大石始

文筆家。旅と祭りの編集プロダクション「B.O.N」主宰。主な著書・編著書に『盆踊りの戦後史』『奥東京人に会いに行く』『ニッポンのマツリズム』『ニッポン大音頭時代』『大韓ロック探訪記』など。最新刊は2022年11月の『南洋のソングライン 幻の屋久島古謡を追って』(キルティブックス)

大石始

文筆家。旅と祭りの編集プロダクション「B.O.N」主宰。主な著書・編著書に『盆踊りの戦後史』『奥東京人に会いに行く』『ニッポンのマツリズム』『ニッポン大音頭時代』『大韓ロック探訪記』など。最新刊は2022年11月の『南洋のソングライン 幻の屋久島古謡を追って』(キルティブックス)

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    • みちばた郷土菓子

      • 14本

      緊急事態宣言下の東京で、僕らは各地の郷土菓子のおとりよせを始めた。 ただし、郷土菓子といっても高級な銘菓ではなく、各地域の暮らしのなかで親しまれてきたローカル色の強いもの。音楽でいえば有名な民謡歌手が歌った迫力満点のものではなく、道端のおばあちゃんがふと口ずさんだ鼻歌のようなもの。なんの制限もなく各地を旅しているときだって、道の駅でついつい手が伸びてしまうのは、東京では見かけることもない手作り菓子ばかりだった。 いつまで続くか分からないけれど、それぞれの郷土菓子が作られた土地について思いを馳せつつ、おとりよせ日記を気ままにアップしていこうと思っている。ひとつひとつの菓子をラップで包んでくれた方々に、いつの日かお会いできることを願いつつ。写真/大石慶子

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    『南洋のソングライン 幻の屋久島古謡を追って』を書き終えて――もうひとつの「あとがき」

     自分のことを語るのはあまり好きではない。インタヴュアーとして多くの人々と向き合ってきたためか、どうも聞き手としてのスタンスが身について離れないところがあるのだ。友人たちと酒を呑んでいてもいつのまにか聞き手に回ってしまうし、いい年をして「僕の話なんか誰も聞きたくないんじゃないか」という中二病めいた思いが拭えないこともまた、自分語りが苦手な要因ともなっている。  2022年11月に刊行された著作『南洋のソングライン 幻の屋久島古謡を追って』でも、その点は変わらない。屋久島を旅し

      • Tribute to RAS DASHER――齋藤徹史(REGGAELATION INDEPENDANCE)、1TA(Bim One Production)インタヴュー

        2021年4月、90年代以降の日本のレゲエ・シーンにおいて強烈な存在感を発揮してきたひとりのシンガーがこの世を去った。彼の名はRAS DASHER。90年代前半にはMIGHTY MASSAを中心に結成されたルーツレゲエ・バンド、INTERCEPTORに森俊也、LIKKLE MAI、井上青、秋本武士など後にシーンの核を担うことになる面々と共に参加。90年代半ば、MIGHTY MASSAが始動させたニュールーツ・スタイルのサウンドシステムでマイクを握ると、90年代後半には満を持し

        • 地元と病室で育まれた日常のサウンドトラック——MaLの初ソロアルバム『Primal Dub』

          インタヴュー・文/大石始  高田馬場の九州料理店「九州珠 (KUSUDAMA)」でMaLさんに会うことになった。MaLさんの出身地は東京の練馬区だが、この町に20年以上住んでいることもあって、今のMaLさんにとってはこの町が地元なのだという。  店にやってきたMaLさんは杖をついていた。2021年6月、彼は全治9か月の大怪我をし、2か月半もの入院を余儀なくされる。昨年末にリリースされた『Primal Dub』という作品は、その入院期間中に制作された作品だ。  MaLさんは

          • ローカルとローカルを繋ぐスカのリズム――TOP DOCA(こだまレコード)インタヴュー

            インタヴュー・文/大石始 写真/大石慶子 静岡から一枚のレコードが届けられた。封を開けると、インクのほのかな匂いが鼻をついた。シルクスクリーンで印刷されたジャケットは、たった今印刷所から上がってきたばかりという艶やかな光沢を放っている。レコードに針を落とすと、温かなスカのリズムが鳴り始めた。 こだまレコードの『こだまレコード1』。このLPは2015年から2019年にかけて同レーベルからリリースされた12枚の7インチシングルからコンパイルされたもので、「ジャマイカン・オール

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            まめぼっくり(鹿児島県奄美市)

            原材料:ピーナッツ、黒糖 製造:西郷松本舗 販売:オーガニック&ナチュラル寿草 https://item.rakuten.co.jp/juso/sgm_001a/ 奄美大島を訪れると、僕らはまず「まめぼっくり」を買う。ひとつのパッケージに入っている量はわずかだが、一度食べ始めると二袋、三袋とリピートしてしまい、気がつくとレンタカーのダッシュボードには空き袋がいくつも転がることになる。 まめぼっくりのような黒糖菓子は奄美大島ではポピュラーで、複数の商品が発売されている。僕は

