マガジンのカバー画像

紫式部に近づきたい

30
いろいろな方向から紫式部と『源氏物語』に近づいてみます。ぜひ、ご一緒に。
運営しているクリエイター

#源氏物語

光る君へ de『源氏物語』~帝の悲しみ

光る君へ de『源氏物語』~帝の悲しみ

一条天皇と皇后定子と『枕草子』

大河ドラマ「光る君へ」も、いよいよ後半に入ります。『枕草子』が誕生する場面、素敵でしたね。何度も録画を見直してしまいます。そして、皇后定子が亡くなった後に、光り輝いていた定子の姿(日記的章段と言われる部分)を書き継いだというのが、「光る君へ」が採用した解釈でした。

鎌倉時代初期に書かれた最古の文芸評論『無名草子』も、「定子さまがすばらしく最も輝いていて、帝のご寵

もっとみる
光る君へ de『源氏物語』~源氏の君と若紫

光る君へ de『源氏物語』~源氏の君と若紫

ディベートを楽しむ女房たち

「光る君へ」第35回、中宮彰子さまの前で、女房たちが『源氏物語』の源氏の君と若紫について、あれこれ論じ合っていました。平安時代も、現代の読書会のようなことをおこなっていて、その雰囲気が伝わってきます。

『枕草子』79段には、『宇津保物語』に登場する、仲忠と涼の優劣を、中宮定子の前で女房たちが議論したと記されています。仲忠が、子どものころに母と木の洞(うつほ)で暮らし

もっとみる
絵で読む源氏物語~これはどんな場面?~源氏物語手鑑 須磨(一)

絵で読む源氏物語~これはどんな場面?~源氏物語手鑑 須磨(一)

須磨の秋

 廊に立つ3人。左端が源氏の君です。目の前には庭の草花が咲き乱れ、沖には小さな舟、空には雁が列をつくって飛んでいるのが見えます。耳をすませば、舟人の歌声、雁の鳴き声、舟をこぐ楫の音‥‥。
 絵になる景色ですねえ。

ーーーーーー
 須磨には、ますます物思いをつのらせる秋風が吹き、海はすこし遠いけれど、行平の中納言が、『関吹き越ゆる』と詠んだという浦波が、夜な夜な実にとても近くに聞こえて

もっとみる
絵で読む『源氏物語』これはどんな場面?~源氏物語絵色紙帖 紅葉賀

絵で読む『源氏物語』これはどんな場面?~源氏物語絵色紙帖 紅葉賀

若紫は11歳

昔は数え年なので、お正月が来るとみんな、ひとつ年をとります。たとえば、12月に生まれると、生まれた時に1歳なので、あっという間に、2歳!

この絵は、二条院の西対の元日の様子です。二条院は、元は桐壺更衣の実家でしたが、源氏の君が元服したときに、帝がリフォームさせて源氏の君の邸にしました。源氏の君をはじめとした絵の中の人物の視線の先にいる、左側の女の子が若紫でしょうか。豪華なお人形遊

もっとみる
絵で読む『源氏物語』これはどんな場面~源氏物語手鑑 花宴(二)

絵で読む『源氏物語』これはどんな場面~源氏物語手鑑 花宴(二)

内大臣家(弘徽殿女御の実家)で催された藤花の宴。遅咲きの桜も2本描かれています▼。ところで源氏の君、何をなさっているの?(左端)

花宴の夜の出会い

宮中で花宴が催された夜、源氏の君は、弘徽殿で出会った姫君と結ばれました。

いつもの〈源氏も歩けば美女にあたる〉的な展開と思いきや、この出会いが、あとあと源氏の君が都から逃げ出す原因になっていきます。美しくも危険な出会い。その続きを。

夜明けが近

もっとみる
絵で読む『源氏物語』これはどんな場面~源氏物語絵色紙帖 花宴(一)

絵で読む『源氏物語』これはどんな場面~源氏物語絵色紙帖 花宴(一)

照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜にしくものぞなき(月の光が明るすぎることもなく、暗すぎることもない、春の夜の朧月夜に優るのものはない)

月がぼんやりと霞んで見える春の夜に、「朧月夜に似るものぞなき」と有名な和歌の一節を口ずさみながら、弘徽殿の細殿を歩いてくる姫君、それを見つめる源氏の君。どきどきする場面です。

宮中の花宴

 旧暦の2月20日、内裏の南殿(紫宸殿)の左近の桜の前で花見の宴が

もっとみる
絵で読む『源氏物語』これはどんな場面~源氏物語絵色紙帖 賢木

絵で読む『源氏物語』これはどんな場面~源氏物語絵色紙帖 賢木

六条御息所、京を離れる

大河ドラマ「どうする家康」(2023)の6月の放送〈第23回〉で、瀬名と於愛の方が、「六条御息所との別れの場が大好きで」「藤壺との逢瀬は?」「あ、もうやだ、あそこ何度読んでも胸がどきどきして、顔が熱くなってしまう……」などと『源氏物語』についてキャピキャピ話していましたが、この絵は六条御息所との別れの場面です。

