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雪国のラーメンには油膜が要る 津軽飲食紀・二日目・前編

母と娘の弘前旅行、食べ物を中心に。一日目はこちらから。


温泉旅の醍醐味は朝風呂である。りんごがもりもり浮いているりんご風呂、朝はりんごが新しいのか、触った感じが昨夜よりフレッシュだ。

そして夕食に引き続き、満足感のある朝食バイキング。やはりりんごがたっぷり。漬けマグロが取り放題で、ばくだん丼を楽しめる。ホタテのフライも嬉しい。お正月メニューもある。

母の盛り付けの方がいつも綺麗

9時半にはシャトルバスに乗り込み、弘前市内へ戻った。
アップルランド、お風呂も食事も素晴らしかったことはもちろん、接客が大変に丁寧・親切で、スタッフの方の矜持を感じた。
子ども向けのゲーム機や遊具が目立つわけではない館内で、子どもたちはスタッフと出会うたびにじゃんけん対決を挑み、最後は景品をもらえるという企画に参加しているようだ。どのスタッフも、忙しそうなときでも、子どもがいれば足を止めてにこにことじゃんけんをする。なんなら大人もつられてスタッフにじゃんけんを求める、朗らかな場面も見た。心地よい滞在だった。

さて弘前は、とにもかくにもアップルパイの街らしい。
公式のアップルパイマップなるものを見るに、ホテルよりアップルパイ処のほうが多いのではないかと思う。さすがに迷ってしまうので、いくつかのお店のものを食べられるという、大正浪漫喫茶室へ向かう。

四角いのがたむらファーム、丸いのがクローヌ。クローヌはタルト台も入っていて、生地が重厚。たむらファームの方が、その点ではシンプルなパイだ。どちらもリンゴに酸味があり、こってりしすぎず食べやすい。

続いて、弘前市立観光館を訪れる。駐車場が大きいのは、桜の時期に備えてだろうか。おみやげや工芸品の展示を軽く見て、近くの弘前市立文学館へ。弘前市出身の文筆家・佐藤紅緑について、娘の佐藤愛子の小説の文章から辿る企画展。常設展も合わせて、100円の入館料から考えるとボリューミーで充実した展示。 

ぼちぼちと歩いて、繁華街にある中三デパートへ来た。ここの地下は名物・中みそラーメンなるものが食べられるらしい。ローカルデパートが好きな母が下調べ中に見つけたもので、小さなガイドブックなどにはあまり載っていない。

胡椒は母の好みで多めに振っている。

野菜炒めが乗った、生姜の効いた甘めの味噌。油がたっぷり張っていて冷めにくそうだ。麺は黄色いちぢれ麺、チャーシュートッピングして860円。冬の身体に染みる。札幌ラーメンのオマージュから始まったようだが、北陸名物の8番ラーメンの味噌味に近いものも感じる。
中三デパートの他の売り場は閑散としているのに、このフードコートエリアは全く席が足りていない。成人の日も近く、懐かしの味を求めた帰郷者も多かったのかもしれない。

腹ごしらえを済ませたら、弘南鉄道・弘前中央駅に移動。当駅始発の大鰐線に乗り、弘前市の南に位置する大鰐温泉へ向かう。

りんご、あますところなく……。

そっけないとすら感じさせる灰色の車両。弘前中央駅も趣ある構えをしているが、ほとんどが小屋のような途中駅も、あまりに渋い姿をしていた。

大鰐は終着駅である。改札から出るとワニのモニュメントが迎えてくれたが、実はワニそのものは地名と無関係であるらしい。
今日の宿泊先は、私としては、今回の旅のメインイベントだった。すなわち、太宰治との由縁、そして「泊まれる文化財」であることからも知られる、ヤマニ仙遊館である。

(続き)


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