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プロ野球通訳に聞く(その3)・・・英語に関わる仕事をする人々



2007年当時プロ野球オリックス・バファローズで英語通訳をされていた武藤雄太さんのインタビュー最終回(その3)です。(その1)と(その2)のお話 。

プロ野球ロ野球もコミュニティワークを

鈴 木: 武藤さんはこれから日本の球界でどういう活動をしていきたいで すか?

武藤: そうですね。僕は英語で雇ってもらってるし、まだ入ったばかり で右も左もわからないのにこういうことを言うのもなんですが、 プロ野球というフィールドでお金を儲けるサイドから言えば、ま だまだやらなきゃならないことがいっぱいあるように思います。 よくファンサービスって言うけど、何がファンサービスなのかな とか。アメリカでは税金で建てたスタジアムがたくさんありま す。アメリカ人はスポーツが好きだから、税金でスタジアム建設 をしてもマジョリティーの人たちは文句を言わない。ビジネスサ イドがそれくらいスポーツ好きな人たちを増やす努力をしていけ ば、日本のプロ野球界はもっともっと活発になっていくんじゃな いかと思うんです。

鈴 木: 僕は今63歳なんですけど、2年前から近所の野球チームに入れて もらい、毎週金曜日の練習試合に出してもらっています。僕は野 球は中学でちょっとやっただけなんですけど、みんなは中学、高 校、なかには大学まで野球をやっていた人ばっかりでしかも若い 人たちです。みんな野球大好きで、金曜日の夜になると近くの市 営球場に駆けつけて来ます。僕も毎週2回バッティングセンターに 行き、7ゲーム打ち込みます。135~140キロの球も打ちますよ。 今までホームラン90本。ホームラン券でバット数本、グローブ、 ジャケットなどもらいました。でも、実戦ではうまくいきませ ん。

武藤: それはすごい。

鈴 木: 日本のプロ野球のファンサービスってだいたい少年チームが対象 でしょう。もちろん少年野球を指導することは、それはそれで重 要ですけど…。

武藤: オリックスにもコミュニティ部門っていうのがあるんですが、や はり子ども中心です。

鈴 木: 年寄りにも教えてほしい!だってこれからは高齢化ですよ。アメ リカでは、夏になるとあちこちの公園にボールが置いてあって老 若男女が集まりすぐチームができたものです。バーベキューやり ながらDaylight saving timeの8時、9時までソフトボールや野球 に興じる。冬になるとフットボールやバスケットになる。あれは Community Workに相当貢献していると思います。プロ野球選手 だって現役を退いたらそれっきりというのはもったいないです ね。プロの人が来て教えてくれるなら僕はお金払ってもいい。プ ロの球を近くで見てみたいし、プロ野球界が引退選手を中心に野 球を教えるなどしてコミュニティづくりに貢献したら、いいビジ ネスモデルができると思います。

武藤: ほんとにそうですね。ただ、それもやっぱりスタジアムが問題だ と思います。自前のスタジアムがあれば、OBの人をパッと集めて 地域の方達をお招きできるけど、今は場所を借りなくてはならな い。

鈴 木: シニアの人は時間的余裕もあるし、草野球に興ずる30代、40代、 50代の人もプロの人が教えてくれるといったら喜んで来ますよ。 僕は“Life-long English”を提唱していますが“Life-long baseball”を考えてほしいですね。そうしたら、シニアチームがア メリカに旅行しながらアメリカのシニアチームと野球ができま す。

武藤: そういえばアメリカにはファンタジーキャンプというシニア対象 のプログラムがありました。スプリングトレーニングの1~2週間 前におじさん達を200人ぐらい集めて、往年の名選手が10人ぐら い来て4、5日指導するんです。で、その後チームに振り分けて試 合をする。そういうのを日本でもできるようになったら面白いで すよね。

鈴 木: 野球だけじゃないですよ。毎日どういう運動をしたらいいか、ど ういうランニングをしたらいいか、スポーツ界を全部総合し て…。僕はとてもいいと思います。 武藤: そうですね。英語の勉強と同じで、体を鍛えるだけが目標の人 と、体を鍛えてやりたいスポーツがある人とでは、やっぱり違っ てきますよね。

野球少年は野球から英語を学ぼう

鈴 木: 最後に、これは僕の武藤さんへの要望なんですけど、今まで見て きたアメリカの野球事情を、英語と日本語でかいてください。い い英語の教材になると思います。

武藤: 面白いかもしれません。

鈴 木: 僕は、野球好きの野球少年・少女には野球をベースにした英語学 習を考えています。「よくナイターっていうけど、本場ではナイ トゲームって言うんだよ」って教えたら、みんな喜んですぐ覚え ちゃいます。野球でスチールって言葉を使うけど、この語は日常 会話でも、“Don’t steal others’ ideas!”などと使われたりしま す。スポーツ、音楽などの趣味にはそのまま英語でも使えるカタ カナ語がありますね。それを英語のスペルと発音に直し、更に他 の状況に使えるようにすればよいのです。中学、高校、小学校の 義務教育、大学も含め、そういうコンテンツをうまく利用したら どうでしょうか。

武藤: 確かに、英語をそういう風に教わったら楽しかったかも。

鈴 木: それと、野球少年に夢を持たせてあげたい。早稲田の斉藤君のよ うに一流の野球選手になる道もあるけどそれだけじゃない。武藤 さんのように甲子園には行かなかったけど、野球に関わったから こういうことになった。

武藤: それは今まで考えてもみないことでした。好きな野球に関わっ て、英語を使って仕事をしてるってことは、すごく幸せなことだ と思ってましたけど。

鈴 木: 野球をやったことが、それだけで終わっちゃもったいないですよ ね。武藤さんの経験はいろんなセクションに生かせると思いま す。期待しています。

武藤: ありがとうございます。

鈴木の一口コメント

スポーツは最もグローバル化が進んだ分野です。日本発の柔道、空手、 合気道などは世界中に愛好家がいますし、野球、サッカー(英国ではフ ットボールと言わないと怒られますよ)、ラグビー、バスケットボー ル、テニス、ゴルフ、バレーボール等など、日本で盛んなスポーツは外 国から渡来したものです。それぞれのスポーツは国際大会もあり、海外 との交流が盛んです。武藤さんのような人材はこれから益々重要な役割 を果たします。スポーツ選手の為の英語クラスなど、スポーツを教えな がら英語も勉強できたらよいですね。スポーツだけではなくマネッジメ ントも入れると需要がありそうです。今後の活躍を期待します。


上記は掲載時の2007年7情報です。 最新情報は関連のウェブページよりご確認ください。


後記(2024年5月)

インタビューした2007年当時筆者の授業には野球部をはじめ体育会系スポーツ選手がおり、武藤さんの話をすると大変興味を持ち、中にはスポーツ経営学、コーチングの勉強を始めた学生さんもいました。筆者自身もプロ野球観戦、年寄野球チームでの練習、バッティング・センター(batting cage)通いを通してLifelong Baseballを楽しんでいます。おかげさまで、すこぶる健康です。武藤さんに改めて御礼申し上げます。


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