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華染凪人
2021年11月18日 23:54
ツツジのピンク色が目に刺さる。 老い寂しい石垣を、上から覆って飾り立てる鮮烈なダークピンク。 路地裏の奥から、その鮮烈さが暗闇に慣れない目の奥を鋭く刺してくる。暗闇を正しく捉えられない僕は、路地裏と、新しく舗装されたばかりの道の境で立ちすくんでいた。 あまりの鮮やかさに目を覆うと、指の間から遠くで咲くツツジの花びらが零れ落ちる。 足元に視線を逃すと、アスファルトの継ぎ目からツツジの花
2020年3月29日 07:00
最前列で君に手を振る。 モニターの中で歌う君に、僕は現実の世界から手振るんだ。 ヴァーチャルの身体は、箱の中に隔離された空間で本物になる。 君が歌うその一瞬、その場所は本物の光に輝き始める。 僕が座っているこの場所は、君がそこにいる間だけ、仮想空間に同居して、君の最前列に行くことができる。 鳥の名の衣装を着た君に連れられて、僕は少しの間だけ現実を離れることができるんだ。 わけ