korekarano_note画像

本屋の棚の変化は早い

第1章 本屋のたのしみ (14)

 一方、本屋の棚に入っている本は、早いスピードで入れ替わる。毎日のように来る客がいることもあって、まさに変化する世界を可視化するように、日々の品揃えを通じて、本屋はそのかたちを変えていく。

 顕著なのは、新刊書店の平台だ。とくに雑誌や新書など刊行スピードの早い本は、編集者が「いま、出版する意味があるかどうか」を考えてつくっていることが多い。だから、新刊平台はおのずと、現在を切り取ったような表情になる。流行や社会情勢に、あるいは季節感も加わる。

 日々新しい本が届けられるので、平台に積まれていた本もいずれは返品され、そのうちの一部のタイトルが、棚に一冊だけ残される。新しい本は次々に出るので、しばらく売れなければその一冊も返品され、店頭に返り咲くことはめったにない。一方、棚に差されたとしてもすぐに売れる本はまた追加注文され、さらにそのまま売れ続ける本は棚のなかの定番品となり、その本屋の世界を構成する大切な要素のひとつとして、何年も残されていく。

 古書店であっても、入れ替わるスピードは早い。そもそも古書は常に一点ものなので、同じタイトルを追加注文して売り続けるようなことはできない。営業を行っていく中で、自然と品揃えが変化していく。新刊書店と違うのは、その棚にあらわれるものが、現在の流行や社会情勢ではないことだ。

 そこには、様々な時代のものが流れてくる。昔は新刊だったはずのそれらの本は、すでに歴史の一部となって積み重なっている。そこで棚づくりをする人たちは、新刊書店の店頭からは消えたものや、絶版になってしまったものを豊富に織り交ぜながら、より時間軸の長い世界像を、日々入れ替わる在庫のなかでかたちづくっている。

※『これからの本屋読本』(NHK出版)P42-43より転載


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

7
ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター。新刊書店「本屋B&B」(東京・下北沢)と出版社「NUMABOOKS」を経営しつつ、「八戸ブックセンター」「神保町ブックセンター」「BIBLIOPHILIC」などの仕事をしています。散歩社取締役、バリューブックス社外取締役も。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。