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句集鑑賞 磯村光生『千枚田』(3)

*これまでの記事
句集鑑賞 磯村光生『千枚田』(1)【スキ御礼】
句集鑑賞 磯村光生『千枚田』(2)


今回初めて烏瓜の句が五句収録されている。里山歩きの中で作者の好奇心を大いに刺激したらしい。
烏瓜は食用よりも薬用に用いられることから、食べられない瓜であることの無用感を本意とする例句が歳時記に多く見られるが、本作では人間の都合による実用性は意に介せず烏瓜そのものの生命力を詠んでいるところが作者らしい。
 
朝まだき花糸もつる烏瓜「春の雲」
地に咲ける星の形見の烏瓜「ダムに沈む村」
はるかなるものを引き寄せ烏瓜「雁のころ」
色づいて思はぬ数の烏瓜「写楽の眼」
今生のくれなゐ尽し烏瓜「写楽の眼」



*(4)に続きます。(近日投稿)

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』平成二十二年十一月号「磯村光生句集『千枚田』鑑賞」)

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