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TDL「トゥモローランド」、旧アトラクションたちの記憶

◯アトラクションは諸行無常


 約半年後、東京ディズニーランド(以下、TDL)のアトラクション「バズ・ライトイヤーのアストロブラスター」が閉館し、「シュガー・ラッシュ」を題材としたアトラクションへと新生するらしい。
 上記報道の4日前にTDLを訪れたばかりの俺にとって、このニュースは正しく寝耳に水だった。言わずと知れた傑作「トイ・ストーリー」シリーズを原作に持つ人気アトラクションが、完成(2005年)から20年も経たずに閉館するとは……。通い詰めるほどに気に入っていたアトラクションという訳ではないのだが、見知った場所が無くなってしまうのは、どこであれ寂しいものだ。


 また、今年の7月末日より2027年まで「スペース・マウンテン」の建て替え工事が行われ、アトラクション周辺の景観も含めた完全なリニューアルが成されるという。
 厳密には閉館とは異なるものの、アトラクション終了後の出口付近には以下のようなメッセージが掲示されていた。薄暗い通路に記された来場者ゲスト宛の感謝の挨拶は、まるで「スペース・マウンテン」がこの世から消え去る前に発した別れの言葉のような、言いようのない寂寥せきりょう感が漂っていた。


「1983年から今日まで、このスペース・マウンテンで宇宙旅行へ出発した
すべてのスペーストラベラーの想いとともに……」


 さて、上記の二軒は奇しくも「トゥモローランド」エリアに居を構えるアトラクションだ。振り返ってみると、トゥモローランドは俺が幼少期から特に足繁く通ったエリアであり、思い出深くも閉館してしまったアトラクションが数多いことに気付かされた。この度のリニューアルラッシュを期に、それらの記憶と思い出を振り返っていきたい。


◯「スター・ツアーズ(旧版)」



東京ディズニーリゾート・ブログより引用。
旧版の案内役:うっかり屋さんのレックス君。
ミスを連発し、乗客を恐怖のフライト(戦闘空域への突入など)へといざなってしまう……。


 映画「スター・ウォーズ」シリーズの未来を描く、まるで本当に宇宙船に乗っているかのような体感型アトラクション(あるいは短編4DX映画のようでもある)、「スター・ツアーズ」。今日でも本アトラクションは絶賛稼働中だが、本項では2012年4月以前に稼働していた旧版(仮称)について述べていきたい。


 TDLは幼少期のゲストも訪れるため、「スターウォーズ」本編を観るよりもこちらを先に知った少年少女も多いはずだ。例に漏れず俺もその一人で、多種多様なドロイドや惑星の存在、ジョン・ウィリアムズ氏の手掛けた印象的な劇伴など、本ん版前の「スターウォーズ予習」ができたように思える。
 時は流れ、映画本編を観てからアトラクションに搭乗した際は、「あぁ、ルークたちが守った世界は宇宙旅行ができるくらい平和な世の中になったのか(帝国残党は局地的に残っているが)……」と、幼少期とは別の目線で感慨を抱くことができた。

 2013年5月より稼働しているリニューアルでは、映像の全面刷新・ストーリーの変更(経由する場所などで約100通りのパターンが楽しめる)が行われた。この際、舞台設定が映画本編内の時系列に変更されたため、旧版(映画の未来)に登場したレックス君との再会は叶わなくなっている。たとえ映像が古かろうとも、あのおとぼけ新人ドロイドとのスリリングなフライトが、時折どうしようもなく懐かしくなる。

◯「スカイウェイ」



東京ディズニーリゾート「〜あの日の一枚〜」より引用。
撮影時期は不明。
下に写っている人々の服装や写真に収められた物体の色合いが、どことなく時代を感じさせる。


 かつて、園内の南東・南西(TDL地図上においては右側上下)、トゥモローランドとファンタジーランドを結ぶロープウェイが存在した。特にバックグラウンドストーリーの存在しないアトラクション……というより交通機関で、ディズニー色は極めて薄かった。
 しかし、幼少期の俺は「スカイウェイ」が好きだった。ロープウェイ自体が普段乗ることのない珍しい乗り物である上に、園内の眺めを空から楽しむことができたからだろう。ビデオカメラで撮られていた記憶もあるので、実家の押し入れを探れば、きっと幼い俺が乗った様子を録画したテープが残っているはずだ。


 本アトラクションは1998年11月に閉館した。当時小学校に進学しており、乗り物への興味をすっかり失った俺は、廃止に際して特に心を動かされることはなかった。しかし、改めて考えると、「スカイウェイ」の車窓から楽しめた景色は、絶対にもう二度と見られない。不可逆的な光景を思い返すと、やはり切なさが心をよぎってしまう。


