見出し画像

仕事をしながら『CITY』を聴いていたら、6人の腕の中で大号泣していた

金曜日の朝8:00。在宅勤務だったこの日はパソコンをつけると、そこには絶望が待ち受けていた。至急かつヘビーな案件が発生することを知り、朝から落ち込んではならない、と気持ちを立て直すために手に取ったのが、SixTONESの2ndアルバム『CITY』。1/5(水)に家に届いたのに、金曜日まで手をつけていなかったダメなファンだな…と思いながら聴き始めた。耳に流れ込んでくる6人の声を感じながら、手と目は必死にパソコンを追っていた。

だが、ふと気付くと、大号泣している自分がいた。

え、なんで?という自分に対する驚きが自分自身を襲い、手を止めた。ちょっと待った。なんだ、このアルバムは?と思った。
耳から流れ込んでくる歌詞とメロディーと、そして6人の声。こんなにも音だけで寄り添ってくれる存在を感じるとは思わなかった。
涙を拭きながら、待て待て、ちょっと待て、元々聞いていた『CITY』のコンセプトと違う、と思った。私がちゃんと理解できていないのかもしれない、再解釈しなければ、と思った。



SixTONES 2ndアルバム『CITY』のコンセプト

2ndアルバム「CITY」は、そのタイトルの通り“街(CITY)”がコンセプト。それぞれの楽曲ごとに主人公が存在し、その日一日の時間の流れの中で繰り広げられる、何気ない日常の出来事や物語が集まる場所を“街(CITY)”と表現。さらに洗練されたノンジャンル/ボーダレスな音楽作品が完成した。
共通楽曲12曲の曲順は「CITY」のコンセプトの通り、1日の時間の流れをなぞるかのようにデザインされています。そのため、楽曲毎にイメージする“時間帯”が存在しており、初回盤Aは朝、初回盤Bは夕方、通常盤は夜をイメージした楽曲でスタートする形で構成。形態ごとに曲順のスタート位置が異なります。


リリース前よりこのコンセプトは紹介されており、アルバムを手にするまでは時間の経過によって、人々の過ごし方をイメージし、その過ごし方と各楽曲がリンクした形で並んでいることを想像していた。そしてアルバムを手にして、想像通り、上記のメッセージを受け取ることができた。

でも、それよりももっと強く感じたのは、人々が過ごす1日の時間の経過によって、想定される過ごし方・シチュエーションの中で、人々が抱くであろうすべての感情に寄り添っていることだ。
“街(CITY)”には多様な人が存在する。様々な世代の人々が、それぞれに自分の置かれている状況があり、その状況に対して、それぞれに感情を抱いている。そんな一人一人異なる多様な人々が居るのが、“街(CITY)”である。
この「CITY」には、そんな“街(CITY)”にいるすべての人を包み込む楽曲たちが集まっているのである。

前向きでポジティブな「動」の感情にも、何も感じない不安げでネガティブな「静」の感情にも、その両方の感情にすべての楽曲が寄り添っている。

具体的にそれぞれの楽曲で私が個人的に感じ取ったことを紹介していきたい。初回盤A、初回盤B、通常盤それぞれに収録曲が異なるが、今回は共通楽曲の12曲にフォーカスを当てたい。(それ以外の楽曲については今後紹介の機会を設けたい。)



すべての静と動の感情に寄り添う『CITY』の楽曲たち

-Sunrise-
始まり、というのはワクワクするものでありながら、怖いものでもある。何かが始まることで新たな体験に出会う。でもその新たな体験に不安や緊張を感じることがある。そこには二つの相反したの感情が存在するのだ。
朝の始まりも同様に、その日にワクワクしていたり、やる気に満ちている動の感情、布団から出るのが億劫だったり、既に疲れてしまっていたり、不安や緊張を抱えている静の感情、一人一人異なる感情を抱いている。そんな1日を始める人を、始めた人を鼓舞するのではなく、そっと寄り添い、肯定してくれる。何かを変えてくれるほどではないけれど、そこにあるだけで彩が添えられる、そんな楽曲たちが集まっている。

