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女性リーダー育成はなぜ難しい?ーー「壊れたはしご」問題とは

昨今、人事部門が直面する課題のひとつが「女性リーダー育成」です。

2023年から有価証券報告書で「女性管理職比率」の開示が義務付けられたこともあって、以前にも増して大きな問題になっています。

しかし、女性リーダーを育てる道のりは決して容易ではありません。特に最近明らかになっているのが「壊れたはしご」問題です。




女性リーダー育成を阻むのは「ガラスの天井」以上に「壊れたはしご」が問題?


「壊れたはしご」とは、組織における女性の昇進が初期の段階から難しいことを例えた言葉です*1。

この言葉を通した問題が認知され始めたきっかけのひとつが、2015年に発表されたレポート『Women in the Workplace 2019』です*2。

マッキンゼーアンドカンパニーとLeanIn.Orgの共同調査によるものですが、この調査では、女性の昇進を阻む要因として、"初めの一歩"の格差があると述べています。

この調査では何が明らかになったのでしょうか?

以前は、"女性"という性別によって昇進が制限されるという「ガラスの天井」が問題視されていました。どれだけ十分な能力や実績があったとしても、キャリアアップができない状況にあったということです。

しかし、今回の調査で問題提起されたのは、そもそも最初の管理職に採用される女性の数が少ないのではないかという点です。

実際、最初の管理職登用で、仮に男性が100人登用された際、女性は72人しか登用されていない調査結果が出されています。

こうした現状を踏まえ、このままでは、全体として女性比率が上がることは難しいと説いています。

たしかに上級管理職などの候補となる母数を増やさなければ、どれだけ女性管理職比率を高めようと奮闘しても、根本的な解決に至らない可能性があると考えられます。


「壊れたはしご」問題に、我々人事はどう向き合うべきか?


「ガラスの天井」問題の解消に向けた取り組みは、少しずつ始まっています。例えば、女性のライフイベント(出産や育休など)を見据えた経験の早期付与、評価項目の改善(時間から生産性など)などです。これらの取り組みはより一層加速していくべきでしょう。

ただ、女性リーダー育成をより推進するには、これだけでは前に進めません。まさに今回の「壊れたはしご」問題でわかった通り、最初の管理職登用の問題も解消しなければならないのです。

その際、LIFE INSIDERの記事でも示されている通り、この最初のステップに対する問題意識を高める必要があります*2。

人事の責任者や担当者も、こうした問題に対する意識が欠けている。その半数以上は、自身が働いている企業のリーダー層における男女格差は、今後10年で是正できるだろうと考えている。ファーストレベルの管理職への昇進が最大のハードルだと答えた人事責任者は19%で、47%が女性への支援が足りないことを、45%が資質のある女性が不足していることを最大の課題として挙げた。最初のステップアップを最大のハードルとして挙げたのは、わずか7%だった。

LIFE INSIDER「経営陣に女性が少ない原因は「ガラスの天井」ではなく「壊れたはしご」 —— マッキンゼーの最新レポート」

まさに「壊れたはしご」問題を解決するためには、組織全体での意識向上が必要になってくると考えられます。

女性リーダーの育成は容易な道のりではありませんが、決して解決不可能な問題でもありません。壊れたはしごを修復し、女性がそのはしごを登り切ることができる環境を作り出すことが、我々人事に期待されている役割のひとつでしょう。


(参考情報)

*1 日本の人事部「壊れたはしご」https://jinjibu.jp/keyword/detl/1660/(2024年6月13日アクセス)

*2 LIFE INSIDER「経営陣に女性が少ない原因は「ガラスの天井」ではなく「壊れたはしご」 —— マッキンゼーの最新レポート」https://www.businessinsider.jp/post-200712(2024年6月13日アクセス)


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