自転車で世界遺産・知床に行って地平線を見よう(後編)
夏に北海道・網走~知床半島~標津を自転車で走ってきた話。後編は世界自然遺産にも指定されている知床を横断して、左手に国後島を眺めながらひたすら南下、中標津空港で飛んで帰ります。
ちなみに前編はこちら。
走行ルート
北海道、知床・網走 自転車ツーリング - Ride with GPS + Relive
1. リアルサファリパーク?知床峠ヒルクライム
朝、爽やかな快晴で目が覚めました。窓を開けると遠くに広がるオホーツク海。いやー、旅行の醍醐味ですね。
量を少なめに和洋2セット食べることで朝食バイキングを満喫するという作戦。今回泊まったKiKi知床ナチュラルリゾートさんは朝食にもかなり力を入れていて、地元食材をふんだんに使っているだけじゃなく料理自体も本当に美味しかったです。イチオシは知床産の鮭を使った鮭茶漬け。お刺身状の鮭に、羅臼昆布で取った熱い出汁を注ぐというこの!朝から最高か!
さて時刻は朝9時ごろ、ゆっくりと出発です。日帰りと違って宿泊ツーリングは「出発したら即絶景」なのが良いですよね。移動時間ゼロ、踏み出したらそこが絶景エリア。
プユニ岬。泊まっていたウトロ温泉あたりが一望できます。冬は押し寄せる流氷を見るのに絶好のスポットなんだとか。
集落から5kmほど走ったところで知床ビジターセンターに到着。知床峠方面と、知床の奥地へ向かう交差点に位置しているのですが・・・。
青看板の下に「ここはヒグマの生息地」という表記が燦然と輝いています。文字通り、ここから先はヒグマの生息地、それも「世界有数」という形容詞がつくほど生息密度が高い場所なんですよ。
ここで秘密兵器、昨日買った熊よけ鈴を装備。知床のトコさんマークが可愛らしい。普通に漕ぐだけでカランカランときれいな大きい音を出してくれます。
とりあえず一息つくべく、ビジターセンターの中に入っているバリスタートコーヒーさんで朝のコーヒーをいただきます。もともと札幌市内で超有名になったコーヒーロースターリーだそうですが、すごいところに出店してるんですね。
やや浅めの焙煎で美味しい。お店のオシャレ度と言い、最近の流行りに乗ったカフェですね。
コーヒーを飲み終わったら覚悟を決めて、クマが出てきませんようにと祈りながらのヒルクライムです。全長約15km、約740mアップとプロフィールだけならそれなり程度の峠ですが、何しろ野生の王国が恐ろしすぎです。この地域のニュースを漁ると分かるんですが、普通にクマが自動車にじゃれついたりしてるんですよ。ロードバイクでじゃれつかれたら死ですよ。
文字通りの原生林。この森のどこかにいるんだろうな・・・ヤツが・・・。
登っていると、お盆時期だけあって意外と車通りが多いことに気付きます。これはクマはもとよりエゾシカやキタキツネすらも寄ってこないんじゃないかなーと油断が出てきます。
ちょっと感動してしまうほどの威容ですね、羅臼岳。高さは1600mほどだそうですが、気象などの影響で登る難易度がかなり高いんだそうです。
思わずクマを忘れてしまう景色たち。
自転車もめちゃくちゃ楽しいんですが、バイクも楽しそうですね。このあたりのバイク乗りのみなさんはきっちりヤエーを返してくれる人たちばかりだったので印象に残っています。北海道旅行者、皆兄弟。
長々とした登りを越えて、クマとも遭遇せずに知床峠に到着!気温は20度ぐらいなので暑くはないんですが到着時は汗だくでした。これは冷や汗ではなく運動の汗。たぶん。
遠くに見えていた羅臼岳がすぐそこに。この知床峠から羅臼方面は天気が悪いことが多く、ここまで晴れてるのは珍しいんだとか。ラッキー。
駐車場の奥に目をやると、海の向こうに国後島が浮かんでいるのが見えました。最近何かと話題の北方領土ですが、こうしてみると本当にすぐそこなんですねえ。
2.知床峠ダウンヒルの後は、漁師町で絶品お昼ごはん
高いところの景色を堪能したら、海に向かってダウンヒルです。
カーブの向こうに海霧で霞む国後島が見えます。
あっという間に下界に到着。
知床深層水の青いソフトクリーム。
羅臼の道の駅は美味しいウニ・イクラ丼やホッケ定食が食べられることで有名なんですが、まだ昼前だったのでソフトクリームだけ食べてさっさと出発します。
羅臼の町はこれまで走ってきた地域と違って、海岸沿いにうすーく人家が広がっています。北海道は町と町の間に何もないイメージが強いので、結構不思議な街の作りですね。漁師町かつ農業をやれるような平地がないから?
