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第25回|日本山林再生株式会社 中村純さんインタビュー【後編】

こんにちは。
「大谷でできることを増やす場所」OHYA BASEの管理人です。
梅雨ですねぇ…。
でも雨の日には雨の日の良さがある大谷町。
そして何度だって言うけど、雨上がりの大谷町がいちばん好きです。

OHYA BASEの庭のアジサイもしっとり。

さて、今回は 日本山林再生株式会社 代表・中村 純ナカムラジュンさん(TOP写真 中央)のインタビュー【後編】です。
【前編】では好きなことをするためのツールとして林業を使うという中村さんの視点や、三男坊らしい知恵(?)隙間探しについてなど語ってくれました。

それでは後半へ!


小さいけどじわじわ効く植物の力・森林の活用に着目。

高校は地元の栃木高校へ。
進学校だけど、自分はと言えば280人中280番みたいな生徒。

お恥ずかしい話なんですけど、高3の頃の僕はひどい中二病に罹ってまして。
「人間て汚い」「人間なんて死ねばいい」みたいなことばっかり言ってた、苦笑。
応援団に入って団長をやってたんですけど、そしたら副団長がそんな僕にブチギレて。
「おまえ、ちょっと来い!」と屋上の柵を乗り越えて「まず俺から殺してみろよ」「今、押せば死ぬぞ」と。
僕は「いや、できねーよ、友だちだし」ってビビっちゃって、笑。
「人間汚いとか死ねばいいとか言うけど、それぞれに友だちや家族がいるんだからそんな軽い気持ちで言ってんじゃねえ!」みたいなこと言われたんですね。
そこで、1年間ぐらい罹患してた中二病から覚める、という事件が起きたり、笑。

いやぁ、青春してるねぇ(にやにや)。

それで思い直して。
どうせ自分は死ぬけど、それまでに改善できることがあるならそういうことを考えよう、と。
…けど、ちょっとまだ中二病が抜け切ってなかったんでしょうね。
「大きい力は大きく悪用される可能性も孕んでる」と考えてた、笑。
夢のエネルギーは原爆になるし、ニトログリセリンはダイナマイトになるし、とか。
だから、小さいけどじわじわと効いてく力がいいなって思って、植物による環境浄化=ファイトレメディエーションっていう分野に興味を持ちました。
チェルノブイリ跡地にひまわりを植えて地中の放射線物質を吸い上げて処理するとか、ああいうのです。

あれ?
今まさに起こってるJ-クレジットの考え方にも近いものがあるんじゃないですか?

そうかもしれないですね。
それで大学は東京農大の地域環境科学部森林総合科学科っていうところへ。
でも大学では、そんなことより現在形でそもそも森林経営が成り立ってないんだ、ってことを知る。
まずは経営をなんとかして余力ができないと未来に向けて投資していくのは無理だなと思った。

それで森林経営研究室ってところに所属して、なんとかできないかなぁって考えたりしてました。

大学時代にしたサトウキビ狩りバイトでの1枚:前列向かって左が中村さん
(写真ちっちゃ!)

その後、地元に戻りたいと思い始めたけど、今度は地元に仕事がないっていう現実にぶち当たる。

どうして地元に戻りたいと思うようになったの?

単純に他の地域を知らなかったからかなぁ、笑。
大学で自分の研究対象地を決めなきゃいけなかったんだけど、知ってるのが地元しかないから栃木市にした。
でも、地元に戻る本当のきっかけは居酒屋で横に座ったおっちゃんだな。
たまたま居酒屋で隣り合った60代ぐらいの普通の人。
話がすげぇ面白くて、今まで会ったことない感じの人だなぁって思いながら話してた。
そしたらその人、僕の高校の通学路にある魚屋の店主さんだったんですよ。
話したことなかったけど、でも毎日通ってた場所にいた人だったのか!って。
地元って何もなくてつまんないって思ってたけど、もしかして自分が知らないだけだったんじゃないか?!って衝撃を受けたんです。
それからは地元のお祭りに出たりするようになって、そうすると愛着が湧いてもっと居たいって思うようになって、それで地元に戻ろうって決めたんだと思う。

人間嫌いだったのに、人間のおかげで地元に戻ろうと。

仕事はないですけどね。
ただ、森ならいっぱいある。
それなら自伐型林業で最低限の収入を持続的に作っていくというやり方もあるんじゃないか、みたいな論文を書いて大学を卒業しました。


不動産事業者として見ていた大谷。今はBASEが安心できる場所。

ところで中村さん、OHYA BASEが立ち上がる以前は大谷に来たことありました?