【8am】
朝にぴったりの爽やかなメロディーに、砂糖をたくさん入れたカフェラテみたいな甘い歌詞。とっても甘いラブソングなのに、こんなにお洒落に爽やかに歌い上げられるのがSixTONESのすごいところ。リズム感のいい英詞が耳に心地よい。朝、1日の始まりというと、「今日も頑張っていこう〜!元気出していこう〜!」みたいなエールソングかつアップテンポのものを想定していたが、1日の始まりという静と動が混在した世界を迎える全ての人たちを前向きにしてくれる楽曲だ。「ちょっと頑張ってみようかな」と思わせてくれる、そっと背中を押してくれる、さりげない優しさが詰まっている。

【僕が僕じゃないみたいだ】
この楽曲をSunriseのパートに入れたのは、メロディーの印象が大きいように思う。静にも動にも揺らぎやすい朝において、このメロディーは至ってフラットなのだ。前向きなままでもいられるし、ちょっとセンチメンタルにもなれる。歌詞がドラマチックだからこそ、共感することもあれば、自分の日常と少し距離を置いて聴くこともできる。この楽曲の特徴が聴き手にとっては都合がいい。
ちなみにこの楽曲がシングルでリリースされた時から、ずっと思っていたのだが、「僕が僕じゃないみたいだ」を聴くと、L'Arc〜en〜Cielの「Flower」を思い出す。学生時代、朝の通学時間にいつも「Flower」を聴いていたので、Sunriseのパートにあることが嬉しい。

【Ordinary Hero】
全ての人類に聴いてほしい楽曲。朝の忙しない喧騒に負け、戦う野心を失い、諦めそうになる私たちを肯定し、そばにいてくれる。「泥臭くても君は光ってる」「Work so hard day and night 十分カッコいいじゃない」と。やらなきゃいけないことがある時、やっていることの価値や意義を見出せない時。生きていると、わりとよく発生するこのネガティブなシチュエーションにおいて、「しゃかりきに頑張ろう!」とエールを送るのではなく、「十分カッコいいよ、俺たちは知ってるよ」とそばにいてくれる。
個人的な話になるが、この間、松村北斗が毎日朝ドラで日本中を魅了している姿を見て、北斗は自分の努力で身に付けた力を存分に発揮し、世の中に幸福を届けているのに、自分は何をしているんだろうと落ち込んだことがあった。そもそも比較する対象が間違っている、というツッコミがあると思うが、「仕事」という括りでいえば同じ。なのに私は自分の働きを通して、誰かに価値を返せているのだろうか?何かを提供できているのだろうか?何のためにこんなにすり減らして、がむしゃらにやっているのだろう?と考え込んでしまった。まさしくそういう時に聴きたいと思った。
この楽曲への想いを松村北斗は下記のように語る。

「“Ordinary Hero”は……たとえば僕なんかは、普通に働くっていう意味がわからないだろうと思われてると思うんですよ」

– アイドルだから?

「うん。でも僕としては何が違うのかわからなくて。学生は勉強することが仕事だし、人によっては家事をすることが仕事だったりもするし、色々な状況の人がいますよね。この曲は、そういうすべての人たちのために用意された歌だと思うんです。だから充分に僕にとっての曲でもあるよな、って」

(引用:『CUT』No.440 2022年1月号)

どんな仕事をしている人にも、家事をしている人にも、自分探しをしている人にも、苦しい時はある。松村北斗の言葉がなくても、この楽曲を聴くだけで、どんなに苦しい時でも全肯定してくれ、「俺たちSixTONESも君と同じだよ」と教えてくれたような感じがした。

【Your Best Day】
洋楽ポップスのようなかわいらしい楽曲。そしてここの曲順に関しては、「Ordinary Hero」から「Your Best Day」に続くことに意味があるように思う。ネガティブな状況を丸ごと肯定したのちに、「感じたことのない最高の日に俺たちが連れていってあげるよ!」と。この楽曲を聴く前には見えなかった光を、SixTONESが靄や雲を晴らして、見せてくれる。


