カバ

子宮作家  22

母とは週1〜2回くらい電話で話す。
すると決まって母は「ところでカオリ、そっちの方はどうなってるの?」と聞いてくる。

彼女を安心させたい私は、
「来週はこんな男性に会う予定だよ。」「次の彼とはうまく行きそうなの!」
「彼の年齢は、仕事は、家族構成は、、」。 いかにも全てがうまくいってる様な元気な声で報告している。が 、週に2回も話しをていたら、そこまで事が変化していないのも実状で。私の最新婚活情報や、グッドニュースが無いことは、もちろんある。

同時に、毎回、新しい男性とのデート報告をし、またお別れする運びとなりましたニュースを伝えなければならない苦痛もあり、幸せなニュースを提供したいマザコンな私は、いつも焦りを感じている。そして毎回、結婚まで到達出来ず、新しい出会い別れを繰り返し、心身ともに荒んで行く娘がそこにはいて、自分に嫌気がさしていた。

Ugh!! ああ!なんたるPeer pressure!!(同世代の人々と同じ事をしないければならないというプレッシャー)i  am so stressed out!!(めちゃストレス)。

ただ、好きな人と、ほのぼのと暮らして行きたかっただけなのに、、巻き込まれ型の数々のドラマに襲われ、、、20代の頃、思い描いていた未来は、こんなはずでは無かった。理想が高いんじゃないの?と容疑をかけられ、「完璧な人間なんていないんだから」と言われ続け、「完璧な人なんて探してないよ!私だって完璧じゃないし」と答える、この無意味なやり取りを何度繰り返したことだろう。この十数年。。。

せっかく好きになった人とは上手くいかず、、、、ん?待てよ、、いや違う!、っていうか最初、向こうが物凄く積極的だったから、「好きだ好きだ」言ってくるから、じゃあこちらもって合わせて好きになったのに。突然消えるし、、、燃え尽き早くない? 天国から地獄の往復を何度繰り返せばいいんだ!(けっこうまた距離あるよ)。男性達のピークからの燃え尽きタイム設定をもう少し延長してもらえないもんかね、延長料金払うから。いくら脳みそペニスで出来上がっているからって、こちらの良いところをプレゼンする前に消えるとか無いでしょ、なんなのさ男って、、、はぁ

そして仕事でも、取り引き先の職場で全く恋愛対象で無いおじさん達に、様々なタイプの、ニューヨークならではの国際色豊かななセクハラを受け。

主要メンバーは以下
1. お触り系、避けると「君ってシャイなんだから〜」と、少しでも隙を見せると後ろから抱きついてきて「僕と子供作ろうよ〜、今日うちにきなよ〜」と言ってくる、過去の妻3人 子供12人がいる、長男は24歳で一番下の子は4歳という驚異の繁殖力を持つドミニカ共和国出身のおじさん。推定年齢56歳。

2. 「マッサージ一緒に行こうよ車で迎えに行くからさ〜」と誘ってきて「彼氏は、なに人なの〜?いいからマッサージ行こうよ〜!」と金曜日付近になると、いつもよりしつこくなってくるインド人おじさん。推定年齢52歳。

3. 「彼氏と別れたら教えてね!」と言い、彼のオフィスを訊ねる度に、彼氏っぽい態度で「最近あまりここに来ないんだね」と拗ねてる感を出してくる韓国人おじさん。推定年齢48歳。

4. アクセサリーに使う石を買いに彼のオフィスを訪れた時、2重のドアの中の部屋の鍵を閉めて「幾らだ?」と聞いて来るイスラエル人おじさん。警察呼ぶよ!って言ったら開けてくれたけど。WTF! テーブルに置かれた額に入った写真の妻が泣いてるよ。推定年齢53歳。

5. エレベーター内で、よく一緒になる、胸元ガン見の、もはやなに人かわからないおじさん。洋服の上から私の胸を透視しようとしてるのかな? 推定年齢50歳。

6. 会う度に、モシモシモシモシばかり言ってくる、ウズベキスタン人。しつこいし、もう笑えない。 セクハラじゃないけど、私の愛するモシモシカントリージャパンに対する国ハラ! 推定年齢46歳。

