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才能の科学(読書感想)中編


 才能の科学 マシュー・サイド著 
 山形浩生・守岡桜訳 河出書房新社

私は無宗教だし、本格的なヨガの呼吸法も、マインドリセットの様な意識の切り替えも実践したことはないが、スポーツにおいては、これらはあった(持っていた)方が良いらしい。

この歳(四十代後半)になって、これらに「らしい」をつけるだけでも、こちらの方面(スポーツ)にかなり疎いことがバレてしまうが、私は基本的には、競い合うのは苦手だし、ゴルフなら全員がピンに熱い視線を向けている時でも、コース上の池に泳ぐ魚が気になってみたり(池ポチャも魚のせいにできるからね)、スキー場なら、傾斜の緩やかな初心者コースを一日中滑っていたい(若い頃はそんなことなかったのにね)、まあそんな人だ。

そんな私が、気付けばガチガチのスポーツ科学の本を読んでいるのだから、なかなか大変な訳である💦

実は紹介が遅れたが、この本の著者マシュー・サイド氏は、オックスフォード大学を首席で卒業。卓球選手としてもイングランド一位を十年守り、オリンピックに二度出場している。

そして、本書の第二部からは、そんな彼の経験を元にした、スポーツ心理学的な話しが多く登場する。

まず、スポーツのパフォーマンスに関して、心理学的に一流のスポーツマンの心の中を調べ、重圧下での心と身体の関係を探る。

そして、一流とそれ以外をしばしば隔てるのは、「真実でないことを信じられる能力で、それが極めて効果的なのだ」という逆説的な理論だと言う。

それは医学の世界では、プラシーボ効果と言われるものであり、ある選手にとっては、それは宗教(信仰)かもしれないし、ある選手にとっては呼吸法、または習慣の様な儀式的なものかもしれないと語る。

何れにせよ、彼(彼女)らは、凄まじいプレッシャーと戦い、「イップス」や「クラッキング」と呼ばれる「上がり症」とも言える急性スランプ状態に陥らない為に、常ではない場面で、常の状態であれる様に様々なこと(行為)にすがっている。

そしてコレを本書では、「二重思考」(ダブルシンク)と呼び、一流のスポーツマン程、日々このパフォーマンスが人生の全てであると忠実に信じ練習しながら、競技数分前には、その行為を通して、その信条を捨て去る(大した競技ではないと反対に思い込む)ことができると述べる。

本書にはその様な記載はないが、私はコレを一種の「自己暗示」ではないか?と思う。普通なら現実の世界で、コンマ何秒を競うような、一流と言われる選手程かかり憎いと考えがちだが、反対にかかり易いことが、そのパフォーマンスに繋がるのだから不思議な話しである。

もしあなたが私と違って、スポーツのパフォーマンスにこだわるのであれば、何かその様な暗示めいた(縁起担ぎ的な)習慣を手に入れてみるのも悪くはないだろう。

これで中編は終わるが、次回後編は、本書の第三部、「才能と遺伝子」に関してお話ししていきたいと思う。


続く

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