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【ネタバレ無し】 待望のFE最新作「ファイアーエムブレム エンゲージ」をクリアした


●はじめに


※サムネイル・本文中の画像は、「自己紹介カード」を除き全て本編のスクリーンショットです。



 待ち焦がれていたSRPG「ファイアーエムブレム」(以下FE)の最新作「エンゲージ」をクリアした。一周のクリアタイムは約40時間。外伝章も全て制覇し、存分に楽しませて貰った。


 シリーズ中興の祖「覚醒」に近いライトかつアニメチックな作風の本作は、ドラマ「ゲームオブスローンズ」を彷彿とさせる戦記モノとして好評を博した前作「風花雪月」と180度変わった雰囲気となり、賛否両論が渦巻いているらしい。
 俺個人としても、確かに世間的賛否の双方にうなずける部分がある。
 ……しかし。本作の“SRPGとしてのゲーム性”に関しては、過去10年間に発売されたFEシリーズ中で最高の出来だったと考えている。そんな「エンゲージ」の感想を、長年新作を待ち続けたシリーズファン目線で語っていきたい。

※以下ネタバレは伏せますが、ストーリーとさほど関係しない、と判断したスクリーンショットは引用します。また、物語の展開に関する言及も少々させて頂きます。どうかご了承下さい。

↑参考までに、のざわのFEシリーズ・関連作品プレイ記録。
本編は元祖「暗黒竜」以外プレイ済。今から元祖を遊ぶのはシステム・テンポ的にキツい。
「ベルウィックサーガ」はいつか再挑戦したい。俺のPS2が健在のうちに。


●実は高くなかった期待値



 上の記事等で度々語っている通り、俺は長らくFE新作を心待ちにしていた。だが、待望の「エンゲージ」への期待値と関心は、正直なところ高くなかった。
 FEシリーズの基本的なシステム・UI面は、SFC時代──「聖戦の系譜」の頃にほぼ完成されている。よほどバランス調整に失敗しない限り、酷い出来になりようがない。ある意味“面白くて当然”と言えよう。よって、特に重要視すべきはストーリー面となる。


 ──事前情報を見る限り、本作のストーリー面における一番の目玉は“過去作主人公達の登場”だった。
 俺はこの要素に対し、ありふれたソーシャルゲームの匂いを感じて興味を持てなかった。そもそも、既に同様のコンセプトを持つFE作品「ヒーローズ」(ソシャゲ。サービス開始日から遊び続けている)が存在するし、オールスター大集合系の作品で発生しがちな“歴代主人公のキャラ崩壊”を恐れてもいた。



 よって、俺は本作を“新規層・ライトユーザー取り込みの為の新作”と割り切っていた。もし俺に刺さらなくとも、本作にハマった新規ファンがシリーズを追いかけてくれればいい……。
 と、何だかんだ思いながらもDL版を予約し、発売初日から遊ぶ。それがエムブレマーとしての矜持である。


●魅力的な新システム“エンゲージ”




 いざ遊んでみると、俺はすっかり「エンゲージ」の虜となった。ストーリーに関する言及は後述するとして、まずはゲーム面の魅力について語りたい。
 まず、易しめだった「風花雪月」よりも手応え・遊び甲斐のある難易度設定が嬉しい。一方で「エコーズ」以降の恒例となった“行動巻き戻し機能”の無制限化も有り難く、リトライを繰り返しながら解法を導き出す楽しみを存分に味わえる。なお、こちらは「ノーマル・クラシック」でプレイした際の印象であるとご留意頂きたい。



 さて、注目すべき本作の白眉は新要素:エンゲージ。基本的なシステムが完成されているFEシリーズに新たな風を吹き込み、“面白くて当然”の“当然”を上回る、非常に良いアイデアだった。
 過去作主人公達の魂が宿った指輪を装備させ、彼らにちなんだ武器やアビリティを付与する──。そんな本システムの深みは、かの名作RPG「ファイナルファンタジー5」「ファイナルファンタジー12 ザ・ゾディアックエイジ(TZA)」のジョブシステム※に感じた楽しさに近い。即ち、組み合わせの試行錯誤・発生する相乗作用シナジーの面白さだ。

※魔導士系ジョブに「かくとう」を付けて、お手軽に圧倒的な物理攻撃力を得る(FF5)・「ナイト」と「シカリ」を組み合わせ、あえて剣を短剣マインゴーシュに持ち替え回避盾兼タンクとして運用する(FF12 TZA)等。
 特にFF12 TZAのジョブ編成は妄想するだけで楽しくなる。ジョブが存在しない・ジョブを2種着けられないTZA以前の仕様にはもう戻れない。


 その楽しさと奥深さをプレイヤーに提示してくれるキャラクターこそ、序盤で登場する盗賊:ユナカ。

一昔前風の“ヲタク口調”と、くどいオーバーリアクションが特徴のユナカ。
支援会話を解放するうちに、彼女の素性と内面が明らかになっていく。
システムとキャラクター性の両面で「エンゲージ」を象徴する人物だろう。
「暁の女神」プレイヤーならニヤリとする一言。そりゃそうだよな、彼を思い出すよな。
散りばめられた小ネタが嬉しい。