7. 旦那と子供が2人いると嘘言っても、「じゃあなんで指輪してないの?」痛い所をつついて来て、執拗にコーヒーデートに誘ってくる小さいメキシコ人おじさん。推定年齢43歳。

この他、新規メンバーは随時加入してくる。

私が日本人で誘いやすく、怒らず、女性が少ない現場だから仕方ないのだろうけど。いろいろな国のおじさん達!プロ意識持とうよ!私はあくまでもクライアントだよ! 支払うのは私!(会社だけど)。
もちろん、頻繁に会う人々でお世話にもなっている、好きな仕事だし笑顔でかわしてるけど。結局、男性の多い職場での度重なるプチセクハラをいちいち気にしてるワケにもいかず、泣き寝入りだ。

ここ最近の私は、完成に男性自体に辟易していた。もう、私は、この女としての生活、女性としての人生に疲れていた。

そんな私は、突然思い立った。

「私、50歳くらいまで結婚できなかったら、もう女性として生きるのやめたいんだけど、どう思う? わたし一人でもハッピーだし!猫さえいれば生きて行ける! 」と母に提案してみた。(以前、子供だけでも欲しいと、シングルマザー計画を相談したが即座にバッサリ行かれた経験がある)

母は、すぐ、
「そんなの無理よ、いくつになっても女性は女性なんだから、老人ホームでさえ恋愛の諍いが絶えないらしいし。だからこそ女性は見た目や服装に気をつけて、若さを保とうと努めて、楽しくいられるものなのよ。いつまでだって、男性は女性を女性として捉えているのだから」と。

「ですよね、、、」と言った後の私の顔の表情は、一旦、目と口が一文字になり、頭の中には一人の素敵なおばあさんの腕を引っ張り奪い合う二人のおじいさん達の映像が浮かんだ。(おばあさん私よりモテてるし、、、)

ああ、やはりダメか、、、この人間世界で、私が無理やり女性を辞めるという選択をし実行に移すには、出家。 瀬戸内寂聴先輩コースしか無いのだろうか?

けれど、ふと、思った、
寂聴先輩は51歳で出家する前、女を辞めるどころか、色々な濃厚な恋愛をしたことだろう。奔放で、しかもタブーありのドラマチックな、あぁ!
きっと先輩のタブーの恋愛は、背徳感という美容液が全身の乾燥したお肌にスーッと浸透していく様な、いけない事だからこそ一層魅力的な香りの、一度ハマったら抜け出せない目眩く快楽の世界、そんな類いのものだったであろう。
そして、もう存分に男性を味わい、女性としての人生を堪能し、そしてそれを満喫したと思った時点でスパッツと出家したのだろう。素敵すぎる。

しかし、私はそこまでのドラマチックな恋愛経験はない。

ドラマチック、、、うーむ、しいて言えば、、、、

7年前のハロウィンの夜更け過ぎ、私は、lower east のピアノズというバーの緑と赤のライトがところどころにキラキラ光る薄暗い奥の部屋で、友達とはぐれ、金髪リボンのヘア時代のレディガガコスチュームを着て、ほろ酔いでぼんやり踊っていた。すると突然、私は暗闇で唇を奪われた。what!? 相手の顔も見えず、びっくりして振り払おうとしたが、そのライトグリーンの爽やかでとろけるような甘い香りの洋梨フレイバーと、プリッとしているけどフワフワした厚めの質感の唇、彼の首筋からはの上品なクチナシの香りが漂い、、、私は完全にノックアウトされ、M83の『We own the sky』が流れるラウンジでそのままキスを続けてしまった。

「何か飲もう、」とバーの方に手を取られ連れて行かれ、
明るみで見た彼の顔は彫刻の様に美しく、肌は陶器の様に滑らかなペールカラーで、少しカールした艶のある濃い黒髪のアルジェリアの血が入ったパリっ子だった。帰り際、私を強引にお持ち帰りしようともせず、「明日、映画でも観に行こう」と言ってくれた。

彼は無邪気で若く可愛いかったけれど、イスラム系男性特有の束縛欲と、嫉妬心100パーセントがいつも剥き出しで、(イスラムの教えに背いてお酒飲んじゃってるし、豚肉は食べないようにしていたけれど。)かなり強烈な性格だった。勤めていたフレンチ バンクから与えられていたNY赴任期間は1年で、彼がNYを去った後も、私達は東京、ジュネーヴ、パリで再会した。    

