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甘い魅惑の美に堕ちて(Deseo)

(この世には「好きです」と言われた時にとても憂鬱な気持ちになる人種が存在する。)

(決してモテるからという意味ではない。)

(そう、彼女みたいに。)

〜甘い誘惑の美に堕ちて〜

(貴方はとあるBARに迷い込んだ)

(そこは「恋愛話」ができるBARである)

(ワインレッドの長髪に、白い肌黒い瞳をした女性が貴方の隣に座っている)

(そして女性はほろ酔いしているのか、グラス片手に貴方に淡々と喋りかけた)

初めまして。私の名前は…
いや、名乗る必要も無い。
どうせアナタとも今宵限りの縁だから。

突然だけどアナタ、告白されたら嬉しい?
私は嬉しくないわ。

この世には恋人という束縛が重圧に感じる人。
自分が貰った以上に返せるか自信が無い人。
相談事に乗ったり相手に同調したりしたから、自分の事を好きになったと疑心暗鬼になる人もいたりするの。

自由人で自信が無いそして存在自身を愛してほしい。私って、ワガママな人間でしょ?

顔が可愛いお金があるって過去に散々寄って集る人間はいれたけれど、無償の愛を向けられた気分はしなかったわ。後から確認したら、向けていた子もいたけれどね。

でも私は歪んだ感情の持ち主だから。
他者の愛情を感じる事もあまりできずに疑心暗鬼のままでいたの。

そして私には特殊能力があるの。
もう少し聞いてくれる?

それは人の好感度を読み取れる能力。
文章を用いるチャットでも例外ではないの。
だからかしら、段々と慣れてきて告白の前兆が分かってきたのよね。告白される10分前に他の人に「回避策」を求める事も行ったこともあったわる私はそういう人間なの、ごめんなさい。

そして「あなたのことが好きです」という言葉の裏腹には大抵「あなたに救って貰ったから」という言葉があるの。私はもうそんなアプローチは飽き飽きしているの。

以前n0teというアプリでとある妖怪さんの話を読んだけれど、死んでいった妖怪さんは法師の時からカミサマに優しい感情を抱いていたの。
安定感とかも感じる事ができたわ?
帰る場所というか、心の中のカミサマみたいな。

(ゴクリ、と音を立ててグラスに入った酒を飲む)

あーーーあぁ…でもね、でも!
そんな感情を抱いてる人が今1人いるのよ…
「どういう人ですか?」と言いたそうねアナタ。
よし!語って差し上げましょう!

(グラスを机に置いた)
(この女、完全に酔っている)

……。……。その子はね。
アタシが唯一惚れた子。
助けたことだけに目を向けなく、存在そのものを好きになってくれて「生きていてくれればそれでいい」ってアタシに言ったのよ。
そんなアプローチ、初めてだったわ。

本当に…嬉し…かっ……

(語る間もなく一人の女性はバーカウンターに伏せて、そのまま眠ってしまった)

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