御簾の中に半分身体をさしいれているのが、源氏の君。後ろを向

もっとみる
絵で読む『源氏物語』これはどんな場面~源氏物語手鑑 空蝉

絵で読む『源氏物語』これはどんな場面~源氏物語手鑑 空蝉

中の品の女性と中川の家で

帚木の巻の冒頭、〈雨夜の品定め〉で男たちから経験談を聞かされて、源氏の君は中の品の女性に興味をもちます。父の桐壺帝の意向により宮中で育てられた源氏の君は、帝のお妃たちや宮中でお仕えする女房たちにいつも囲まれ、亡き東宮のお妃だった六条御息所ともお付き合いして、北の方は左大臣の娘の葵の上。中の品の女性となら、もっと気楽な恋愛ができると思ったのでしょうね。「帚木」巻の後半と「

もっとみる
絵で読む『源氏物語』これはどんな場面?〜源氏物語絵色紙帖 若紫

絵で読む『源氏物語』これはどんな場面?〜源氏物語絵色紙帖 若紫

ヒロイン登場

『サザエさん』のように、登場人物の年齢がずっと変わらない作品もありますが、『源氏物語』は年代記、私たち読者は、源氏の君が生まれる前――お母さんの桐壺更衣が宮中で意地悪されているところから、ずっと彼の成長を追いかけています。そこにもう一人、成長が楽しみな、愛らしい少女が登場!

 源氏の君18歳の春、瘧病(マラリアの一種かといわれている)にかかってしまった源氏の君は、治療のため北山に

もっとみる
絵で読む『源氏物語』これはどんな場面?〜源氏物語絵色紙帖 末摘花

絵で読む『源氏物語』これはどんな場面?〜源氏物語絵色紙帖 末摘花

荒れた邸で琴(きん)を弾く姫君

読者は知っているのに、物語の中の人は知らないことってありますよね。『源氏物語』をあまり読んだことがない人でも、〈末摘花の姫君〉と聞くと、ああ、あの・・・。

でも、この場面では、源氏の君はなにも知りません。いやむしろ、末摘花の姫君に恋い焦がれている状態。

源氏の君は、乳母子*の大輔の命婦から〈亡くなった常陸の親王が、晩年にもうけて、とてもかわいがっておられた姫君

もっとみる
紫式部に近づきたい ~紫式部の弟、藤原惟規

紫式部に近づきたい ~紫式部の弟、藤原惟規

紫式部の周りをぐるっと

大ベストセラー作家、紫式部さんはどんな人?2024年の大河ドラマ「光る君へ」ではどのように描かれるのかな?平安時代が立体的に再現されるので、とても楽しみです。

史実と違う!と怒り出す人もきっとあらわれるでしょうが、ほほう、アレをそう解釈しますかなどと思いながら観るのも楽しいはず。

そこでいろいろなアレコレを、できるだけ紫式部に近い時代に書かれた本によって、紹介していこ

もっとみる
絵で読む『源氏物語』これはどんな場面~源氏物語絵色紙帖 夕顔(二)

絵で読む『源氏物語』これはどんな場面~源氏物語絵色紙帖 夕顔(二)

あこがれの六条御息所

六条御息所は、16歳のときに東宮(皇太子)に入内、姫君が生まれますが、20歳のときに東宮が亡くなってしまいました(賢木巻)。桐壺帝と前東宮は同腹の兄弟で仲が良かったので、桐壺帝はこのまま内裏で暮らすよう、つまり桐壺帝の妃になるようすすめましたが(葵巻)、六条御息所は大臣だった父が遺した六条の邸宅で暮らします。

深い教養とすぐれた美的感覚を持つ六条御息所がプロデュースする、

もっとみる
紫式部に近づきたい 平安時代の葵祭と賀茂斎院

紫式部に近づきたい 平安時代の葵祭と賀茂斎院

葵祭は賀茂祭

賀茂祭は、参加する人が葵を身につけるので、葵祭ともいいます。その起源は奈良時代ですが、平安時代に入ると、内親王の中から選ばれた賀茂斎院が祭に奉仕しました。平安時代の文学作品にも、賀茂祭の行列を見物する場面が描かれています。

紫式部や清少納言の時代の斎院は、村上天皇の皇女、選子内親王です。円融天皇から後一条天皇までの五代、50年余りの長きにわたって斎院をつとめたので、大斎院と呼ばれ

もっとみる
絵で読む『源氏物語』これはどんな場面~源氏物語手鑑 夕顔一

絵で読む『源氏物語』これはどんな場面~源氏物語手鑑 夕顔一

御忍び歩きのついでに

 『源氏物語』夕顔の巻はこのようにはじまります。
ーーーーーーー
 六条あたりの邸(六条御息所の邸)にひそかに通っているころ、内裏から退出してそこに向かう途中に、大弐乳母がひどく体調を崩して、尼になってしまったのを見舞うため、五条にある家をお訪ねになった。

 六条御息所の邸に通うついでに、乳母を見舞う源氏の君。〈ついでかぁ〉と思ってしまいますが、尼君(大弐乳母)はもちろん

もっとみる