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ほし餅(秋田県横手市)

原材料:もち米(秋田県産100%)、着色料(ラック、クチナシ)
製造者:佐忠商店
販売:秋田県物産振興会 楽天市場店
https://www.rakuten.co.jp/akitatokusan/

餅は最強のエナジーフードだ。古来から米粒には稲の霊力(稲魂)が宿ると信じられ、それゆえに米粒を凝縮した餅や酒は特別な存在とされてきた。民俗学者の神崎宣武が「『まつり』の食文化」(角川選書)のなかで「それをカミに供え、そののちに人びとが食べることによってイネの霊力が人びとに移り宿るとされてきたのだ」と書いているように、餅は霊力を体内に取り込むための媒介という一面も持っている。さまざまな栄養素が配合されたエナジーフードもイネの霊力の宿った餅には敵いっこない。

雪国ではそんな最強のエナジーフードを凍結・乾燥させ、保存食とする食文化が伝わっている。地域によって「氷餅」「凍み氷」「凍み餅」など名称は異なるが、我が家にやってきたのは秋田県横手市で製造された「ほし餅」。ほし餅のなかには砂糖や塩を混ぜ込んだり、ごぼうやゴマ、煮豆を織り込む場合もあるようだが、今回いただくのはもち米だけで作られた極めてシンプルなものだ。

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試しにそのまま食べてみると、サクッと軽い食感。真冬の冷気にじっくり晒した餅は水分がすっかり飛んでいる。オーブントースターで両面を焼き、醤油を垂らしてかぶりつくと、「おおっ」と思わず声が漏れてしまうほどの美味しさだ。餅と煎餅の中間のような食感で、香ばしさの向こう側からもち米の旨味が押し寄せてくる。雪国地では豆腐や大根も凍らせて保存するが、そのことによって独特の食感や味わいが生まれるのだろう。一切の調味料が入っていない素朴な食べ物ではあるものの、もち米の旨味を存分に堪能できるほし餅は、手間と時間をたっぷりかけた贅沢品でもある。そのことを舌の先から実感することができる。

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厳冬期の東北では、軒下にほんのりと色づいた餅を吊るす光景がどこでも見られたという。真っ白い雪景色のなかに数色のほし餅が吊るされる光景とは、どのようなものだったのだろうか。ネットを検索すれば、そうした瞬間を捉えた写真がいくらでも見つかるが、できることならば旅先で思いがけずそんな光景と出会ってみたいものである。

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