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プロ野球通訳に聞く(その1)・・・英語に関わる仕事をする人々


はじめに

2007年にTOEFLメールマガジンの筆者のコラムFor Lifelong Englishに掲載したインタビュー記事です。各界で英語にかかわる仕事をする人々にインタビューして紹介するシリーズでした。最初にインタビューさせていただいたのは当時オリックス・バファローズ 編成部渉外グ ループに所属し外国人選手の英語通訳をされていた 武藤 雄太さんです。インタビューしてから早くも17年経ちますが、若い方々の参考になる貴重な体験です。(その1)(その2)(その3)の3回に分け、今回は(その1)をお届けします。

オリックス球団の通訳に

鈴 木:今回から新シリーズです。英語を使って活躍する方にお話を聞 き、ご自身のなかにどのように英語を根づかせているのかを紹介 したいと思います。 さて、最初のゲストはプロ野球チーム、オリックス・バファローズで通訳として活躍されて いる武藤雄太さんです。

鈴木:武藤さん、こんにちは。

武 藤: はじめまして。

鈴 木: 武藤さんは今、どういうお仕事をしていらっしゃるのですか?

武 藤: 外国人選手の通訳ですが、身の回りのお世話も役目のうちです。 アメリカではプレーヤー・パーソネルと言うんですが、単に言葉 を訳す通訳ではなく、選手の面倒を見る。そうですね、例えばス カウティングレポートを訳してあげるとか、メディシンボール (筋トレ用の重いボール)でキャッチボールする時はパートナー になってあげるとか。芸能人の付き人に近いかもしれません。

鈴 木: 外国人選手の試合、練習、移動時の身の回りのこと一切合財を面 倒みるんですね。私生活で困ったことがあるとかいうのも?
武 藤: うちの場合は、それはないです。他のチームではそういうことも あるらしいですが。うちの選手はみんな日本滞在も長いので、日 本語もかなりできるし、東京に遠征して来てもあまり世話はかか らない。今、在籍の外国人はテリー・コリンズ監督、ジョン・デ ィーバス打撃コーチ、トム・デイビー投手、グレッグ・ラロッカ 内野手、タフィ・ローズ外野手。ほかに投手2人、野手1人。対す る通訳は4人です。

鈴 木: 独特の野球用語を通訳するには、武藤さんもよく野球を知ってな いといけませんね。打球をつまらせるとか、なんて言うんです?

武 藤: つまらせるは、「ジャム」です。 鈴 木: なるほど。詰めるジャムですね。日本とアメリカでは概念に違い もあるのでは? 選手や、メジャーリーグ経験者の吉井理人さんに教えても らっています。

鈴 木: ローズさん、日本語もよくできるものね。吉井さんは英語をしゃ べるの?

武 藤: ご本人は「ワシャできん、頼むで」とできないフリしてますけ ど、あの人絶対わかってます。すごくいろいろ教えてくださっ て、素晴らしい方です。

鈴 木: きっと野球の用語はきちっと押さえているんだね。単に英語を話 せるだけでは通訳はできない。武藤さんは野球の経験は?

武 藤: 都立高校の弱いチームでしたが、一応野球部でした。高校3年のと き、交換留学というかたちで9カ月間、ノースダコタに留学しまし た。

「ドラゴンボール」で英語になじむ

鈴 木: ノースダコタとはまた、なんにもないところに行ったね。そのと きは英語は?

武 藤: 出来なかったです。

鈴 木: どうしたんですか?

武 藤: 困りました。ホームステイをして現地の高校へ転入したのです が、そこで最初の頃一番いい教科書になったのがテレビでした。 「ドラゴンボール」という日本製のテレビアニメをやっていたん です。日本の家にシリーズが全部そろっていたくらい好きな漫画 だったので、しゃべってる英語はわかんないんですけどストーリ ーがわかる。ああ、これはあのシーンだから…って。それが結 構、助けになりました。テレビに勉強させてもらった。

鈴 木: そうだよ!僕もいつもそう思っているんだ!テレビ見ながら何と なく、こう英語をキャッチしていったんでしょう。小学生、中学 生は好きなことからやらせればいい。学校はともかく家ではそう いうのをもっと導入したほうがいい。「ドラゴンボール」ってみ んな英語になっているんですか? 武 藤: なってますね。今人気の「ワンピース」も「ポケモン」も。

鈴 木: 1年後はどうなりました?

武 藤: 日本の高校に在学したまま交換留学したので、留学期間が終わっ たら日本に戻りました。僕の場合は3年の半ばで行って、留学期間 が単位になったので、帰国したら卒業証書がもらえました。自動 的に浪人なわけです。そのころから、何かスポーツに関連した学 問ができればいいなぁ、と思うようになって。いろいろ探したら 順天堂大学にそういうコースがあったのですが、卒業生の就職先 を見るとあまりスポーツ界へ就職していなかった。それでアメリ カの大学に行ってみようと思い、結局マサチューセッツ州ボスト ン郊外のエンディコットカレッジという大学に入りました。

鈴 木: いわゆるスモールタウンカレッジですね。そこに直接入学したの ですか。専攻は?

武 藤: 学部の1年生に入りました。専攻はスポーツマネジメントです。

鈴木の一口コメント

武藤さんは、本当に明るくて活動的な青年です。野球をやっていて本当 に野球が好きなのですね。ですから、選手としても活躍したかったので しょうが、そこで野球をあきらめるのではなく、日本のプロ野球球団の 通訳として球団入りしました。野球を知り尽くしていなければ的確な通 訳ができるわけがありません。これからは日本の野球はますます外国と の交流が深まるでしょう。日本のプロ野球の武藤さんのような人材は本当に必要ですね。さあ、武藤さんはアメリカでどのような留学体験をし て英語ができるようになったのでしょうか、次回(その2)をお楽しみに。


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