-Sunset-
朝、昼と駆け抜けるように過ごし、夕方というのはほんの少しだけ息をつける時間だ。1日の合間に存在する貴重な瞬間である。
夜に向かって、再び気持ちを引き締めたり、ラストスパートをかける準備時間として夕方を過ごす人もいれば、1日を終えるためにシフトダウンしたり、リラックスモードに切り替える時間として夕方を過ごす人もいる。
そのどちらにも寄り添えるよう、曲順によって表情を変える楽曲が揃っている。

【Fast Lane】
「Fast Lane」は『CITY』の中でも聴く順番によって、最も表情を変える楽曲だと思う。通常盤のように中盤以降にあると、夜に向けて、徐々に熱量を落としていくような感覚があるが、初回盤Bのように前半にあると、夜に向けて、さらに熱量を上げていくような、駆け抜けていこうとする勢いを感じる。
メロディーも歌詞も挑戦的で、疾走感と勢いのある楽曲だ。これまでのSixTONESの楽曲の中で言うと、「ST」のような強いメッセージ性を感じる。
日常を過ごす中で、パフォーマンスのピークを夜に持ってくる人、一方で夜に向けて、落ち着かせていく人、そのどちらの人にもマッチする繊細なメロディーである。

【Good Times】
どんな1日でも「1日過ごしてきた」「1日やりきった」ことを称賛してくれる楽曲。1日が終わりを迎えようとする中で、達成感や夜というプライベートの楽しい時間が始まるワクワクした気持ちと、何かうまくいかなかったことがあり、途方に暮れる気持ち、その両方の気持ちを受け止めるSunsetパートのラストにふさわしい。
「楽しむ余裕のある人はこのまま俺たちと楽しもうよ、まだちょっとそういう気持ちになれない人はゆっくりでいいよ、でも大丈夫、俺たちはずっとここにいるから、来たい時においで」と。


-Night-
このNightパートには、夜を過ごす3パターンの人々の心情に、3つの楽曲が寄り添っているように感じた。
「夜」と一言で言っても様々なシチュエーションや心情が存在する。夜というのは1日の時間の中で最も多様かもしれない。これから夜の街に繰り出すムーディー感、ワクワク感を覚える動の感情、一方で1日を終え、達成感や虚無感を覚えるような静の感情。1曲でその両方に寄り添うのではなく、そのどちらにも寄り添えるよう、この3曲がNightパートに集められている。

【マスカラ】
Interludeとも相まって、夜のBarを彷彿とさせるようなテイストに。曲の歌詞としては喪失感やセンチメンタルな気持ちになりがちだが、メロディーにムーディーかつ疾走感があるため、±0な感じが夜にちょうどいい。
「マスカラ」自体は言わずと知れた名曲であるが、このノンジャンルでボーダレスなアルバムの中でも唯一無二の存在感を放っている。他の楽曲とは交わらない、でも『CITY』に馴染み、人々を包み込む居場所として存在している。

【Rosy】
夜というのは、時々一周回ってやる気に満ち溢れることがある。その日1日やったことに手応えを感じて、「明日からもまたやってやろう」というような気持ち。その気持ちを後押ししてくれる楽曲だと感じた。MVのヒーローとヴィランの合間で揺らぐように、「自分には何かができるかもしれない」「やってしまうかもしいれない」というスリル感を私たちに感じさせてくれる。
また今回主題歌となった映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のストーリーと照らし合わせることでまた見えてくることがありそうな程、趣向が凝らされている。この楽曲とあのパフォーマンスを掛け合わせることに挑戦したSixTONESに拍手したいし、パフォーマンスがあることによってパワーアップする楽曲である。
この早口過ぎる歌詞のレコーディングはメンバーごとにやってるのですか?横一列に並んでやった?別々だとしたら息がぴったりでびっくりしちゃう。

