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第24回|日本山林再生株式会社 中村純さんインタビュー【前編】

こんにちは。
「大谷でできることを増やす場所」OHYA BASEの管理人です。
チリンとドロンの親子コンサートにはじまり、焚火と本、三乗堂夜咄…とイベント続きであっという間に過ぎ去った春。
いやぁ、忙しかったけど楽しかった!
おかげでnoteの投稿がだいぶ遅れてしまったよ…。

さて、今回は 日本山林再生株式会社 代表・中村 純ナカムラジュンさん(TOP写真 中央)インタビュー【前編】です。
中村さんは林業をやっている。
でも100%林業家を目指してやってるわけではない。

「???」と感じた人はこのまま読んでください。
中村さんが何を目論んでいるのか、ちょっと頭の中がわかるかもしれない。


木を切ったり森林経営計画を立てたりしています。

仲間たちと作った日本山林再生株式会社っていう会社で林業やってます、中村純です。
実際に山で体を動かしてることが多いですが、OHYA BASEを事務所として使っています。

林業って、どんなことをしてるの?

ついこないだまでは、外部から依頼を受けて鹿沼とか日光あたりとかに木を切りに行くというような動きが仕事のほとんどでした。
で、今はちょうど本当の「僕らのやりたいこと」の土台づくりに着手し始めた段階。
山を持ってなかったので、まずは最低限の規模ですけどここ数年で山を100ヘクタール買い集めました。
それで自分達の森林経営計画を立てました。
しばらくOKが出ず修正を続けてたんですが、この度やっと林野庁の認定が出まして。
これからいよいよ自分たちの山、那須と烏山と足利とを計画的に間伐していきます


中村さん曰く「すげーシンプルな認定書」

一般的には知られてないと思うんですが、ひとつの山に複数の所有者さんがいることも多いんです。
自分の持ってる土地=山の一部分だけを施業するって採算性高くないし効率も悪いので「一緒に間伐しませんか?」とか「そちらまで(作業用の)道を通していいですか?」ってご挨拶から始まってコミュニケーションとってまとめたりということも付随してやります。
あと、J-クレジット制度って言って…。

ジェイクレジット???

カーボン・ニュートラルとか、カーボン・オフセットとか聞いたことありますかね。
主に企業間でのやり取りですけど、CO2とかの温室効果ガスの排出に対して削減量を売買する仕組みです。
植物って光合成しますよね、CO2を吸収してO2を出す。
そういう森林由来のCO2吸収量を理論上で計算して、それを売り買いするというのが事業になってきてるんですね。

実はもともと山を持ってる企業って結構あるんです。
そこが「これってJ-クレジットの仕組みを使えば有効利用できるんじゃね?」って興味を持って動き始めた。
でもただ山を持ってるだけじゃダメで、森林経営計画っていうのに基づいて経営・管理しているという認定がなきゃいけない。
とは言っても、みんなやり方がわからない。
じゃあ、まずは手がかりになりそうなところに問合せてみよう!
…というおかげで、大手企業から相談を受けて県外の森林の経営計画を僕らが立てる、というのが実際にありました。
考え方としてはヨーロッパから来たもので、まだカーボン・クレジット市場のなかで森林由来のものってすごく少ないんです。
でも日本は国土の7割ぐらいが森林ですからね。
これを動かせたらすごい規模の市場になっていくのでは、と。

森林の成長に応じて長期間のCO2吸収が認められるので、持続的な取引になっていく可能性もあります。

わ、時代の流れが来てますね…!
今後、森林経営計画を立ててほしいっていう依頼がさらに出てくるのかも。


やってみたいと思ったときに誰もが林業に参画できる世界を作る。

最初に「僕らのやりたいこと」の土台づくりって言ってましたが、中村さんたちはどういう未来を描いてるんですか?

山での施業の合間に。
右端が中村さん

誰もが「やってみたい」って思ったときに林業に参画できる世界を作りたいですね。
林業って全く情報がない、もしくはものすごく手に入りにくいと思うんですよ。
でも自分たちの経験値や、他の人の山の施業を取材したりもして、いろんな地域のいろんな人の情報収集をしてまとめた山のレシピ集みたいなものを作りたい。
精神論じゃなくて、数字でわかるようなものを。
地域とか山の条件とかによって様々だと思うけど、それでもできる限りの情報を集めて発信して、やりたい人が出てきたときに林業に入り込める世界を作りたい。
実は卒論でも書いたんですけど、僕が林業に興味を持ったきっかけは「この地域で働きたい、って思ったときにそこに仕事がない」ということだったりします。

どういうことですか?