ただ、彼の美しさとドラマが、私の老後のつまみになる事は もう既に決定されている。(もう既になっている。)

そして彼というと、リトルイタリーにある2階の広いロフトに一緒に住んでいたすごーく意地悪なルームメイト巨漢のミアを思い出す。彼女は私に対してメラメラと嫉妬心を燃やし、私が彼にかけた電話にわざと出て「今、彼は私の横で寝てるけど、なにか?」と。。。私が彼の部屋にいると、あえて廊下で彼を引き止めワザと聞こえる様にセクシュアルな話しを始め。もちろん挨拶しても無視された。(しかし、ミアかなり太ってたな。。。ストレスかな? 単に食べ過ぎか、、)そんな彼と短く濃い恋愛をしたけど、私のは、あくまでもタブーな恋愛ではない。不倫でも無いし、禁じられても無い。ご自由にどうぞ恋愛である。(ミア以外は、)

寂聴先輩に憧れもあるが、先輩と私は女性として全く正反対のタイプだ。彼女の言う、“人は死ぬまで愛を求める”、に関しても、私はまだ死んでいないけど愛を求めるのをもう辞めようとしている。(猫からの愛を求める活動はまだ辞める気はないけど)

彼女が言う、結局人間は若いときの気持ちが死ぬまで続く、情欲や嫉妬は歳をとっても消えない、に関しては、その通りだと思う。若い頃、40歳〜50歳ぐらいになったら、私は夜営(夜の営み)すらしてないんだろうなと思ったけど、アラフォーになると逆に夜営の楽しみ方と程よいたしなみを覚え、若い頃の様なカジュアルな恋愛が出来なくなり、ときめきも少なくなる分、再び好きな人が現れた時、情欲や嫉妬に年齢を重ねた分の強い気持ちが宿るのは確かだ。(早めに立ち直る技術も身につけ始めるのも確かだけど。)

いずれにせよ、私は出家を数年後に決断できる程、女性ラブライフの満喫をまだ達成できてはいない。寂聴先輩はきっと男という性(さが)を心から愛し、憎しみ、楽しみ、悦び、自分の女性という性を母性とエロスとで巧みに使いこなし、男性を手の平で優しくゆっくりと転がしつつ、自らもそこに身を投じて恋愛に身を焦がしたのだろう。一方、私の手の平にはといえば、、、明日やることメモとして、歯磨き粉買う、忘れずに!と油性マーカーで書いてあるぐらいで。情けない。

前から気がついていたけど、私には女が足りない。昔の彼氏からは私の中身は13歳の少年だと何度か言われた。そして、私に足りない部分は、床上手さだ!と思いたち。友達と渋谷の円山町付近のオトナのオモチャの店に入ろうとしたけど店の怪しさに怖気づき、結局、道玄坂を自転車でくだって、109付近に自転車を停めて、お茶をして帰った経験もある。(今はネットで買えるしね)

とにかく、私の場合、セクハラや痴漢、男性不信や結婚出来ない事実が原因の不純な出家への憧れで。やはり出家するなら、先輩の様に心から男性を好きなり、楽しめる様に自分を変え、後悔しないように経験を積み。それから出家する方が煩悩を捨てやすいのかもしれないという結論が出た。(何年かかるかわからないけれど)

しかもまだ、長い髪を剃り落とす覚悟すら出来ていない、煩悩だらけ。まだ焼肉食べたいしお酒も飲みたい、まだキスもしたいしカドル(cuddle寄り添って寝る)もしたい、マルタン マルジェラのLazy sunday Morningって香水も欲しいし、愛猫の温いピンクの肌のお腹のフワッフワな白いファー部分に顔を埋めたい、まったく娑婆(仏教用語で俗世間と言う意味)の生活を捨てきれない。

こんな私に、寂聴先生の様になるにはまだ甘いと悟り(親友のハルコにも出家をナメルなと言われたし)。数年先の女性引退計画、又は出家については、一時見直し計画に持ち越される事となった。

あゝ私もいつの日か、子宮作家と呼ばれたい。

子宮作家 昔、瀬戸内寂聴さんが、花芯という作品を発表した後に、子宮作家と批判された時期があった。

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?