【フィギュア】
「フィギュア」は以前記事として1本書いたくらい思い入れのある楽曲。この位置で入れてくるか……と泣きそうになった。『CITY』における「フィギュア」は人々の心に寄り添い、「それでいいんだよ、大丈夫」とそっと優しく声をかけてくれる存在。1日うまくいかなかったこと、つらかったこと、本当にこれで良かったのかなと悩むこと、その全てを受け入れ、「大丈夫だよ」と包み込んでくれる。街の人々に「代替不可であれよ」と優しい期待を込めたエールをくれる。そんなやさしい、あったかい楽曲。


-Midnight-
真夜中は夜を越え、全てを手放すひとときである。お酒を飲んだり、友達と騒いだり、日々抱えている何かをその時だけは忘れ、手放し、解放という名の自由を楽しめる限られた時間。
その時間を全力で楽しんで、自分を解放して、「君の魅力を存分に発揮しちゃってよ」という動。一方で、自分を取り巻く全てを解放し、自分の欲求と向き合う時間だったりもする。雁字搦めにされたしがらみを忘れ、自分の過去や現在を振り返り、噛み締め、思いを馳せる静。
SixTONESのイメージをもマッチするこのMidnightのパートに両極端の楽曲を持ってきている。でもそれが自然と流れになり、物語を紡いでいる不思議な感覚こそ幸せである。


【Odds】
SixTONESのイメージとマッチする楽曲。(今後またカウコンでセクシー5があったらこちらを是非とも歌ってください。)
ディスコチューンで華やかな夜を彷彿とさせながら、「確率、可能性」を意味するタイトルの通り、男女の駆け引きを描写する歌詞。クラブで起こる一つの場面を切り取ったような、奪略に燃える男の姿はSixTONESによく似合う。ディスコが本当によく似合う。

【WHIP THAT】
田中樹が「歌というより音」と評し、横浜アリーナを物理的に揺らしたという既に伝説となりつつある楽曲(横浜アリーナさん、最後に耐えてくれてありがとう。ゆっくり休んでね…)。いよいよSixTONESもここまで来たか!??!?ジェシーがParty Rock Anthemかけ続けたからか!?!!?これまで系統でいうのであれば、「Special Order」や「RAM-PAM-PAM」の系統。一夜の快楽に溺れるSixTONESに私たちも溺れるべし。元BIGBANGのファンとしては大好物です。

【Everlasting】
「WHIP THAT」からの温度差に最初風邪を引くかと思った。
だけど、この楽曲を朝でもなく、夜でもなく、真夜中に持ってくるところに、どんなことも包み込んでくれるSixTONESのあたたかみを感じる。真夜中から夜明けに向かって、やってくる明日への決意に満ちた心や新たな1日を迎える喜び、そして拭いきれない不安ややり場のない虚無感を、Everlastingを聴きながら、SixTONESと語り合うことで、すべてを包み込んであたためてくれる。「大丈夫、君の隣には俺たちがいるよ」と穏やかな声で。
個人的にはBIGBANGの『꽃 길』を彷彿させる歌詞だな、と思った。


『CITY』のプロモーションとして渋谷に掲げられた大型広告にはこんなメッセージが書かれている。

画像1

「この街の主役は君だ」

このメッセージには、「どんな状況であっても、俺たちが君をSpecialな主役にしてあげるよ、SixTONESの音楽でね」というメッセージが込められているように思う。物語のヒーローに人生があるように、ヴィランにも人生がある。いろんな人々を多様に捉え、「どんな君でも包み込んであげる」と、私たちの日々を本気で彩り、愛を与えようとしてくれているのだ。

驚くことに、それがこのアルバムのコンセプトと楽曲だけで伝わってくる。コンセプトを前提として理解し、楽曲の歌詞とメロディー、そして6人の歌声を聴くだけで、ちゃんとその楽曲がもつ情景と彼らの表情が浮かぶ。それだけの高いレベルの楽曲を選び、彼らが表現しきっているのだ。
視覚情報がない、聴覚情報だけなのに、なぜここまで伝えられるのか。歌唱力はもちろん、アルバムという形で楽曲を届ける意義も含め、彼らの表現力に驚かされた。