◯「スタージェット」



東京ディズニーリゾート・ブログより引用。
写真では少々判別し辛いが、翼にはJALの「鶴丸マーク」が付いている。


 俗に言うTDLの「3大マウンテン」や東京ディズニーシーの「タワー・オブ・テラー」等、東京ディズニーリゾートには様々な絶叫系アトラクションが存在する。しかし、かつて存在した「スタージェット」こそが東京ディズニーリゾート最恐なのでは……?との持論を俺は抱いている。
 スペースシャトル型の乗り物の上昇・下降を各機体のレバーで操作するのだが、最大高度は14m(建物4〜5階ほどの高さ)になったらしく、ジェットコースターのようなレールも無い中で空に放り出されたような感覚を味わえた気がする。「スカイウェイ」同様に眺めを楽しむこともできたはずだが、どうにも思い出せない。景色に対する興味よりスリルが勝っていたからだろう。少なくとも小学校低学年頃の俺は好んで乗っていたが、三半規管が弱体化した今となっては、仮に復活しても様々な意味で恐ろしくて乗る気になれない……。


 改めて調べたところ、本アトラクションは2017年10月に閉館したそうだ。もっと昔(イメージでは「スカイウェイ」閉館の直後辺り)に無くなっていた印象を持っていたので、意外と近年まで稼働していた事実に驚いている。


◯「グランドサーキットレースウェイ」


東京ディズニーリゾート・ブログより引用。
今TDL内を歩いている少年少女に「TDLのアトラクションだよ」と言っても、信じて貰えないかもしれない。


 参考画像を見ての通り、「グランドサーキットレースウェイ」は、いわゆるゴーカート的なアトラクションだ。コースアウトしないようにレールが引かれており、その線を逸脱しない範囲で、かなり広めのサーキットを走ることができた。アトラクションの随所で漂う焦げたような独特の臭い、背中を伝わる強めの振動、弟が乗った前方の車に衝突した時のバンパーの感触は、今でも鮮明に思い出せる。
 先に挙げた「スカイウェイ」「スタージェット」、そして本アトラクションの3種は、どこか「昭和の遊園地」の乗り物といった趣がある。ディズニーランド自体も立派な昭和の遊園地(昭和57年開園)であるから、その感覚もあながち間違いではないのかもしれない。


 本アトラクションは2017年1月に閉館となった。「スタージェット」同様、こちらも意外と近年まで稼働していたようだ。広大なサーキットの跡地には、後述する「美女と野獣“魔法のものがたり”」などが作られるに至った。

◯振り返らずに未来を向こう


 以上、個人的に思い入れのあるトゥモローランド内の旧アトラクションを4箇所挙げさせて頂いた。
 トゥモローランドの旧アトラクションは他にも存在する。俺自身は入場した記憶がないが、日本史体感施設「ミート・ザ・ワールド」、故マイケル・ジャクソン氏が主演した短編映画「キャプテンEO」(再上映の際に観なかったことを後悔している)、ディズニーとは無関係の普通のアーケードゲームが置かれたゲーセン「スターケード」など、個性的な場所が他にも揃っていたようだ。


 とはいえ、無くなったものを振り返ってばかりではなく、新たに生まれるものたちにも目を向けようと思う。
 既に完成済みの一例を挙げよう。「グランドサーキットレースウェイ」跡地に誕生したライド型アトラクション「美女と野獣“魔法のものがたり”」は、アニメ映画版「美女と野獣」の本編ストーリーを追体験するとともに、アニメの世界に入ってロケ地探訪をしているような感覚を味わえる素晴らしい場所だった。俺のような30代男性でさえ褒めちぎる出来なのだから、プリンセスを夢見る少女はきっと一生の思い出として心に刻まれるだろう。
 また、今後「アストロブラスター」の代わりに誕生する「シュガー・ラッシュ」のアトラクションにも期待を持ちたい。そもそも、ディズニー作品中でも指折りの個人的大傑作「シュガー・ラッシュ」のアトラクション化というだけで期待値が高まるが、更に注目すべきは本稿冒頭のイメージ画像。「アストロブラスター」と同じくシューティング要素が中心となるようなので、俺の大好きなディズニーキャラクター:カルホーン軍曹の登場にも期待が持てる。いや、これは単なる個人的願望に過ぎないか……。

ディズニー公式サイトより引用。
画像左の金髪の女性がカルホーン軍曹。作中に登場する大人向け風FPSゲームの主人公。
「シュガー・ラッシュ」本編は、随所に散りばめられた実在ゲームネタや主人公がアイデンティティ再獲得に至る深い物語性など、あらゆる点が素晴らしい大傑作である。クライマックスで主人公が見る「ある光景」を想像しただけで、俺の瞳は潤みそうになってしまう。


 これから造られる新生「スペース・マウンテン」、そして「シュガー・ラッシュ」のアトラクションも、きっと誰かの思い出が生まれる場所となるはずだ。かつて存在したものたちの記憶を決して失わず、かといって懐古主義に陥ることもなく、今後もトゥモローランドに築かれる新たな未来を見つめ続けていきたい。

「スペース・マウンテン」出口付近に掲示されていた、新生「スペース・マウンテン」と再開発後のトゥモローランドの完成予想図。
レトロフューチャー的世界観の趣を残しつつも、照明の色使いに「アップデートされた未来感」を覚える。

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