花の欠片 【奥入瀬 24/5/20】
端正で可愛らしい花が落ちているのを、奥入瀬の森のあちこちで見かける時期になりました。
この落花を見ると夏の訪れを感じてしまいます。
これはトチノキのお花。
とち餅やとちの実煎餅でよく知られる樹で、奥入瀬渓流の森を代表する樹木のひとつ。
トチノキの花は遠目からでもよく目立つ。
樹全体の枝先から巨大なソフトクリームのような、円錐形の花序が立ち上がります。
実の有効活用ばかりに注目されがちですが、この花の時期には美味しいハチミツが採れるのです。
奥入瀬渓流の森の中では毎年、認可を受けた養蜂家の方達がトチミツを採取しています。
花が螺旋を描くように配置されていて、右上がりにも左上がりにも見えますが、それだけ綺麗に整列しているということでしょうか。
この大きなソフトクリームから落ちてきた欠片が冒頭の写真というわけです。
落ちてきた欠片は赤色でしたが、ソフトクリームの方では黄色い花が目立っています。
遠くから見ると白にしか見えないけれど、グッと寄ってみるとなかなかにゴージャス。
この黄色と赤色の部分は蜜標と呼ばれるもので、
蜜のあるなしを虫達に教えています。
黄色い花は蜜がたっぷり且つ、花粉もたっぷり。
赤い花は蜜も花粉も生産終了。
花粉を運んでくれる有益な虫達に効率よく手伝ってもらう為のサインというわけ。
よく出来た仕組みです。
蜜を吸いにきた虫の身体に先端が豆もやしのような雄しべが触れることで、花粉が付着します。
花粉まみれの身体でさらなる蜜を求めて違うトチノキに飛んでいき、花粉の付いた身体が雌しべに触れてくれたらラッキー!受粉完了です。
上の写真をよく見ると豆もやし風の雄しべとはちょっと印象が異なる、うっすらとピンクがかったものが混ざっていますが、これが雌しべです。
トチノキの花は1日中観察していると色々な虫が訪れてくれるので、なかなかに面白いのです。
虫の識別が苦手な私には良き学びの場所です。
まだギリギリ春かな!?という気持ちでここ数日過ごしていましたが、やっぱりもう夏ですね。
初夏の奥入瀬渓流へ突入です!
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