この点について、実際に彼らは自分たちの想いを語っている。

【田中樹】選曲のポイントについて
「<聴く>ということですね。1枚目(1stアルバム『1ST』)は、この曲はこうやって唄いそうだな、踊りそうだなって、映像や視覚的な情報を想像しやすい音楽が多かったと思うんですけど、今回は、耳への情報だけで100%満たせるもの、っていうイメージです。」
(引用:『音楽と人』2022年2月号)
【田中樹】
「例えば『1ST』は映像や風景とか、何かを想像しながら聴くことが多い音楽なんですよ。でも『CITY』は耳で聴いて完結できるというか、聴いてるその人の中にすんなりと溶け込むんだよね。それって音楽としてすごく大事じゃないですか?アルバムを聴いてライブでクラップしたいなと思わせたら、それはライブでクラップして100点の音楽なわけで。アルバムだけだと70点や80点じゃんという。そういう意味では今回はアルバムとして完璧に仕上げることができた感覚があるんですよね。」
(引用:『Taliking Rock!』2022年2月号)

耳への情報だけで100%満たせる。言葉で言うことは簡単だが、それを実現することの難易度は非常に高い。しかしSixTONESはその難易度の高い壁を乗り越え、それだけでなく、聴き手の気持ちを汲み取り、心に寄り添う表現まで成し遂げたのだ。

そのうえ、人々に寄り添う楽曲たちを生み出したSixTONESとしては、当初からその狙いがあったわけではなかったというのだから、驚きである。

【松村北斗】
「確かに、人を寂しくさせないアルバムだと思う。CITYというコンセプトが先行していて、みんなで曲を選びながらアルバムを作っていたら、最終的にそこに行き着いた感覚がある。寄り添うものを作ることを最初から目指していたと言うより、街が出来上がっていくようにちょっとずつ完成していった、みたいな」
(引用:『TVガイドAlpha. XX』VOL.50)

SixTONESというのはすごい。正直SixTONESのファン歴はまだまだ短いので、SixTONESの多彩な魅力や個々の個性の強さということについては知っていたつもりだが、それが掛け合わされると、こんなにも化学反応と相乗効果が起こるということは知らなかった。驚きの連続である。「アイドルってこうだよね」ということはもちろん、「SixTONESってこうだよね」ということさえも、すべての前提をぶち壊しにきた…と思った。

なぜSixTONESはまだ誰も開拓したことのない道を自ら拓き、実現できるのか。やってのっけることができるのか。
そこには、彼らが“アイドル”であることを自分たちの目的の実現に合わせて利用する姿勢と、彼らが大切にしている“team SixTONES”の存在があるのではないだろうか。



SixTONESにとっての“アイドル”

一時代前のアイドルというのは、用意された煌びやかな衣装に身を包み、用意された楽曲を、用意された舞台で懸命に歌って踊る、というスタイルが多かったように思う。しかしその概念がK-POP等の海外アイドルの流行によって壊され、アイドルであっても、自分たちで作詞・作曲をしたり、プロデュースをしたりすることが主流になってきている。
実際、SixTONESもこれまでと同様、今回の『CITY』を制作するにあたって、コンセプトの具体化や曲の選定、曲順決めに関わっている。またメンバーによっては、各楽曲のイメージや歌詞に自分たちの希望を反映させていたり、楽曲の作詞や演奏に取り組んでいたりと、クリエイティブにもしっかりと取り組んでいる。メンバー本人たちの意思が込められた楽曲が出来上がっているのだ。