 盗賊は短剣による物理攻撃で戦うが、序盤では今一つ決定打に欠ける。そんな彼女は、ミカヤ(「暁の女神」ヒロイン。いわゆる賢者タイプ)と契約を結んだ状態で参戦する。
 チュートリアルメッセージに促されるまま“エンゲージ”すると、元の物理攻撃に加えて杖による回復・魔法攻撃・暗所マップの視界確保が可能となり、途端に便利な万能選手が誕生する。行動のバリエーションが一気に広がるのだ。主人公+マルス(剣士同士)、セリーヌ+セリカ(魔法使い同士)といった“長所を活かす組み合わせ”だけでなく、このトリッキーな組み合わせ──カスタマイズの拡張性と面白さをプレイヤーにさりげなく提示したことは賞賛に値する。



 更に、デフォルトの組み合わせが必ずしも唯一の正解とならない調整も好ましい。先に挙げたユナカとミカヤは相性抜群だが、プレイを進めるうちにカムイ(「if」主人公。地形の回避率を上げられる能力を持ち、盗賊の長所を活かせる)との親和性の高さに気付かされる。
 上記に挙げた例はほんの一部に過ぎない。40人近い仲間と10種類以上の指輪の組み合わせはプレイヤー次第。長所を伸ばすも、短所を補うも、キャラクターのイメージ先行で決めるもよし。2週目以降は別の組み合わせを試そうかな……といった欲も生まれる。実に良いシステムを導入してくれたものだ。


※この辺りも「FF12 TZA」を彷彿とさせる。銃を初期装備とする空賊:バルフレアと銃の相性は悪く(攻撃時のモーションが長い、せっかくの高い力が銃撃のダメージに反映されない等)、剣や槍を使えるジョブに就いたほうが能力を活かせる。しかし銃を持った姿がよく似合うため悩ましい。こうして悩むのも、ゲームの楽しみ方の一つだ。


●期待値を上回ったストーリー



 事前に懸念していたストーリー・演出も、最終的には「あれ、意外と悪くないな……?むしろ面白い!」との結論に落ち着いた。


 プレイ開始時から暫くの間、本作の物語面に関しては、お世辞にも印象が良いと言えなかった。
 まず、OP主題歌「Embrem Engage!」(スキップが異常に難しく、プレイの度にイントロを聴かされる)の何とも言えない垢抜けなさにズッコケた。特にサビ前に入る合いの手「エムブレム・エンゲージ!」。エンゲージによる衣装チェンジを変身に見立て、特撮ヒーローソングを意識したのだろうか……?(のざわ自身は特撮、特に平成ライダーのファンです。ヒーローを揶揄する意図はございません)



 過去作主人公登場の要素は事前予想ほど濃くなく、むしろいい塩梅で新キャラクター達を見守るサポート役に徹してくれた。恐れていたキャラ崩壊も起こらず、この点については一安心と言えよう。
 一方で、別の問題が発生した。過去作主人公が関与しない、本作の新キャラクターが織りなす物語の印象がどうにも良くなかった。
 隠すことなく堂々と自ら“神竜”を名乗り、各所で持ち上げられる主人公。共感性羞恥を刺激するジャンピング土下座シーン。多くの責任を背負った立場・仮にも味方サイドとは思えない、脳筋蛮族思考の王。個性の”属性”を足し過ぎて、もはや奇人変人としか思えないキャラクターが多数加入する砂漠編。
 このように序盤〜中盤にかけ、ゲームの楽しさと反比例するような、頭を抱える展開のつるべ打ちが続く。「これは事前の予想よりヤバいものがお出しされたか……!?」と戦慄しながら、俺は黙々とプレイを続けた。



 だが、その心配は杞憂に終わる。終盤にかけての盛り上がり・設定の活かし方が非常に上手かったためだ。もし前半のノリが性に合わず本作を止めてしまった人がいるとしたら、騙されたと思って最後までプレイして頂きたい。
 ネタバレに抵触しない範囲で印象が好転したポイントを述べると、先述の「Embrem Engage!」──のギターインスト楽曲「エンゲージ」(上記紹介映像の3:35〜に流れる)。本作のテーマ曲兼“処刑用BGM”として、終盤における数多くの熱い演出に貢献してくれた。
 “キワモノ揃い”と思われたキャラクターも好きになった。限界オタク化する主人公の付き人、「ちいかわ風」に「会話」する「暗殺者」、一見チャラい砂漠組、度を越したナルシスト/ネガティヴ思考……。確かに個性的な面々ばかりだが、プレイを続けるうちに彼らに愛着が湧いてしまう。これも支援会話システム(後述)の成せる技だ。




 委細は語れないが、本作のシナリオは間違い無くベタであり、プレイ中の展開予想を越える出来事もそれほど無い。基本的に戦争を描いてきたFEシリーズにも関わらず、戦記モノ要素はほぼゼロ。テキストの安っぽさも目立つ。
 しかし、突っ込み所はありつつも直球で“ベタなアニメ・JRPG的シナリオ”をやり切り、伏線を回収してスッキリ終わる。こういった物語もアリだろう。
 「風花雪月」は確かに売上・評価共に大好評を博したが、決してその路線だけがFEではない。別路線の新作で間口を広げることは重要だ。あえて前作=人気作と正反対に舵を切るには相当の覚悟が必要だったはず。俺はその覚悟を讃えたい。

