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まめぼっくり(鹿児島県奄美市)

原材料:ピーナッツ、黒糖
製造:西郷松本舗
販売:オーガニック&ナチュラル寿草
https://item.rakuten.co.jp/juso/sgm_001a/

奄美大島を訪れると、僕らはまず「まめぼっくり」を買う。ひとつのパッケージに入っている量はわずかだが、一度食べ始めると二袋、三袋とリピートしてしまい、気がつくとレンタカーのダッシュボードには空き袋がいくつも転がることになる。

まめぼっくりのような黒糖菓子は奄美大島ではポピュラーで、複数の商品が発売されている。僕はそのうちの何種類かを食べたことがあるが、個人的な好みとしては、やはりまめぼっくりがダントツ。キャラメル状になった黒糖にはまるで極上のチョコレートのようにリッチな味わいがあり、上品な苦味とピーナッツの香ばしい風味が混ざり合うだけで僕はもう……いけない、ヨダレが垂れてきました。もしもあなたがダイエットをしていて、なおかつ奄美大島を初めて訪れる場合、こう忠告しておきたい。「まめぼっくりには気をつけろ」と。

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収穫したサトウキビを圧搾し、絞った汁を煮詰め、消石灰を加えて冷やす。そうしたいくつもの工程を経て作り出された黒糖は、奄美の暮らしにおいて欠かすことのできない存在でもある。焼酎の製造など島の主要産業の多くと関わりを持っていることは言うまでもない。明治以前の時代まで遡れば、この島の人々は黒糖で年貢まで納めていたのだ。

米の代わりに黒糖で年貢を納めることを命ずる「換糖上納令」が薩摩藩から発令されたのは延享2年(1745年)のことだった。黒糖の生産が追いつかなくなると、島民にとって貴重な食料を育んでいたサツマイモ畑すらもサトウキビ畑に変えられた。薩摩藩による黒糖の取り立ては「黒糖地獄」と称されるほどの厳しさで、上納量をクリアすることのできなかった島民のなかには、ヤンチュ(家人)と呼ばれる債務奴隷として豪農に身売りするものもいた。奄美大島には美しいシマ唄が各地域で伝えられているが、そのなかには「かんつめ節」のようにヤンチュの悲しみが刻み込まれたものもある。稲作をやっている地域において米がその土地の暮らしの深いところと関わってきたように、黒糖は奄美の精神性と無縁ではないようにも思える。

そんなことを考えながら、二袋目のまめぼっくりを開ける。これは奄美の暮らしについて考えるための民俗学的リサーチの一環なのだ、僕は決して己の食欲に敗北しているわけではないのである――そんな言い訳をしながら。

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