子どもの頃の家族旅行だったかなぁ、大谷資料館に来たことはありますね、1回だけ。
寒かったという記憶しか残ってない。
塩田さんOHYA UNDERGROUNDっていうプロジェクトを立ち上げるっていうのを聞いた(注:立ち上げ当時、中村さんはビルススタジオのスタッフだった)ときに「あぁ、大谷町、そんなとこあったな」って久しぶりに思い出したぐらい。
調査とかモニターツアーとかっていう段階のときに「ランタンの光だけで15分ぐらいひとりで居てみて」って地底湖の入り口に置き去りにされて「何か感じた?」って実験台になったりしましたけど、笑。
いつまで調査とか準備とかやるんだろう?って、自分は大谷町に直接的な関わりはほとんどないまま遠くから眺めてました。
それから数年経って「OHYA BASEっていう場所を作るよ」って、今度はDIY要員として何度か大谷に来るようになった、と。

あ、でも自分はビルススタジオの不動産部だったから、そっちの目線で当時の「空き物件」を見てはいましたね。
今はお店になってる現スタンダードベイカーズさんも、現アイランドストーンコーヒーロースターズさんも。
中でも現プントさんの物件はかっこいいなぁって見てた。
僕、ガソリンスタンドが好きで、ひさしを残して事務所部分を店にするっていうのが中学生ぐらいの時から描いてた理想のかたちで。
だからプントさんは今も通るたびテンション上がります!!!

Punto大谷町食堂がまだ「ガソリンスタンド跡地」だった頃の姿
貴重な写真!

OHYA BASEに席を置いてみてどうですか?

これまでは「ちょっと来て」って呼ばれたときだけ行く場所だったけど、席がある今は安心できる場所って感じですかね。
山に入って施業してると同じ業界の同じメンバーとしか会わなくなっちゃうから、自分が街の流れとどんどん離れてってるのを感じる。
会話が「今日、俺は◯本切った」とかだけになってきたときに、まずいなと思いました、苦笑。
でもここに来れば、街と、人と繋がれる。
古巣が運営してるし、何かのときには使える場所があるという意味でも安心感を持ってます。
当初は会社員しながら林業をやりたかったんです、「ビルススタジオ林業部」みたいに。
けど外部からだと林業の世界は中が見えなさすぎたしなかなか入り込ませてもらえなかったから、会社を一度辞めてしっかり林業界に入ってきます!という感じで
退職してきた。
ので、そんな古巣と付かず離れずの距離にいられるのもちょうどいい。
ただ、予想以上に現場が楽しくて、なかなかBASEに事務仕事しにきてない、笑。
こんなにガッツリ現場仕事をやろうとは思ってなかったし、まさかこんなに楽しくなっちゃうと思わなかった。

いい誤算ではある、笑。

僕らが本当にやらなきゃいけないのは、情報発信。
山の中で木を切ってるだけじゃ、組合の人や仲間たちぐらいにしか伝わらないですから。

BASEを情報発信の拠点として大いに活用してください!


