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ゲーム理論まとめ

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ゲーム理論に関する記事をまとめています。
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記事一覧

【定期投稿】1分でゲーム理論.013/戦略形ゲーム/均衡点の存在(不動点定理)

【定期投稿】1分でゲーム理論.013/戦略形ゲーム/均衡点の存在(不動点定理)

01.戦略形ゲーム均衡点の存在

012では前提となる最適応答対応を定義した。ここから先はいよいよナッシュ均衡点の存在定理を証明していく。その概要を少しだけ紹介すると、ナッシュ均衡点は解析学における不動点(fixed point)に等しく、その不動点の存在定理である角谷の不動点定理(Kakutani 1941)を用いて、ナッシュ均衡点の存在定理を証明する。

*ナッシュ均衡と不動点
戦略形$${n

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【定期投稿】1分でゲーム理論.012/戦略形ゲーム/均衡点の存在(最適応答対応)

【定期投稿】1分でゲーム理論.012/戦略形ゲーム/均衡点の存在(最適応答対応)

01.戦略形ゲーム均衡点の存在

ここから何回かに分けて、混合戦略の範囲では、均衡点は必ず一つ存在することを証明する。012では、前提事項となる定義である最適応答対応を理解しよう。なおここから先は数学要素のオンパレードなので、もし概要を抑えたい方は一旦飛ばし後から戻ってきてもいいと思います。

*最適応答対応

$${G=(N, {\{Q_i\}}_{i \in N}, {\{F_i\}}_{i

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【定期投稿】1分でゲーム理論.011/戦略形ゲーム/期待利得ベクトルにおけるパレート最適性

【定期投稿】1分でゲーム理論.011/戦略形ゲーム/期待利得ベクトルにおけるパレート最適性

01.戦略形ゲーム実現可能な期待利得のベクトルに関するパレート最適性

007(クリックすると該当ページに飛びます)において、戦略の組に関するパレート最適性について定義した。ここで、実現可能な期待利得のベクトルについてもパレート最適性を定義することが出来る。

戦略形ゲーム$${G}$$における期待利得ベクトル$${u(=u_1,\cdots ,u_n ) \in U}$$が実現可能集合$${U}

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【定期投稿】1分でゲーム理論.010/戦略形ゲーム/実現可能集合の定義

【定期投稿】1分でゲーム理論.010/戦略形ゲーム/実現可能集合の定義

01.戦略形ゲーム実現可能な期待利得のベクトルの集合

ゲームの混合拡大では、混合戦略によるプレイヤーの期待利得を考える。(つまり定まった数字ではなく、集合で表現される)そのため、プレイヤーが実現可能な期待利得のベクトルの集合を定義する必要がある。

戦略形ゲーム$${G=(N, {\{Q_i\}}_{i \in N}, {\{F_i\}}_{i \in N})}$$の混合戦略による実現可能集合(

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【定期投稿】1分でゲーム理論.009/戦略形ゲーム/戦略形ゲームの混合拡大

【定期投稿】1分でゲーム理論.009/戦略形ゲーム/戦略形ゲームの混合拡大

01.戦略形ゲーム戦略形ゲームの混合拡大

戦略形$${n}$$人ゲーム$${G}$$の混合拡大(mixed extension)とは、以下のように定義される。

$${G^*=(N, {\{Q_i\}}_{i \in N}, {\{F_i\}}_{i \in N})}$$

$${N=\{1,2,…,n\}}$$は、プレイヤー集合
$${Q_i}$$は$${S_i}$$上の確率分布の全体である。

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【定期投稿】1分でゲーム理論.008/戦略形ゲーム/混合戦略

【定期投稿】1分でゲーム理論.008/戦略形ゲーム/混合戦略

01.戦略形ゲーム混合戦略

これまでは、一度戦略を決めれば必ず(確率1で)その戦略を行動していた。このような戦略を純戦略(pure strategy)という。しかしながら、均衡点が存在しない場合にはある確率分布に沿って行動することがある。そのような戦略を混合戦略(mixed strategy)と呼ぶ。以下の例を見てみよう。

上の利得行列は、明らかに純戦略における均衡点は存在しない。しかし、この

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【定期投稿】1分でゲーム理論.007/戦略形ゲーム/パレート最適の定義

【定期投稿】1分でゲーム理論.007/戦略形ゲーム/パレート最適の定義

01.戦略形ゲームパレート最適

囚人のジレンマゲームを考える。いかに利得行列を再掲しておこう。

囚人のジレンマにおける均衡点は、(Player1, player2)=$${(D, D)}$$である。
ここで、Player1の立場になって考えてみよう。$${D}$$戦略は$${C}$$戦略を支配しているから、Player1にとっては$${D}$$を選択するのが合理的である。また、もし何らかの理由

