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また来るね、パラレル・アップルパイ・ワールド 津軽飲食紀・最終日

道産子の母と娘の弘前旅行、食べ物を中心に。一日目・二日目はこちらから。


太宰ゆかりの宿、大鰐温泉・ヤマニ仙遊館にて迎えた旅行最終日の朝。朝食会場となっている広間は、かつては太宰が一家で湯治に来た際に使った部屋なのだという。
今シーズンはひどく雪が少なく、大鰐スキー場のオープンもままならないという話を前日に伺ったばかりだが、思い出したように綿雪が降りしきる朝になった。

凍み豆腐やおから、酢の物など、素朴な小鉢がいくつも並ぶ。お味噌汁には大鰐もやし。降る雪を受けてどこか嬉しそうな雪囲いの庭の景色を眺めつつ頂いた。

往路は弘南鉄道で来たので、復路は弘南バスを使うことにする。弘前へ戻り、向かった先は弘前市立博物館。
津軽藩・津軽家のことを学びつつ、干支にちなんだ収蔵品がずらりと並ぶ、お正月の特別展もとっても面白かった。

ラブストーリーだ。

最終日の昼食は、まだまだ食べ足りないアップルパイ。JR弘前駅にほどちかい茶房CoCoに立ち寄る。

どちらも、今回の旅で食べたアップルパイ類の中で最も口に合った。パイの方はパン粉が加えられサクサクに拍車がかかっている。カラメルで煮たリンゴが落ち着いていて食べやすい。 タルトタタンはしっかりキャラメリゼされていて、苦味が良い。添えられたラムレーズンアイスとの組み合わせが最高だ。それぞれドリンクセットにして各750円という驚きの安さ。

電車の時間までもう少し余裕があったので、さらにアップルパイはしご。

弘前駅前のアートホテルのラウンジ、オークレールのアップルパイ。生りんごが載せられているだけでなく、加熱されているりんごフィリングにもフレッシュ感が残され、全体的にりんごそのものを味わわせようとする意図を感じる。それになめらかなシナモンアイスを載せることで、シナモンのえぐみを省き、香り高さだけが加えられている。ホテルとしての矜持。タルトタタンは売り切れで残念だった。

北海道に帰る母と別れ、自分は京都へ戻る。帰路についてしまうまえに、駅構内で売っていた工藤パンを物色する。かの有名なイギリストーストは眼の前で売り切れてしまったので、ミートソース焼きそばパンをゲット。車中では匂いが気になって食べられなかったので、降りてから頂いた。

カバンに無造作に突っ込んでしまっていて、すっかり潰してしまった。が、それもまた放課後感があって悪くないかも。確かに、麺はやわやわのやきそばだけど、ミートソース味だ。普通の焼きそばパンよりけっこう好きかもしれない。いつかは工藤パンの本社工場直売所に行かなければ。

アップルランド土産のりんごジュースも。

自宅についてから、昨夜の居酒屋のご主人に頂いたふじを剥いて食べた。15年ほど前、青森市に母と行ったときも、やっぱり居酒屋のおばあちゃんから同じようにりんごのお土産をもらったことを思い出した。あのとき食べたアサリの酒蒸しの美味しさも、まだ忘れられない。

帰宅してすぐに開けたもうひとつのお土産が、博物館のあとに立ち寄った和菓子店・大阪屋の銘菓「竹流し」。私は小さいサイズを購入したが、真っ白く凛とした佇まいのブリキ缶にグラシン紙が敷かれ、みっちりと薄焼きのそば煎餅が詰められている。写真の通り、煎餅はあくまで繊細、それが割れずに、隙なく詰め込まれていて、最初の一枚を取り出すのがとても難しい。手作りのその製法は、江戸時代から受け継がれているという。
やさしい甘さの煎餅、食べだすと止まらない。開ければじきにしけってしまうのだから、一気に食べてしまったっていいだろう。ほんとは、一枚二枚をお上品にいただくお茶菓子なのだろうけど。
このお店は、店頭にある漆塗りのカウンターや引出しも魅力的だった。年季を感じる重厚な螺鈿の什器に、当たり前のように商品が収められているところを見せていただいた。私はこういう場面に出会うとき、「内地だ」と思う。


北海道弁では、本州を始めとする北海道外の地域を、「内地」と言う。海を挟んで唯一の隣県である青森の風土は、多少北海道に似ているところもあるけれど、やはり確かに「内地」なのだ。北海道のほとんどの地域では感じとりにくい近世の香りが、津軽ではしっかりと漂っているゆえではないかと思う。特に食材に似たところもあるからこそ、文化の違いが際立って面白い。まるでパラレルワールドのように思えるときがある。

東北全部を回ってみたいと思っても、青森県ひとつをとりあげるだけでも、何度訪れても足りない見どころに溢れていて、なかなかそれより南へ進めない。
次は、太宰記念館や巨大土偶駅を目指して五所川原か、マグロを食べに大間か、飲み歩き・朝市・八食センターを楽しみに八戸再訪か、そういえばまだ未体験のねぶた・ねぷた祭りを体感しに夏に来るべきか。
海を挟んだお隣さんは、鮮やかに私を飽きさせないのだ。


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