宇宙のジャブンッ:ショートショート
星空は美しい。まるで宇宙をただよっているかのような錯覚になる。今夜の散歩はお星様とお月様と私とあなたの二人きり。
「ねえ、宇宙は歪んでいるんだよ」
「そんなバナナ」
「いやはや、きみのダジャレの方が歪んでいるのかも」
「ギャフン!」
「そんなことよりも、見て御覧よ」
「ん?」
「ほら、星空は遠く遠くまでつづいていて」
「フムフム」
「届かないけれども、確かに私と時空をはさんで存在しているんだってね」
「フェー」
「おや、なんだか。眠たそうだね」
「そうでもないよ」
「そうかい」
夜空は満天の星です。星々は静かに瞬いて二人を優しく見守っておりました。
「どうしてこの宇宙で出会ったのかな?」
「どうしたの? 突然」
「ん、何でもない」
星は煌めく。永遠は訪れた。時間の流れは急流と淀みを繰り返し。天の河銀河の渦巻きは斜めって……
「あっ!」
ジャブンッ!
「た、たすけて……!」
……?
ハッと気づくと、列車の揺れは心地よく、
ガタンゴトンガタンゴトン。
「あ、ごめんなさい。……あなたの肩で熟睡してた」
「いいよ。寝ていなさい」
「いいよ。もう起きた。ありがとう」
列車の車窓は街明かりを走らせて、光の忙しく流れてゆく。
さっきの夢は夢であったかのように流されてゆく。
お月様は、ただ夜空にポツとあった。まるで時空の中に取り残されたように。
私とあなたはただポツと居る。まるで時空の中に取り残されたように。
(575文字)
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