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【定期投稿】1分でゲーム理論.006/戦略形ゲーム/支配戦略均衡、IESDS

【定期投稿】1分でゲーム理論.006/戦略形ゲーム/支配戦略均衡、IESDS

01.戦略形ゲーム支配戦略均衡とナッシュ均衡

被支配戦略がナッシュ均衡になることはない。しかし、被弱支配戦略はその限りではない。被弱支配戦略がナッシュ均衡となる例を挙げよう。

Player1においてはTop戦略がPlayer2においてはLeft戦略が弱支配している。均衡点は(Player1, Player2)=(Top, Left), (Bottom, Left)である。
弱支配されているBo

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【定期投稿】1分でゲーム理論.005/戦略形ゲーム/ナッシュ均衡の性質

【定期投稿】1分でゲーム理論.005/戦略形ゲーム/ナッシュ均衡の性質

01.戦略形ゲームナッシュ均衡点の性質

*ゼロ和ゲームにおけるナッシュ均衡点と鞍点

今後は、ナッシュ均衡点は特に断りがない時は均衡点と表記する。
ゼロ和ゲームにおける均衡点は、鞍点の概念と一致する。つまり、$${s^*=(s_1^*, s_2^*)}$$が均衡点であるとは、すべての$${s_1 \in S_1}$$、$${s_2 \in S_2}$$に対して、

$${f(s_1, s_2^

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【定期投稿】1分でゲーム理論.004/戦略形ゲーム/最適応答、ナッシュ均衡点

【定期投稿】1分でゲーム理論.004/戦略形ゲーム/最適応答、ナッシュ均衡点

01.戦略形ゲーム最適応答(best-response)

$${G=(N, {\{S_i\}}_{i \in N}, {\{f_i\}}_{i \in N})}$$を戦略形$${n}$$人ゲーム$${G}$$として、
$${s=(s_1,s_2,\cdots, s_n)}$$を戦略の組、$${s}$$の第$${i}$$成分を除いたものを$${s_{-i}}$$とおく。また戦略の組$${s}$$に

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【定期投稿】1分でゲーム理論.003/戦略形ゲーム/戦略形ゲームの具体例

【定期投稿】1分でゲーム理論.003/戦略形ゲーム/戦略形ゲームの具体例

01.戦略形ゲーム戦略形ゲームの具体例①囚人のジレンマ

囚人同士の駆け引きをモデル化したゲーム。双方が協力($${C}$$)すれば利得$${3}$$を獲得できるが、どちらか片方が裏切る($${D}$$)と裏切った方に利得$${4}$$、裏切られた方に$${1}$$を得る。そして双方が裏切った場合は、利得$${2}$$に甘んじることになる。結論を急げば、この場合はお互いにとって最もよい選択肢である

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【定期投稿】1分でゲーム理論.002/戦略形ゲーム/戦略形ゲームの類型、双行列による表現

【定期投稿】1分でゲーム理論.002/戦略形ゲーム/戦略形ゲームの類型、双行列による表現

01.戦略形ゲーム戦略形ゲームの諸類型

*ゼロ和、非ゼロ和、定和ゲーム

$${\sum \limits_{i=1}^n f_i(S_1,S2, \cdots S_n)=0}$$

が成立すればゼロ和ゲーム、成立しなければ非ゼロ和ゲームである。

ゼロ和ゲームは、勝ち負けや交換を繰り返す行為(FXなど)を表すゲームとして知られる。$${0}$$の代わりに実数$${K}$$を用いたものは定和ゲーム

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【定期投稿】1分でゲーム理論.001/戦略形ゲーム/戦略形ゲームの定義

【定期投稿】1分でゲーム理論.001/戦略形ゲーム/戦略形ゲームの定義

01.戦略形ゲーム戦略形ゲームの定義

戦略形$${n}$$人ゲーム$${G}$$は、以下のように定義される。

$${G=(N, {\{S_i\}}_{i \in N}, {\{f_i\}}_{i \in N})}$$

$${N=\{1,2,…,n\}}$$は、プレイヤー集合
$${S_i}$$は行動・戦略の集合
$${f_i}$$とは、直積集合$${S={S_1} \times {S_2}

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【定期投稿】1分でゲーム理論.000

【定期投稿】1分でゲーム理論.000

*今回は告知、と導入です。

ゲーム的状況、戦略的相互依存関係

時間・空間を超えて、ゲーム的状況はあらゆるところで観察できる。例えば企業同士の価格競争、或いは生物の進化などがその好例である。ゲーム的状況とは、大雑把に言えば、複数の主体が戦力的相互依存関係にある状況である。戦略的相互依存関係とは、自分の行動によって得られる帰結が、相手の行動にも依存している(影響される)ということである。そのような

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