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今後のクラブエコノミーの未来とは?Sonar +D: Interdependence w/Richie Hawtin

今年のsonarはオンラインで開催。その中でSonar +D CCCBが行ったトークセッションが非常に興味深かったので触れていきたい。

「Interdependence w/ Richie Hawtin: What would a new club economy look like?」→相互関係w/リーチー・ホーティン:今後のクラブエコノミーの未来とは?

このCOVID-19の状況で音楽業界(特にクラブやエレクトロニックミュージック関連)はライブが出来ないことでアーティスト含め非常に厳しい状況に陥っているのは言うまでもなく、今一度見直す時期を過ごしている。この状況下の中、30年間最前線で活躍しているアーティストであり、実業家でもあるRichie Hawtinがこの壮大で先の見えないテーマについて何を語るのか?ということに関して非常に関心があった。9月18日-9月19日にストリーミング配信された当日は観ることが出来なかったが、改めてアーカイブとして配信されたので視聴。

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脇を固めるのはベルリン在住のアーティストHolly Herndonと哲学者・デジタルアーティストMat Dryhurstで、彼ら2人は2020年春にpodcast「Interdependence」を開始。

Richie Hawtinといえば非常に多才な才能の持ち主で様々な関心を持っているアーティストである(というと凄くチープに聞こえるかもしれない・・) 自身も所属するレーベルMINUSの運営、日本酒をキュレートするENTER●SAKE、そしてDJ・作曲家として活動している。日本でも度々プレイしていて人気のDJだ。Underground ResistanceのRobert Hoodが1994年にMinimal Nationをリリースして最初のミニマルテクノの起源を作ったと言われているが、ミニマルテクノを世に広めた立役者の一人が間違いなくRichieであることは多くの人が同意するであろう。

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さて前置きが長くなったが、今回の1時間のトークセッションで印象的であったことは​


ポイント                     ①自粛期間は自分自身のリフレクション(内省)の時間に②DJコミュニティの中でのアーティスト(楽曲を作る)のエコシステムに警鐘を鳴らす      

①自粛期間は自分自身のリフレクション(内省)の時間に

2020年はアーティスト生活30周年の記念すべき年で、これまでの道のりを示していき自分が何者で今後どうなりたいかを魅せていく取り組みを行う予定であったが、COVID-19になり時間が取れたことによりそれがより加速すると同時に、近年ツアー、楽曲制作やソーシャルメディアでのプロモーションなど異常な程忙しく複雑になっていく状況を整理する為にSLOW DOWNする時間としてある意味貴重な時間として捉えた。主に自分自身がこれまで何をしてきて、今何をして、今後何をしていきたいかということを意識て思考する時間に活用した。

②DJコミュニティの中でのアーティスト(曲を作る)のエコシステムに警鐘

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*音楽業界の大枠のエコシステム(収入構造)とはこんな感じでしょうか

音楽消費の仕方:                        レコード→カセット→MD→CD→ダウンロード→ストリーミング

この消費の仕方の変化に対応した方も多くいたと思いますが、音楽の消費のされ方が半世紀で大きく変化する中で音を形ある物(レコード・CD)と消費するのは限りなく嗜好品として捉えられるようになっている。1980年代にテクノがデトロイトで産声を上げた時はシーンは小さく、DJがクラブでプレイした曲をもとめて翌日レコードストアに行って買うという循環が成立していた。今はこのエコシステムが楽曲をつくるアーティストにとって成立していないという。DJカルチャーの人気が世界中で爆発してDJの人気が高まるにつれて、Richieはアーティストの価値が薄れていくように感じたという。それはテクノロジーの進化と共に音楽の消費が進み、どの曲をかけているかがわからなくなったことも一つの要因である可能性もある。(私はSHAZAMをしたり後ほどプレイリストをネットで調べます)プレイリストを公開することを嫌うDJもいる中、RICHIEはこのことに早くから警鐘を鳴らしている。彼は早くからネット上で自分自身がかけた曲をクラウドが即座に知ることが出来るTwitter DJを2000年代後半に始めた。

そして最近ではSpotifyも有名DJのtrack IDsの気にいってる曲を知れるプレイリストが公開されていてRichieも提供しています。

*そのほかにはNina Kraviz, Ellen Allien, Honey Dijon, Todd Terry, Dixon, Carl Coxなども。

そして彼はこ30年経ったシーンが大きくなりすぎて多くのものや繫がりを失なったので仕組みを作り直したいと考えている。たとえば多くの反論はあることは承知でアーティストの為の社会保障年金のようなものとか?そうすることで全てのアーティストを支えるものをつくる。ライブが出来ないとアーティストや関係者が生計を立てられない状況であることはこのコロナ禍でより一層鮮明になった。これはこの自粛期間によって新しく何かが起こったわけではなく、常に進化出来ていないところの本質を見直さなければならなくなり、それが急速に求められたと考えることが出来る。(今や多くの方が発言していますね)

一瞬この投稿を書く上でRichieってどの目線でこの話をしているのかな?って思った。アーティスト?DJ?オリジネーター?過去の人?実業家?はたまたそれ以上?

思えばRichieは世界を股にかけ、常に新しいことに挑戦するアーティストであり、自分自身の周りのコミュニティを創り上げてイベントやお酒をブランディングして広めていくという意味ではアーティストの目指す形を体現している存在である。DJコミュニティがどうあるべきを描き、それを形にしていくことが出来るのかもって思うトークセッションでした。目新しいことで驚くことは多くはなかったけど、シーンの最前線に居続ける人の発言には「芯の強さ」のようなものを感じる時間でしたね、妙に発言に説得力がある。テクノはそもそもデトロイトにしろ、ベルリンにしろ、レジタンスが根源にある音楽でもあると思います。そういう意味でテクノアーティストやDJはこの時代を生き抜くでは頼もしい存在ですね。というかこういうトークセッションがしっかりとある環境が羨ましい、日本でもカルチャー談義が増えてほしい。

感染者数が日本でも増えて第三波に突入して少々、不安が駆り立てられる中、音楽やカルチャーはまたサバイバルタイムで地下に潜ることが加速すると思います。再度自分たちのエコシステムを見直す時間になりそうですね。クラブの存続、アーティストの生計の立て方、フェスのシークレット化、配信イベントの在り方などなど考えること多々ありです。とにかく収益チャネルが1,2つは危険すぎる・・・

最後にDJコミュニティでいうと今自分の中では音楽はチル系か極端にレイブ系に分かれるのとジャーナリズムを増やして議論を増やしていくイベントが求められているように感じます。あくまでも個人的見解です。それでは。


追伸:この投稿をリリースして数日経ち何か違和感を感じていたので、何かなと思いましたが、インタビューの中で「In the 90s~」を連発する言葉に、過去を振り返るのも大事だけれどもそれでは新しい世の中に適応できないのでは?と思いもしたのです。(50代を迎えてmixcloudやtwitchなどに対応しようとしてるRichieも凄いが)現に先日次世代のアーティストが出るライブを見てきましたが、youtube/tiktok/spotifyの再生回数を軸にバスりを起こし、ある意味ライブに頼らず自分たちのコミュニティ/世界を創り上げるスタイルが主流になるであろうこの先の中で、音源を買う人は一部のロイヤリティを持ったファンとコレクター等であり、エコシステムはかなり変わりますし、小さなコミュニティで活動する人もいれば海外に手を伸ばす人もいる。デジタルネイティブ世代はこの時代でも強いですね・・・・自分自身もアップデートが必要と感じたのでした。


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