奥まった住宅地、その前を流れている細い深い溝川に沿って春は古い並木の桜が美しい、清潔で静かな道である。このあたりはまた季節によってさまざまな草木の花が道路に面した庭垣の中や山の斜面を彩っている。「あじさい寺」の名で呼ばれている明月院の、初夏のアジサイの見事なことは言うまでもない。そしてこの寺の在る場所は、明月谷でも一番ふところの深い枝谷えだだにで、それを囲んでいる山の林相の複雑なことと湧き水の豊富なこととのためか、ここへ集まって来る小鳥の数も種類もはなはだ多い。

尾崎喜八「その土地への愛の序曲」 大佛次郎編『素顔の鎌倉』実業之日本社 1971年

山岳と自然を主題とした作風の作者らしく、この随筆でも鎌倉の地形について詳しく触れている。
 六月の上旬から中旬ごろなら、この道の溝川沿いに、紫陽花だけではなく、イワタバコ(岩煙草)の赤紫色の花を見ることができる。

明月院の紫陽花は、フランチェスカ さんがお写真を投稿されています。青色がとても奇麗でお薦めです。ご覧ください。

(岡田 耕)

写真/岡田 耕 (鎌倉 明月院)

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