ジャニーズのアイドルがここまでクリエイティブに直接携わっていることに意外性を感じる人もいるかもしれない。でも彼らはアイドルの在り方よりも今自分たちがやりたいことにこだわっているのだ。自分たちがやりたいことを実現するためにはどうしたらいいか?ということの最善を常に考え続けている。
考え続けた結果、より良いものを作り出すための一つの武器として、「アイドルである」という自分たちの立ち位置を上手に利用しているのだ。例えば、6人それぞれの個性ある歌声をフルに使って楽曲の表現ができることや、パフォーマンスの中でそれぞれの個性を表現できること、またクリエイターたちの手を借りられること、レーベルからアイデアをもらえること等、アイドルとしての在り方に囚われるのではなく、自分たちがやりたいことを実現する上で、アイドルであるが故に得られるメリットを存分に生かしているのだ。

実際に田中樹はインタビューの中で、今回の『CITY』について、「アイドルらしくない、ジャニーズらしくない」と言われることについて、このように語っている。

【田中樹】
「いや、アイドル・アルバムじゃないですかね。ある意味アイドルって武器だし、盾だし。俺らがアーティストだったら、このアルバムは作れないから。アーティストと名乗ることはしたくない。
(引用:『CUT』No.440 2022年1月号)

また、SixTONESがジャンルに囚われない幅広い楽曲の表現ができることについて、松村北斗はこう語る。

【松村北斗】
「これまで曲を選り好みしてこなかったことがやっぱり大きいですね。俺らはこうだから、って決めるんじゃなくて、その曲のために俺らがやれることってこうだよね?って感覚でやってきたから。それができたのって、僕らがアイドルグループだからなんですよ。アイドルってどうしても見られ方が決まってくるから、あえてアイドル的な感覚や主張を避けてしまう時もあった気がするんです。でもジャニーズにいてアイドルやってたら、むしろこれだけいろんなことができるんだっていう考え方にシフトできてからは、もっといろんな姿を見せたいって思うようになって。」
(引用:『音楽と人』2022年2月号)

アイドルグループの場合、クリエイティブな活動をするとなると、ある特定のメンバーが指揮をとり、そのメンバーに作品の中身も偏ってしまうことがある。そうなると、どうしても多様性に欠ける部分が出てきてしまう。その人の世界観に寄っていたり、その人の好きなジャンルが反映されていたり。クリエイティブを担うメンバーの世界観=グループの世界観となってしまい、ジャンルレスやボーダレスを実現するのはなかなかハードルが高い。

でもSixTONESにはもう一つの強み、武器がある。
それがteam SixTONESの存在だ。



SixTONESを構成するteam SixTONES

“team SixTONES”とは、「ファンはもちろん、スタッフや少しでもSixTONESに関わってくれた全ての方々はSixTONESの仲間である」という彼らが大切にしている考え方であり、呼称である。

楽曲作りにおいてもteam SixTONESは存在している。SixTONESの楽曲作りにおいては、メンバー6人もteam SixTONESに加わりながら、レーベルが彼らをサポートしていることはもちろん、クリエイターを呼び込んでみたり、新たな振付師を呼んでみたりと、team SixTONESという複数の才能とアイデアで構成されたチームで取り組んでいる。チームで取り組んでいることが、この妥協のない音楽を生み出している所以なのだと思う。

特に今回『CITY』を聴いて、強く感じたことがある。それは、レーベルやクリエイターの方々で構成されているであろうteam SixTONESが、彼ら一人一人の個性や感性、考え方をとても深く理解し、アルバムを作ったということだ。というのもすべての楽曲において、楽曲が表現したいことと、歌い手である彼ら6人の間にミスマッチが一つもなかったのだ。彼らがこれを歌う意味が、全楽曲において納得できた。これまでの彼らの過去や経験してきたこと、そして大切にしていること、ファンへの想い等を意識・反映した楽曲たちばかりだった。team SixTONESのSixTONESという存在への理解度が半端なく高いのである。

