「亥の子」(徳島県三好市井川町)
原材料:小麦粉(国産)、黒砂糖、水飴/膨張剤、赤色102号、青色1号、黄色4号
製造:島尾菓子店
販売:三好やまびこふるさと会
https://www.miyoshi-yamabiko.jp
製造元である島尾菓子店の所在地をGoogleのストリートビューで見てみると、味わいのある古民家が立ち並ぶ通りの一角に、その菓子店はあった。店の中までは見えないが、掲げられた看板には「みのだようかん・生菓子製造」という文字。ふと立ち寄った町でこんな看板を見かけたら、ふらふらと吸い込まれてしまいそうだ。
島尾菓子店は昭和5年創業。店のある辻地区は吉野川の水運で栄えた宿場町で、幕末から明治までは「阿波刻み」という葉たばこの生産でも栄えた。そんな地区だけに、裕福な家の象徴である「うだつ」のある旧家が現在も残っているという。
三好やまびこふるさと会のウェブサイトには、島尾菓子店の二代目店主の取材記事が掲載されている。ご主人が話すところによると、島尾菓子店の現在の商品で「一番古くて一番人気がある」というのが「亥の子」。小麦粉に黒砂糖と水飴を練り込んだ麦菓子で、赤青黄の3色がポイントになっている。見た目だけだとクッキーのような食感を想像するかもしれないが、水飴を使っているからか、ねっとりとした食感。なによりもカラフルな色彩がとても可愛らしくて、眺めているだけで何だかウキウキしてくる。この「亥の子」について、前出のご主人はこんな話をしている。
もともとの由来は「お亥の子」言うて、この辺りで旧暦の10月の亥の日にあった行事や。収穫祭のようなもの。子どもが稲藁の輪っかを持って家々を訪ねてまわって、お礼にいのこ菓子やみかんをあげる風習だった。この「お亥の子」があったのはこの辺りでは三好と美馬だけちゃうかな。
関東で暮らしているとあまり縁がないが、「亥の子」は西日本を中心に浸透している年中行事。「二支の亥の月にあたる旧暦10月の亥の日、亥の刻に田の神様をお祀りする収穫祭」(「暮らし歳時記」より)で、子供たちが集落内を回り、「亥の子うた」を歌いながら地面を搗く。多産のシンボルであるイノシシを象った亥の子餅を食べるところもあるが、おそらく三好の「亥の子」は亥の子餅の代わりでもあったのだろう。華やかな色彩はハレの日にふさわしいもので、見ているだけでウキウキしてくる理由がすこし分かった気がした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?