仕事がない地域でゼロから事業を立ち上げるのは食ってけるか心配だし大変だし勇気もいる。
けど、森林は日本のだいたいどの地域にも既にあります。
林業やって1日◯本切ってそれを週◯回やれば自分が生きてくだけの最低限のお金は稼げる、とわかればそれ以外の時間で新しいことにチャレンジしたり、やりたいことに費やしたりできるんじゃないかな、と思って。
イメージは兼業農家です。
林業こそ「兼業林家」があっていいと思うんですよ、収穫のスパンが長いんだから。

林業やりながらコーヒー屋を始める、とかそういうことが可能なんじゃないかと。

なるほど。
LUKEマガジンのインタビューでもそんなこと、話してましたよね。
林業家を目指して林業をやってるんじゃない、というか。
手段として、林業ってもっと上手に使えるんじゃないか、という切り口がすごくおもしろくて、それを知ってからいろんな人に中村さんの話をしたんですよ!

ちなみにその先はどうするんですか?
情報を集める、発信する、それが欲しい人にちゃんと届くような仕組みを作る。
仕組みができたら中村さんは林業を手段のひとつとして、どんなことをしたい?

林業続けてもいいし、また不動産仲介やってもいいし、駄菓子屋やってもいいし、劇場やってもいいし。
やりたいことはいっぱいあるんで困らないです、笑。


強さじゃ勝てないから知恵を絞って「隙間」を探す。

三男坊末っ子気質っていうのはビルススタジオ*注 時代からよく聞いてますけど、笑、中村さんの子ども時代ってどんなでした?
*注=中村さんは起業前ビルススタジオ(=OHYA BASE運営元)のスタッフだった。

昔からものごとの「隙間」みたいなものを探すのが好き、かなぁ。

何それ、隙間、笑!

小学校のときベーゴマが流行って。
で、うち、親父が物づくりが好きな人なんですけど。
それで一緒に「最強のベーゴマ」を作ったりしてたんですよ、笑。
角という角を取って、左右のバランスを整えまくって、削ったり、鋳鉄を足したり…。

すごい。
なんでそんなことできるの、笑。
あれ?
ご実家が…材木屋さんだっけ!

そうです。
職人気質っていうか、ものづくりが好きで。
でね、その最強のベーゴマがあるから勝負はだいたい一人勝ち。
そうすると友だちのベーゴマを僕が総取りして、遊べなくなる。
もっと遊びたい、けど、ただ返しちゃうと勝負の意味がなくなっちゃう。
そこで僕は友だちに売るんですよね。

「お店では100円で売ってるけど、50円でいいよ」って、笑。
それでお金が集まると、駄菓子屋ででかい顔ができる、というところまでセット。
そのあたりから隙間産業、小銭稼ぎの魅力を知ってしまいましたね、笑。

あっははー。

あぁ、高校のときもだな。
進学校だったから夜9時とかまでみんな残って勉強してて。
そこで僕は近くのスーパーの安いラーメンをいっぱい買って、家庭科室でお湯沸かして。
60円で買ったのをお湯入り150円でとか言って売る、笑。
勉強はできなかったけど、小銭を稼いでました。

どうしてそういう隙間を探すのが得意なんだろう、笑?

うーん。
これもやっぱり三男坊だからっていうのが関係あると思う。
強さじゃ勝てないから、自分なりの知恵を絞った結果じゃないかな、笑
兄貴たちは剣道やっててめちゃめちゃ強い。
体格も気質も、僕とは全然違った。
僕は体が弱かったからずっと東京の病院に入院してるような子で。
けど、人を煽るようなこと言ったり小賢しいことしたり、くっそ生意気で全然子どもらしくない子だったと思う、笑。
力では敵わない自分が生きてくための隙間探しです。

隙間探して、小銭を稼ぐ話で【前編】は終了、笑。
(もっと良いこといっぱい言ってたのに!)
林業をやりながら好きなことをする、否、好きなことをするためのツールとして林業を使う。
中村さんの話を聞くと林業がとても魅力的な仕事に見えてくるのです。
続きが気になる【後編】は6月中旬アップ予定。
ひどい「中二病」だった話から、現在、そしてこれからのこと。
掘り下げます。

あ、そうそう。
中村さん、普段は山にいることが多いので、興味を持ったらOHYA BASEにでもご連絡くださいね。
こんなメンバーもいるOHYA BASEは「大谷でできることを増やす場所」です。
ではまた次回!

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