            かんころ餅(長崎県五島列島)

            原材料:干し芋、もち米、砂糖 製造者:川上文旦堂 販売:日本橋 長崎館 https://www.nagasakikan.jp/index.html サツマイモは米作には不向きな土地でも栽培できることから、かつては多くの人たちを飢餓から救った。とりわけ耕作地が限られている島嶼部では威力を発揮。たとえば、平地の少ない屋久島では古くからサツマイモ(屋久島ではカライモと呼ぶ)の栽培が盛んで、朝昼晩三食がカライモ、三時のおやつにもカライモが食されたという。 長崎の五島列島も例外では

            ほし餅(秋田県横手市)

            原材料:もち米(秋田県産100%)、着色料(ラック、クチナシ) 製造者:佐忠商店 販売:秋田県物産振興会 楽天市場店 https://www.rakuten.co.jp/akitatokusan/ 餅は最強のエナジーフードだ。古来から米粒には稲の霊力(稲魂)が宿ると信じられ、それゆえに米粒を凝縮した餅や酒は特別な存在とされてきた。民俗学者の神崎宣武が「『まつり』の食文化」(角川選書)のなかで「それをカミに供え、そののちに人びとが食べることによってイネの霊力が人びとに移り

            笹巻き(山形県米沢市)

            原材料:餅米(国産)、砂糖、きなこ(大豆)、食塩 製造:蔓寿屋 販売:道の駅米沢オンラインショップ https://shop.michinoeki-yonezawa.jp/ ツルで頑丈に縛られた笹の葉をほどくと、光り輝く餅米が姿を現した。砂糖の入ったきな粉を振りかけ、ガブリとかぶりつくと、大昔に食べた何かに似ている。記憶のはるか彼方から味覚をたぐり寄せていくと、そうだ、祖母が作ってくれた七草粥である。 そのことを妻に話すと、「七草粥に砂糖なんて入れない」と一蹴。中野出身

            「亥の子」(徳島県三好市井川町)

            原材料:小麦粉(国産)、黒砂糖、水飴/膨張剤、赤色102号、青色1号、黄色4号 製造:島尾菓子店 販売:三好やまびこふるさと会 https://www.miyoshi-yamabiko.jp 製造元である島尾菓子店の所在地をGoogleのストリートビューで見てみると、味わいのある古民家が立ち並ぶ通りの一角に、その菓子店はあった。店の中までは見えないが、掲げられた看板には「みのだようかん・生菓子製造」という文字。ふと立ち寄った町でこんな看板を見かけたら、ふらふらと吸い込

            「とじこまめ」(熊本県菊池市)

            原材料:小麦粉(熊本県産)、大豆、きび糖、米粉、しょうが粉末 製造:渡辺商店 販売:自然派きくち村ネットショップ http://www.kikuchimura.jp/ ネットショップでは「和菓子」に分類されているものの、ラップを開けたときの香りが和菓子のそれではない。小麦粉の香りが強いのか、どちらかというと、わさび醤油でもつけて酒のつまみにしたい感じだ。ひときれつまんで頬張ると、きび糖のほんのりとした甘みとしょうがのスパイシーな香りが口のなかに広がった。その味わいの隙間か

            遠藤賢司は最初から遠藤賢司であった――茨城県県北地域で育まれたものと、彼のなかに流れ続けたもの

            2017年10月に亡くなって以降もなお、遠藤賢司のスピリットは生き続けている。折坂悠太や南部式、ALKDOのライヴを観ているとそんな思いが湧き上がってくるし、全感覚祭や橋の下世界音楽祭にも遠藤の「自分が生まれた場所で、自分の音楽で、自分の祭りをやるんだよ」(2012年8月27日、DOMMUNEに出た際の発言)という意識が根っこにあるような気がする。 昨年「ユリイカ」の遠藤賢司臨時増刊号でそんな遠藤のスピリットについて書かせてもらった。今読み返すと多少ラフなところもあるものの

            長島ノート――盲目のハーモニカ・バンド「青い鳥楽団」を追いかけて (1)

            島に降り立って最初に驚いたのは、道の角という角にスピーカーが設置されていて、それぞれから異なるラジオ放送が流れていることだった。ひっそりとした島の風景のなか、誰かに聞かせるでもなく陽気なお喋りや音楽が常に流れている。その光景はどこか現実味がなく、僕は夢の中のワンシーンに引き戻されたような錯覚に陥った。聞くところによると、この島の住人のなかには視覚障害を持つ方も多く、彼らが出歩く際に事故がないよう道標の役割を果たしているのだという。かつては盲導鈴と呼ばれる風鈴がその役割を務