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南相馬の「農と食」を考える①-トレ食株式会社 沖村智さん-

Next Commons Lab 南相馬(以下、NCL南相馬)では、南相馬での「農と食」に関わるテーマで事業を立ち上げるメンバーを新たに募集します。
この記事では、既に南相馬で「農と食」に携わる方々にインタビューを行い、それぞれのプレイヤーの活動内容や南相馬の魅力についてご紹介します。

トレ食株式会社 沖村智さん

本連載の初回、お話をうかがったのは、南相馬市原町区で事業を営むトレ食株式会社の代表・沖村智さんです。
プロジェクトの設計について市役所の方にご相談した際、真っ先にご紹介いただいたのが沖村さんでした。
ホームページを拝見しても、既存の枠にとらわれない面白い取り組みをしておられそう…。期待に胸を膨らませ、いざ取材開始!

朝礼の様子、地元の方を中心に雇用

事業内容

―まずはトレ食株式会社がどのような会社かおうかがいしてもよろしいでしょうか。
沖村さん(以下敬称略):弊社は南相馬と東京に拠点を置き、食品廃棄物の再利用などを主な事業としている会社です。食品廃棄の再利用については大学等の研究機関で盛んに研究がなされていますが、実際の企業の現場のオペレーションや施設環境が違うため、研究結果をそのまま実際のビジネスに応用するのは意外と難しかったりします。弊社では研究機関の実験環境に近い形で工場のラインを組んでいるため、イノベーティブな事業が生まれやすい環境となっています。

―具体的にどのような事業が生まれているのでしょうか。
沖村:今まで取り出すことが難しいとされていた、食品に含まれるセルロースという成分を取り出す技術を開発しました。これによって廃棄食品を利用し別の食品や素材への加工が可能になります。その加工技術を使って生まれた原材料を販売する事業を柱に活動しています。

―今まで使えなかった廃棄食品が使えるようになると、さらに新たな事業の展開が生まれそうですね。
沖村:実際に製造実験をしているものの中に、魚の内臓やアラを臭みの少ないものに分解して魚のエサを作るというものがあります。


魚の廃棄部分の臭みを軽減して、再度魚のエサへ加工

―魚の一部が再び魚のエサになる、面白い循環ですね!
沖村:他にも野菜の廃棄部分を利用することで六次化製品を作ったり、色んな応用が利きます。食品を廃棄するにも多額の費用が掛かりますが、不要とされていたものを価値あるものに転換することで、食品ロスの課題解決にも貢献できるのではないかと考えています。

南相馬という場所

―そんなアイデアと技術をお持ちのトレ食さんですが、沖村さん自身は元から南相馬との関りがあったのでしょうか?
沖村:いえ、実は全く関わりはありませんでした。長野県出身で、都内の大学を出てからしばらく社会人を経験した後、地元の村役場の職員をやったり、議員をやったり、農業法人の立ち上げをしてみたり。前職は株式会社トレードマークという広告系の会社に勤めていました。

―ええ!全く南相馬とは交わらなさそうな経歴ですね。ではどうして南相馬で事業を立ち上げるに至ったのでしょうか。
沖村:実は他にも候補地はあったのですが、いずれも災害の二次的被害のあった街でビジネスをしようと考えていました。その中で南相馬を選んだ理由は、ずばり「ビジネスの余白」と「行政職員の熱量」でした。

―「ビジネスの余白」と「行政職員の熱量」、詳しくうかがえますか。
沖村:南相馬という場所は地方都市であることは間違いありませんが、それでも一定の都市機能が整備されています。また仙台や東京といった都市部とのアクセスも良く、ビジネスするには不足のない場所であると考えました。また、実際に現地に足を運んで行政の方々とお話をする中で、担当の方が本当に熱心にこの地域のことを想っていらっしゃり、そこが決め手となって1日で決断しました。

想いを語る代表の沖村さん

―なるほど、事業性だけではなく社会課題に対する想いで南相馬という場所を選ばれたのですね。
沖村:そうですね。特にこの地域で起こった災害の二次的被害はすぐに解決するようなものではありません。県外だけではなく県内でも風評被害がある、そんな場所だからこそ食に関する事業で上場を目指したいと思っています。それが地域や復興の一助となればと考えています。

どんな人に来てほしいか

―今回NCL南相馬では「農と食」に関するテーマで起業する方を募集していますが、沖村さん目線で「こんな人に来てほしい!」というアイデアがあれば教えてください。
沖村:弊社は農業経験もある中で加工を専門として事業を行っています。そういう環境は地方でも多くあるわけではないと思うので、その点はこの地域の強みです。そういった環境をうまく使ってくれるといいかなと思いますね。

―具体的にどのような関わり代がありそうでしょうか。
沖村:例えばですが、「柳の木を植える」事業なんていかがでしょうか!柳の木は生育が早く、セルロースを多く含んでいます。南相馬は特に震災以降耕作放棄地となった場所で鳥獣被害が増え大きな問題となっています。そういった場所に柳の木を植えることで鳥獣害対策にもなり、農家さんへの貢献になります。育った柳は弊社に売っていただくことで二次加工が可能ですので、いいパートナーになれそうですね(笑)

プラスチックの代替原料を使用したペットボトル

―なるほど!一歩引いた目線で農業への貢献もできますし、地域内での経済循環にもつながりますね。
沖村:六次化商品みたいな切り口でいくと、南相馬市民に食べてもらえるようなソウルフードがあるといいですね。前職では広告系の仕事をしておりましたが、外の人に食べてもらうような特産品を作るのには限界があると感じています。南相馬では松永牛乳さんの「アイスまんじゅう」や原町製パンさんの「よつわりパン」などは、地域に愛される商品となっている例ですが、そういう地消されるものを地域の原材料を使って作れると、より地域の人が親しみを持ってくれますよね。そうやって地域で愛されるものがやがて外のマーケットにも広がっていく、そんな事業があると面白そうですしぜひ応援したいです。


Agripreneur Projectについて

プロジェクト概要

Next Commons Lab 南相馬では「予測不能な未来を楽しもう」をテーマに、南相馬 で次世代のサステナブルな「農と食」にチャレンジするプレイヤーを募集します。

求める人材

農や食をテーマに、既存の概念に捕らわれず新たなチャレンジをしたい人(3 名程度)

採用に関するお問い合わせ

定期的に採用説明会を行っております。また個別のご相談や質問も受け付けております。お問い合わせフォームから気軽にお問い合わせください。
皆様の挑戦を心よりお待ちしております!
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