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【小説】疾走 (重松 清)

誰か一緒に生きてください——。
犯罪者の弟としてクラスで孤立を深め、やがて一家離散の憂き目にあったシュウジは、故郷を出て、ひとり東京へ向かうことを決意。
途中に立ち寄った大阪で地獄のようなときを過ごす。
孤独、祈り、暴力、セックス、聖書、殺人——。
人とつながりたい......。
ただそれだけを胸に煉獄の道のりを懸命に走りつづけた少年の軌跡...
というお話し。

表紙のインパクトと評判を聞いて手にとった。
もー兎にも角にも救いがない。
その救いのなさというか展開が漫画「四丁目の夕日」(三丁目ではない方)に匹敵するのではと思えた。

行くとこなす事全てが裏目で悪い方向にしか行かない。
読めば読むほどシュウジは衝撃的で過酷な運命に翻弄されていく。
何かを掴もうとするのだけど、掴んだ先は、苦しみに繋がる。
シュウジの周りには、辛い現実を抱えた人達。
辛い現実を抱えているからこそ相手の気持ちに共鳴し優しくなれる人。
辛い現実を抱えているから相手を陥れて得をしようとする人。
最後の最後まで苦しすぎる人生。
まだまだ子供なのにと思うのと同時に、子供だからこそとも思ってしまった。

自分の背中に乗せている「重荷」を周囲の人たちに理解されず、さらに重荷を背負わされそうになる。
人生には常にweightやloadといった重荷が自分の肩に掛かってくる。
要は背負い過ぎだし背負わせすぎなのだ。
しかもその重さを誰にも預けることはできないし、置くことも許されない。
悲惨すぎる。
側から見れば救いはあったように見えるけど、本人は何一つ報われない。
私的には冷たい言い方になってはしまうが、今までやってきた事を考えれば然もありなんと思ってしまう。
救いとは言えず報いなのだとも思う。

「サインペンを買うのも、セックスに誘うのも同じ事だよ?たいして違わなくない?」と言わせてしまう世間。
この世の煉獄とはまさにと言った感じ。

シュウジの鬼ケンに寄せる信頼感にはちょっと苦笑してしまう。
彼にとっては男の象徴というかヒーロー的な存在だったのだろうな。

重荷をおろせよ、ファニー
一文の得にもならないぜ
重荷をおろせよ、
だから、俺に重荷をまかしなよ。
(The Weight/The Band より)

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