そのことが窺える言葉がインタビューの中にあった。

【田中樹】
メンバー同士で意見が食い違う場面もあるけれど、大人だから、自分の案が通らなくてもヘソを曲げたりしないし。でも遠慮せずに意見をぶつけられる関係だし、俺らの視野も広がっているから、最近はスタッフさんを含めてチームが思い描く“カッコいい”が近くなってきた気がする。
(引用:『ViVi』2022年2月号)

なぜここまでの理解があり、音楽というアウトプットで表現できるのか。

この疑問だけがずっと残っていたが、ある一つの言葉で深い納得感に包まれた。

【田中樹】SixTONESを人間以外にたとえると?という質問
「SixTONESは俺らじゃないんです」
(中略)
「俺にとってSixTONESは概念、信仰的な何かで、俺らはそのために集められた6人っていう感覚なんです。で、ファンも俺らと一緒にSixTONESを囲んでここにいるっていう」
(引用:『CUT』No.440 2022年1月号)

度肝を抜かれた。同時にまだまだ理解できていなかったと反省した。

【京本大我】
「そんなワガママな僕たちのことを、ファンの方々が周囲に広めようとしてくれるんですよね。一緒にSixTONESという概念とか文化を作ってくれるチームの一員だし、その存在が僕らの最大の武器かも。」
(引用:『ViVi』2022年2月号)

SixTONESって概念であり、文化だったのか。だからなのか。

SixTONESを、アイドルグループや人として捉えるのではなく、SixTONESという概念を構成する一つの要素として存在する6人が集まった時に、どういうスタンスで、どんなことを大切にし
、何を伝え、何を作り出していくべきなのか、SixTONESという存在がどう在るべきなのか、ということを概念として、SixTONESに関わるすべての人々で考え抜く。そして、考え抜いたものを6人が体現するためにはどうすればよいかをメンバー含め、team SixTONES一人一人が日々追究しているのだ。

だからこれだけのアルバムを作り上げられたのだ。

【松村北斗】
「僕はジャニーズの伝統って曲調ではなく、信念だと思っているんですが、『CITY』はそんなジャニーズがつないできたファンの方との距離感みたいなものをすごく大事にした一枚です。」
(引用:『anan』2281号)



私がSixTONESに興味を持つことになった最初のきっかけは、俳優として活躍する松村北斗の姿だった。松村北斗という存在をきっかけに、SixTONESについても知るようになったが、心のどこかでSixTONESで歌って踊る松村北斗よりも、演じている松村北斗の方が好きだ、という気持ちがあった。でも彼の本業であり、大切にしている居場所はアイドルであるSixTONESであることを知っていたので、そんな自分の気持ちが嫌だった。でも今回『CITY』というアルバムを手にし、アイドルとして、歌って踊る松村北斗が、いや、SixTONES6人が、どれだけ尊いものなのか、自分にとってありがたい存在なのか、すごくすごく気付かされた。彼らと同じ時代に生きていること、そしてファンとして、team SixTONESとして、同じ道を歩けていることに、心から感謝したい。

初回盤Aから聴き始め、初回盤Bを経由し、通常盤の最後に収録されている「Strawberry Breakfast -CITY ver.-」まで全曲聴いた時、新たなメッセージをこの楽曲から受け取ったような気がした。一通り楽曲を聴いて、『CITY』から感じ取った「どんな状況であっても、俺たちが君をSpecialな主役にしてあげるよ、SixTONESの音楽でね」というメッセージに呼応するような「君の存在は僕をスペシャルにしてくれる」というメッセージをもつ「Strawberry Breakfast」。そのスペシャル感・リッチ感をたずさえたまま、日常馴染みしやすい、気持ちをあげてくれるビートを強調したアレンジに生まれ変わっていた。

そのすべてから、まるでこのアルバムを最後まで聴いたファンへの置き手紙みたいだと思った。

「俺たちの音楽を聴いてくれた君が、俺たちをスペシャルな存在にしてくれたよ!」

とでも言ってくれているような。
これからも、この先もずっと、SixTONESにそう思ってもらえるようなファンで、team SixTONESの一員で在りたいと思う。






おけい

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?