スノーシェッド。かっこいい。
1時間ほど走ってそろそろお昼時。なんですが、どこまで行ってもお店がありません。頼みの綱のセイコーマートすら見えず。これは失敗したかなー、道の駅で何か食べておけば良かったかもと思っていたところ、唐突に小さな定食屋さんを発見しました。
手元のGoogleMAPを見るとこの先30km近く町すらなさそうだったので、幸運に感謝しながら入店。隣のお客さんが食べていた海鮮丼やホッケ定食も美味しそうだったんですが、定番メニューっぽい「おまかせ定食」を注文。
刺し身と焼き鮭が美味。地元の小さな漁港から魚を仕入れているそうです。1300円とちょっとお高めでしたが、この美味しさと他に商店すらないような立地を考えると納得のお値段だと思います。
3. 草原と、飛び立てそうな直線道路と
国道335号をひたすら走ってようやく標津町に突入。ここから道道1145号線へ右折。内陸側に切り込んでいきます。
牛さんだ。
無限に草原が広がっています。牧草地なので人の手が入っているのは間違いないんですが、道沿い以外に人工物が見当たりません。さすが酪農の町。
基線ってなんだろう。
「開拓しました!」と言わんばかりの直線しかない道路がひたすら続きます。昨日走った「天に続く道」が28kmの直線だったおかげで麻痺していますが、10km以上の直線がいくつもあるのは普通じゃないですからね。
昔は一面原生林だったんだろうなと思うと、人間のパワーは凄まじいです。
本当に道路以外何もないので若干不安になりながら走っていると、目的地の「開陽台」を指す看板を発見。そうか、この先か。
森に刺さっていた駅表示風の看板。なぜ。
「ミルクロード」と名前のついた牧場沿いの道(このへんぜんぶ牧場沿いじゃん、とか思ってしまうんですが)を走っていると、右手側の丘の上に建物が見えてきました。
ようやく入り口に到着。長かった。ここから最後の登りです。
なかなかの斜度。
ついに到着、開陽台の展望台です。ツーリングライダーの聖地とも言われているそうで、この日も駐車場にいくつもバイクが停まっていました。
この開放感。走ってきた苦労が報われます。
イギリスとかニュージーランドとか、あっちの方みたいな光景ですね。
公称は「330度ビュー」だそうで、展望台裏手から見える武佐岳が地平を遮っているから・・・だとか。実際はご覧の通り、地球の丸さを感じられるぐらいの360度草原ビューです。
キャンプサイトも併設されていました。ここで泊まったら夜は星空すごいだろうなー。
絶景を堪能しながら、展望台2階のカフェで中標津産のつめたーいミルクとはちみつソフトクリームをいただきました。はちみつも含めて産地直送、絶品です。
4.中標津空港から離陸。さよなら北海道。
開陽台を出たら、そのまま中標津の市街地方面へ。10kmほどで空港に到着です。
おつかれさまでした。
きちんとバイクラック&空気入れが置かれていて自転車フレンドリー。ここ中標津空港は日本最東端にある小さな空港ですが、木造がふんだんに取り入れられている新しめの建物のようです。
なんと自由に使える更衣室を発見。ありがたすぎる。
写真の通り輪行状態のロードバイクが入るぐらいの広さがあったので楽に着替えができました。
2日間と短い期間でしたが、「好きなところに輪行で飛んで、好きなところから輪行で帰る」というロードバイクならではの楽しい旅程でした。こんなにお手軽に地の果てを感じられて良いんでしょうか?
離陸。格子状の防風林と牧草地。あれだけ苦労して走った直線道路があっという間に過ぎ去っていきます。さよなら北海道、また来ます!
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