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90秒で読む!コンサルタント「読書日記」(第33回)


「トレイルブレイザー 企業が本気で社会を変える10の思考」(マーク・ベニオフ&モニカ・ラングレー著 2020年6月)

本書は、世界最大の顧客管理ソフトウェア企業である「セールフォース・ドットコム」創業者が語る企業経営者のあり方、従業員の働き方である。筆者は、創業からわずか20年余りで、従業員5万人を超える巨大企業に成長させたが、本書を通じて、セールフォースで直面した試練や課題とその対応、試練を通じて学んだことを明らかにしている。「善き行いと成功はビジネスの必須要素であり、バリュー(価値観)は世界を変えるための最も強力なエンジンになる。これを牽引するのが、トレイルブレイザー(開拓者)なのだ」というのが、本書のタイトルの由来である。前半は、セールフォースの創業時からこれまでの成長過程についての説明であり、後半は、セールフォースの活動を通じて、いかに社会を変革するかという筆者の信念についてである。前半の話も面白かったが、個人的には後半の話の方が印象深かった。

筆者が来日した際の講演を聴いたことがあるが、その際にも強調していたのが、本書で何度も出てくる「1-1-1モデル」である。すなわち、自社の株式(資本)、製品、従業員の従業時間の1%を慈善目的に使って、世界中のコミュニティを支援し、社会を変革するということを目的としているということであった。

ビジネスは世界を変えるために最良のプラットフォームであり、「1-1-1」ルールを通じて、従業員にお金やボランティアの時間をどこに割くのかについて、決定権を持たせれば、社会貢献に参加する可能性が高いという「社会貢献の民主化」という試みを実践しており、その活動は、今や世界中の8500を超える企業に広がるまでになっている。

世界中のCEOと企業が最も複雑なビジネス上の問題を解決する際に使うのと同じ着眼点やイノベーションを、最も複雑な社会的問題の解決に適用する未来を創造してほしい。全ての人が世界をより良い場所にするために自ら尽力するアクティビズム文化を私たちが一緒に創出していけば、そうした未来を現実のものにできるのだ。

「これからの時代に繁栄を望む企業にとって問うべきは、もはや「私たちは成功しているか」ではない。 「私たちは善いことを行っているか」だ」という筆者の強い信念がひしひしと伝わってくる。





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