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「やっぱりそうだと思った!」ーー後知恵バイアスとは?

「やっぱりな。だと思ったんだよ!」

何かしらの出来事が起こった後に、周囲からこう言われたことはありませんか?

本人が本当にそう予測していたかは定かではありませんが、この現象のことを「後知恵バイアス」と呼ぶんです。


「その結果、実はお見通しだった!」ーー後知恵バイアスは身近でもしばしば起きる


後知恵バイアスとは、物事が起きたあとで「そうだと思った」などと、まるでそのことが予測可能だったと考える心理的傾向のことを言います*1。

例えば、スポーツの試合で、あるチームが勝利したとしましょう。

試合後、勝利したチームのファンのうち、何人かは自信満々に「やっぱりうちのチームが勝つと思った」と語ったとします。これがまさに後知恵バイアスです。

しかし、当然ながら試合前には、どちらのチームが勝つか誰にも断言することはできません。また、勝利した後に見せていたファンたちのその自信も、おそらく試合前にはこれ程にはなかったでしょう。

「後知恵バイアス」の存在を、リーダーは正しく認識すべき


この「後知恵バイアス」は、リーダーにとって非常に厄介なバイアスだと考えています。

というのも、後知恵バイアスに陥りやすいリーダーのもとでは、メンバーはデモチベーションするどころか、組織全体の学習能力を低下させかねないからです。

例えば、あるプロジェクトが失敗に終わった際、リーダーが「ほら、やっぱりな!」「あの時、私の意見をもっと聞いていれば、こんなことにはならなかった!」とメンバーを責め立てるとします。当然ながら、メンバーからしてみれば、こうした発言を言うリーダーは信用ならないでしょう。

その逆もしかりです。プロジェクトが成功したときも、「ほら、あの時、あのアイデアを出したのは私だから当然だ」と言ったなら最後。メンバーは自身の貢献を認めてくれないと感じてしまい、リーダーについていく気持ちが消えてしまうでしょう。

さらにこうした状態が続けば、メンバーは自分の意見を言いにくくなり、次のプロジェクトでは新しいアイデアを出すことをためらってしまうかもしれません。結果、チームメンバーの成長を阻み、組織全体の活性化を妨げることになるのです。

誰しも陥る「後知恵バイアス」の状態を抜け出すには、周囲からフィードバックをもらうべし


では、こうした「後知恵バイアス」から脱出するにはどうすればよいのでしょうか?

対策としてしばしば推奨されているのは、この心理現象の存在を認識し、意識をしっかり持つことです*2 3 4。確かにこれらアドバイスはその通りなのですが、現実問題として、バイアスの存在を認識し、それに陥らないように強く意識を持つことはなかなか難しいものと思います。むしろ、意識次第で脱出できるのであれば、そもそも問題にはならないでしょう。

では、どうすべきなのでしょうか?

あくまで私見ですが、こうした認知バイアスは自分自身で脱出できないため、周囲の力を借りるべきだと考えます。最も理想的なのは、メンバーが忖度なくリーダーへフィードバックをくれる状態を作ることですが、実際のところ、リーダーに意を決してフィードバックしてくれるメンバーはそれほど多くはありません。

そのため、個人的にオススメするのは、利害関係のないメンターを持ち、定期的に会ってフィードバックをもらうのが最善策だと考えます。メンターを持つことは、後知恵バイアスに限らず、さまざまな側面で有用です。

「やっぱりこうなると思ったんだ」という言葉は、ある種、リーダーとしての自信の表れのように思え、頼もしい部分でもあります。しかし、このバイアスに陥ると、周囲に与えるデメリットも多くなります。リーダーと言えども完全な存在ではありませんので、自身の不完全さを知った上で、周囲の力を借りながら、チームを引っ張っていきたいところです。


*1 日本の人事部「後知恵バイアス」https://jinjibu.jp/keyword/detl/1131/(2024年7月30日アクセス)

*2 ミツカリ「後知恵バイアスの具体例や対策方法とは?深刻な問題を引き起こす前に」https://mitsucari.com/blog/hindsight_bias_measures/(2024年7月30日アクセス)

*3 unprinted「経験が記憶を書き換える?後知恵バイアスという認知の偏り」https://www.unprinted.design/articles/hindsight-bias/(2024年7月30日アクセス)

*4 Talent Viewer「後知恵バイアスの意味は?その対策は?」https://talent-viewer.com/column/qanda/1518.html(2024年7月30日アクセス)

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