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WHAT IS LIFE #読書感想文

おはようございます。読書感想文だけど今回はテイストを変えてすごいな、おもしろいなと思ったポイントを紹介して最後に感想を。

読んだ本はこちら


人間はだれしも地球から太陽までを65往復もできる長さの設計図を持っている

冷静に考えてすごいよね。150センチ~200センチくらいのヒトの体の中にそれだけの長さのモノが収納されているって奇跡としか言いようがない。
その長さのモノとはつまりDNA細胞一つに含まれている46本の染色体を合わせると2メートル以上もあって体中の細胞全部に含まれているそれを気合でつなぎ合わせたらそうなるらしい
こういっちゃ信心深い人には怒られそうだけど、そんなこと神様にだってできやしない。生物ってすげえよなと思う根拠の一つ。


突然変異はよくあること。正常か異常かは人間の主観以上の意味はない

最近だとコロナウイルスの変異株とかの印象が強そうなワード。簡単に言えばDNAもしくはRNAのコピーミスであり、それ以上でも以下でもない。その結果として形質に変化が現れることがあって、それが既知のものと人間目線で違うっていうだけ。エンドウ豆の花の色が紫だろうが白だろうがエンドウ豆にとっては関係のないこと。結果としてそれが生存しやすいことに働けば淘汰にかかわってくるけどそれはそれ。
ヒトだってダウン症だとかそういうのもあるけど、今の人間社会にとっては彼らは生きにくいかもしれないけれど、生存環境が彼らのほうが有利な環境であれば彼らのほうが正常だったかもしれない。それだけのこと。


生物は死ぬから生き残れる

特に日本人は死ということから向き合ってないなと日頃から思うけど、生物は全て死ぬから意味がある。死ぬことに意味がある。ちゃんと死ぬからこそ、世代が繋がってよりよい性能を持つ可能性がある個体が生まれてこられる。いつまでもいつまでも劣っている旧世代は居座ってはいけない。
まあマクロな視点だとそうだけど、ミクロな視点だと一つの個体が全てな部分もあるから難しいところではある。でもやっぱり死ぬことを意識しないというのは生き方として不十分だと思う。いつか確実に死ねるからこそ今を頑張れる


ミトコンドリアが1日に生産するATPはヒト一人の体重に匹敵する

DNAの話もそうだったけど、ちっぽけな細胞の中のさらにちっちゃい小器官がこれだけの量のものを生産してるって本当にすごいなあと思う。想像したらすげえ楽しい。今こうやってタイピングしてる間にもミトコンドリアの中で分子が行ったり来たりしてその結果ADPがATPになって、そのATPからADPになるときのエネルギーで指先が1センチくらい沈んだり浮いたりしてるわけで。それがすげえ面白い。


生物の行動には必ず目的がある

太陽が核融合反応で無限に(実際には有限)エネルギーを放出し続けたり、空から雨や雪が降ってくることに目的はないけれど、生物が行うすべての行動は自らを維持して成長して増殖するという目的を持っている。酵母が糖をアルコールに代えたり、植物が葉を伸ばしたり、鳥がさえずったり、それらは全部意味がある。改めて文章化すると当たり前だなと思うけど、実際にはなんでそんなことしてるんだろうみたいなことを生物は平気でやってる。でもそれにも目的が必ずあるって思うと面白い。


数学は完璧を目指す学問。物理学は最適を目指す学問。生物学は満足できる答えを目指す学問。

生物は基本的に進化の前段階があって、そこに新しい機能を積み重ねていって成り立っている。人間の遺伝子に使われていない部分がたくさんあるということからもそう言える。だからこそ非効率で非合理的な部分がたくさんある。だけど、それらは決して無駄ではなくて、何か必要な部分が欠損したときにその部分が代替として活躍してくれることも多い。そういう遊びの部分をたくさん持っているからこそ複雑怪奇な生命体として成立している。
この感覚こそ生物学の一番好きな部分。遊びの部分があるからこそ面白い。


食糧問題と生物学

知ってるか知らないかはおいといて、生物学の発展と食糧問題は切っても切れない関係にある。遺伝子組み換え技術なんかはそのためのものといってもいい。今でも食品のパッケージを見ると「この商品には遺伝子組み換え作物を使用していません」みたいな頭の悪い記述があることが多い。正直私はバカですって書いてるのと同義だと思っているけどまあそれはそれ。遺伝子組み換え技術によって収量が増えたり、栄養素がより多く含まれたり、労働力が少なくて済んだり、厳しい環境でも収穫できたりするのに、それらをすべて根拠のない愚かな感情論のみで否定する愚者が世の中には非常に多い。進化論をいまだに否定しているような宗教家がそういう発想に至るのは百歩譲ってまだわかるけど、そうでもない人たちはいったい何を根拠にそういう発想に至るんだろうととても不思議。
そもそも、遺伝子組み換え技術も自然交配や人為的な交配による遺伝子の混入も結果は同じことを差しているのにそこに差を見出すのが本当に意味が分からない。冷静に考えてみてほしいと思う。そうしないと今でもすでにそうだけど、いよいよ食糧問題で人間は自ら死を選ぶことになる。


感想

コロナウイルスに対する対応や、遺伝子組み換え技術に対する考え方は、生物学の基礎さえ知っていれば過剰に怖がる必要もないことだっていうことくらい2秒で理解できる話なのにそれができない人が世の中には多すぎる

英語や経済や古典もきっと学ぶ価値はそれぞれあるんだろうけど、今を生きるという一点に関していえば生物学はどの学問よりも尊重されるべき大切な学問であることに異論はないはず。受験勉強では文系の人が選択する程度の認識かもしれないけれど、人が豊かな生活を送ろうと思えば絶対に学ぶ必要がある学問だと強く主張したい。

そのための導入としてDNAのような奇跡や、生物の持つ遊びの豊かさの部分っていうのは素晴らしいと思うし、本書もそういう構成になっていてやっぱり生物っていいなあと思わせてくれた。暫定ではあるけど今年一番読んでよかったなあと思う本だった。

生物学に興味がない人にこそ手を取って読んでみてほしいと思う。なんなら後半の難しい話は読まなくてもいい。最初のほうに書いてある生物のすばらしさだけでも感じてくれたらと願う。

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