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什器屋さんってすごいなって思う時。

僕の場合、空間や造作物をデザインする時はいつもまず区画自体の形を理解することから始めるのが自分のスタイルでもあり、方向性が決まる(決める)手段でもある。何もないように見えて、区画の形、天高、床レベルそして柱の位置などによりどこで ’縁を切る ’ かは大体見えてくる。もちろん、施設によるデザイン規制や設計指針書などのルールを守り、そして予算も頭に入れ出来栄えが150%以上のものを目指して設計デザインを作り上げる。

なぜ150%以上のものかというと、大体予算はオーバーする。予算内に合わせてこんなもんなもんだなっ、て感じで設計するとそれでも見積もりは思った以上の金額になってくるので、そうであればMAX以上の設計をし、会社そして施主の意向に合わせVE案を出していく。VEと言ってもただ単に什器、造作を止めるのではなく、そこからどうしたら当初の見栄えを保ちつつ減額できるのかを切詰める。それはまるで自分の魂を削るかのような感覚で、いつも頭を抱えながらこの作業をする。そしてそんな作業をし図面を作り直し、再度見積りを業者さんに出すと、大体業者さんはそこらへんを理解してくれ、自分の作ろうとしているものに共感をしてくれる。ありがたいことに、自分の周りには、’良いものを作りたい’ と言う施工業者さん達がいて、本当に良く自分の設計デザインに付き合ってくれ、利益率を下げてまでやってくれる時もある。

悲しいことに施主側はあくまでもその ’店の出来栄え’ が重要であり、僕らのそこらへんの努力はあまりわからないのが現状だ。例えば、天井は下がりで意匠をつけ、照明も埋め込みで綺麗にデザインしたとする。そこで予算が合わず減額するのであれば、天井造作諦め、配線ダクト直付けであとは調整して業者に投げれば簡単に減額できる。図面やパースを書き直し検証しなおす必要もないし、一番簡単なVEの仕方だ。しかし自分の場合、そんな投げっぱなしの減額案ができない。そんな投げやりなことをして全体の空間の調和が崩れるのは、とても気持ちが悪い。だからVEするにしても、しっかりとパースで検証し天井造作以外で目線を下げる方法を限られた予算の中とことん考え提案する。目標としていた150%のものができなくても、その時点での100%のものが出来上がればその’熱’は絶対に伝わり結果は付いてくるので、そこらへんが施主に分かってもらえなくても、結果としては、お褒めのお言葉はもらえてくる。

話がかなりずれたが、什器屋ってすごいなっていつも思う。下にあるのが自分の図面。

下の写真が完成したもの。

当然寸法や角度など正確な情報は入れ込んでいるのだが、これに関しては一回も打ち合わせせず、質疑も来ず、一発で完璧なものを作ってくる。自分でデザインしているのに、「へー、すごい図面通りですねー」って他人事のようにいつも感動してしまう。

この空間も自分が目指していたものが全てできたわけではないし、突っ込みたい部分はあったと思うが、この店舗に対する熱は伝わったと信じたい。





















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