【夫婦巡礼】無職の夫婦が800km歩いてお店を出す話【旅物語】②
こんばんは!おぐてらです。
私事ですが、営業自粛致します!
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■始まりの街
サン=ジャン=ピエ=ド=ポー
今はチーズケーキで有名なバスク地方
バスク語で、「ドニバネ・ガラシ」
ガラシの聖ヨハネを意味する12世紀に建てられた、フランスとスペインの国境に位置する巡礼の拠点となる街だ。
かつてローマ街道が通っていた頃、この街は重要な商業の中心だったとか。
そんなかつての商業都市の名残なのか、街は至る所に宿屋、飲食店、食料品店に装飾品や土産物屋が点在する。
誰もが知っているゲーム「ドラクエ」で言うところの一番最初の街は、きっとこんな感じなんだろうなと思った。
そのくらい、出発に当たって充分すぎるほどの物資で溢れている。
道には至る所にホタテ貝が見られる。
ホタテ貝は、巡礼者達が聖地サンティアゴへ向かうためのシンボル。皆このホタテ貝と矢印を頼りに進んでいく。
胸が高鳴って仕方ない。
これから、僕達もこの矢印とホタテ貝に従って歩いていく。一つ一つ繋いだ先に、800km先に目的地があるのだ。
これまでの人生で、そんな距離を歩いたことはない。それも、自分一人ではなく、妻と二人でなんて言えば尚更だ。
これから始まる未知の旅に、僕達はただワクワクするばかりだった。
■巡礼事務所にて
巡礼事務所と呼ばれる施設がある。
サンジャンに集まった人々はここで、巡礼者として登録することになっている。
必要情報を記入し、簡単な説明を受けて、クレデンシャル(巡礼に必要なパスポートの様な物)を受けとる。これで終わり。シンプル。
事務員は3名いた。皆巡礼経験のあるボランティアだそうで、その中でも僕達を担当してくれたのは、大柄な熊みたいなおじさんだった。
おじさんは僕達二人を一瞥したあと
「Japanese??」と訊ねた。
そうだと答えると
「ようこそカミーノへ!!僕も日本のオヘンロを歩いたことがあるんだ!歓迎するよ!」
そう言って熊さんは飛びきりの笑顔を見せて、嬉しそうに白装束を纏ったお遍路の写真を見せながら色んな説明をしてくれた。
巡礼のルール
・黄色い矢印に従って進むこと
・同じ宿には原則連泊出来ない。必ず毎日、少しずつでも進むこと。
・巡礼は、一度に全て歩き切る必要はない。何度かに分けて全てを歩く人もいる。
・アルベルゲ(宿)やカフェ、バル、教会などでクレデンシャルにスタンプを押してもらうこと。
このくらいだと思う。
多くの制約は必要ない。そんなシンプルさがとても好きだ。
■カミーノと日本の巡礼路
古くから山岳信仰が盛んな日本にも巡礼路が多数存在する。
その代表例がお遍路や、熊野古道
特に熊野古道は、カミーノ(サンティアゴデコンポステーラの巡礼路)と並んで、世界に二つしかない世界遺産の道なのだ。
熊野詣について少し話すと
古来、熊野と言う土地は、古代の人々が自然への畏敬、畏怖を抱いた場所。イザナミが赴いた黄泉の国だと言われていたそうだ
熊野詣自体は、平安期には身分の高い人たちのものだったが、浄土信仰の広がりと共に中世期以降は「蟻の熊野詣」と言われるほど、庶民の間にも広がったとか。
信不信を選ばず
浄不浄をきらはず
その札を配るべし
とは、鎌倉時代に一遍が熊野権現から夢託を得た言葉だそうで、信じる者もそうでない者も、貧しい人も豊かな人も、女性も、病の人も平等に祈念の機会を与えられてきた事を表している。
熊野三山(本宮大社、速玉大社、那智大社)に至る苦難の道を歩くことで、自らの罪や穢れも削ぎ落として参拝することで、生きながらにして新しい自分に生まれ変わる、現世の甦りの旅だったと。
僕達夫婦も実は熊野古道を少し歩いたことがあったけど、
歩く人の身分の制限がないことも、
削ぎ落とすことで何かを見出だすことも、
どちらの道にも通づる共通点だと感じていた。だからこそ、夫婦で歩くならこの道が面白そうだと思っていた。
■初めての巡礼の友
登録を終え、事務所を出たところで
僕達はアジア系の女の子に声をかけてみた。
大体こういう時に先に声をかけてくれるのは妻の方だ。何せ、僕は人見知りである。
彼女は日本人で、名前はモモちゃん。
大学卒業したてで、そのまま世界を旅しに来たアクティブガール。
小さな体に似合わない大きなリュックサックを背負っているのがとっても印象的で、実はサンジャンに来る前、バイヨンヌの駅で見かけた時に、「あとで声をかけてみよう」と二人で打合せしていた。
海外、特にアジア圏を離れると、急に仲間が欲しいような気になる。
外国語が飛び交うなかで、気を配り続けるのはとても疲れるから。
またホームタウンを離れて知らない街へ旅することは多少の不安が付き物だから
同じ国、同じ言葉を話す仲間が居てくれるのはとても嬉しく有難い。
そんなわけで、僕達三人はあっという間に仲良くなった。
何から決めていこうか…
「まずは宿からじゃない?」
誰とも無しに出た意見が採用されて、僕達は本日の宿、巡礼人生最初の【アルベルゲ】を求めて歩き出した。
両脇に高い建物が立ち並ぶ石畳の坂道に
暖かい春の陽射しが差し込んでいる。
4月とは言え日本の花粉シーズンとは無縁の、春の風がとても気持ち良かった。
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本日も長文読んで頂き有り難うございます。
どうしても、コンパクトにまとめられず長くなってしまう。そして街の説明や、言葉、歴史を振り返ろうとすると更にボリュームが…
本当に、暇なときの一興として楽しんでいただけたら。それに尽きます。よろしければ今後もお付き合いくださいませ。
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