現場仕事をしながら林業の新しい扉を開く、これから。

そろそろ終盤ですかね。
これからやりたいこと、生み出したいこと、などお聞かせください。

先日施業したという足利の山。

今、足利で入らせてもらってる山があるんです。
山主さんが建物を作りたいって言ってるので、その山から出した木材を使おうと思ってて。
どこをどういうふうに使えるかとか相談しながら山主さんと一緒に木を切る、っていうのが近い未来でやろうと思ってること。
切りっぱなしの丸太じゃもちろんダメだから、製材して、乾燥して、現場に納める…っていう一連の流れも自分たちでやってみることになる。
既存のルートだと工務店が問屋に発注して、さらに資材屋に依頼して…という流れだと思うんですけど。
山主さんと一緒に自分たちで動いてみることで、既存ルートにはどういう課題があるかっていうのも知れるかな、と。
課題を発見して問題を提起したり共有したり、僕らはそこを知って情報発信をするというのをしたいので。
情報があればそれを解決しようとする人が現れるかもしれないですし、それは必ずしも自分でなきゃいけないわけじゃない。
現場やりながらちょっとずつ新しい扉を開いていこうと思ってます。
今は捨ててしまう樹皮とか根っことかにも新たな価値が見出されるかもしれないし、もし誰かと一緒にやれば「切り株の椅子」みたいじゃないプロダクトが生まれたりするかもしれない。
あ、この足利の山での取り組みは古巣のビルススタジオと一緒にやる予定なんです。
建築・設計が得意なところと組むとどうなるか、そういうのが楽しみ。

こちらも足利の山にて。
雨のあとなどは粘土質の土でキャタピラーが滑って大変だったとか。

目下いちばん探りたいことは「どんな山ならば人を惹きつけるか」っていうことですかね。
前職の不動産仲介業でも「この物件まるごと全部おすすめってわけじゃないけど、強烈に一点ここが大好き!」みたいなことを記事にしたりしてたので、これからはそれを山で伝えていかなきゃいけないと思ってる。
僕なんかは木を切れるから山が好きだけど、現時点ではそれ以外絶対山行きたくないですもん、笑。
登るのは何が楽しいのかよくわかんない。
けど、やってみたら、ガイドさんがいたら、楽しいのかも?
もしかしたら自分が知らないだけかも?とも思う。
だからちっちゃい重機に乗る体験とかも企画したいですよね。
子どもの頃にトミカとかで親しんでる子も多いけど、実際乗る機会はなかなかないでしょ?
山で重機に乗るの楽しいですよ、でっかい砂場みたいで。

中村家のお子さんが重機乗り体験。

あとはこんな人も山に来たらいいんじゃない?とか思ってるのはー…。
最近ちょっと太ってきたから運動したいんだけどジム行くとお金かかるし、フットサルとか草野球とかやってると奥さんに「あなただけ遊びに行って!」って怒られるし、笑。
じゃあ週末に山仕事があれば体を動かせるうえちょっとお金が稼げて、家庭不和にもならないんじゃないかなとか。
いろんな人にいろんなやり方で山に接する機会を持ってもらって、共通項とか新しい切り口とかを探ってけたらって思ってます。

楽しそう。
BASEのメンバーとかいろんな人連れて、ちょっと中村さんの山に遠足しましょう!
本日はありがとうございました!


〜インタビュー後記〜

ご本人も言ってましたが「予想以上に現場が楽しくて、なかなか事務仕事に来ない」のでレアキャラみたいになっている中村さんですが、笑。
管理人の独断と偏見による、日本山林再生株式会社・中村さんを知るための3つのキーワード!

1. 他人を頼れる、甘え上手。
2. ちょっと叱ってくれる人が必要。
3.「隙間」と「余計なこと」は紙一重。

なんとも末っ子・三男坊っぽい感じのキーワードになってしまいました、笑。
隙間を探すのと同じぐらい余計なことをするのも得意だから、それを叱って軌道修正してくれるサポーターが必要で、上手に隙間を埋めたり使ったりしてくれる人が出現したらその人に託して、自分はまた他のものを探しに行こう!みたいな感じがします。(一文が長い。)
山を持て余している人も、中村さんを知って林業に興味を持った人も、ぜひ中村さんにコンタクトしてみてくださいね。
もしくはBASE管理人にお声がけいただければお繋ぎします。

さて、次回は宇都宮大学 地域デザイン科学部・横尾 昇剛教授のインタビューを予定しております。
横尾先生は研究室単位でBASEのメンバーになっている人。
学生さんがBASEをフィールドワークの拠点にしていたこともあるんですよ。
記事は7月中旬更新予定。
OHYA BASEは「大谷でできることを増やす場所」です。
ではまた次回!


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