●惜しかった点




 2週目への引き継ぎ要素が無かったのは非常に残念だった。
周回要素とルート分岐を前提としていた「風花雪月」はこの点が非常に充実しており、周回プレイのモチベーションを高めてくれた。踏襲してくれなかったのは非常に勿体無い。「絆のかけら」を消費して支援レベル・以前取得したアビリティを解放できる等、任意の引き継ぎ要素はどうしても欲しかった。
 本作はルート分岐が存在しない“一本道進行”であるため、引き継ぎ要素を重要視しなかったのだろうか?


 また、度々言及している通り、本作は「封印の剣」以降恒例となった支援会話システムが導入されている。このシステムは仲間同士の会話によって世界観を掘り下げる楽しみがあるものの、誠に失礼ながら、本作に掘り下げられるほどの厚みがある世界観は存在しない……と感じてしまった。キャラクターの素性を知る楽しみ方はできるが、「風花雪月」の練り込まれた歴史・拘ったテキストを味わった後では、世界設定に対して物足りなさを覚える。「風花雪月」に囚われるのは良くないと自覚しているが、あまりの落差の激しさゆえ、流石に見劣りを感じざるを得ない。



 そして、これは本作自体の問題ではないが、どうしても言及させて頂きたい。
 新作で過去作主人公がフィーチャーされたにも関わらず、彼らが活躍する原作に“遊び辛い作品”がある現状を、俺は非常に憂いている。



 スマホでほぼ全てのナンバリングタイトルが遊べるドラクエシリーズ、ほとんどの作品が現行機に移植・リマスター化されて遊び易いFFシリーズ(1〜6は今年配信予定)と異なり、FEシリーズは現行ハードで遊べない人気作品が複数存在する。
 3DSで遊べる「覚醒」「エコーズ」は百歩譲ろう(「if」については後述)。SFCの「トラキア776」は、いずれswitchオンラインで遊べる見込みが高い。GBAの“エレブ二部作”「封印の剣」「烈火の剣」の配信も、めでたいことに先日の「ニンテンドーダイレクト」で確定した。GBA最終作「聖魔の光石」も、やがてラインナップに追加されるだろう。


 残すは、GC・Wiiで発売した“テリウス二部作”「蒼炎の軌跡」「暁の女神」のHDリマスター化だ。どちらもゲームバランス面に若干の難を抱えているため、幾分かの再調整を加えてほしい。
 また、「if」の大型DLCかつ真シナリオ・透魔王国編は、今年3月の3DSオンラインストア閉鎖に伴い新規購入が困難となる。早急に対策を講じてほしいところだ。具体的には白夜・暗夜・透魔、3作入りの移植orHDリマスター版が発売されれば有り難いが……。
 「エンゲージ」で過去作主人公と触れ合ったことで、彼らに興味を持ってくれた方々を逃してはならない。新規ファンが少しでも過去作に触れやすいよう、任天堂にはしっかりと動線を整えて頂きたい。


●次回作への期待




 このような項目を掲げておいて何だが、現状では特に無い。
 「エンゲージ」で満足した今の俺はお腹一杯だ。満腹状態で、次のご飯のことなど考えられようか……?



 強いて言うなれば、次回作は“別路線”を歩んでくれると有り難い。

 「エンゲージ」路線(ライトなJRPG風味・一本道・少々難しめ)も「風花雪月」路線(硬派風味・周回前提でストーリー分岐有り・易しめ)も、全く別路線の作品だったからこそ両者とも楽しめたのであって、似た作品が続けば胸焼けしていただろう。
 FEシリーズがどちらの路線を進むのが正解か、俺には判断が付かない。恐らくどちらも正解だ。なので先に挙げた作風を交互に、もしくはごちゃ混ぜにしてくれて構わない。
 その上で、破綻の無いストーリー。魅力的なキャラクター。手応えと遊び易さを共存させたゲームバランス。これらを並立させ、また心に残る名作を産み出して欲しい。これは、いちエムブレマーとしての切なる願いである。


●おまけ(スクリーンショット集 ネタバレ無し)



迫真顔で釣りに励む主人公。デフォルトネームの「リュール」で遊んでいた。
好きな衣装はラフなスポーツウェア。ポニテが可愛い。
ちなみに2/17現在、撮影した「エンゲージ」のスクショは953枚。
今まで遊んだSwitchのソフト中、最高記録更新。
シリーズ恒例キャラ:アンナさんがまさかの幼女化。斧を片手に大暴れ。
物理攻撃より魔法が得意だったと知ったのはクリア後。
ちいかわ風に喋る暗殺者:ゼルコバ。
それとも、「ナガノ風」「荒木飛呂彦風」と呼ぶべきか。
パワー系淑女弓兵:エーティエ。バキバキに割れた腹筋シックスパックがチャームポイント。
ボス討伐時のHP削り役として大活躍してくれた。
文字通りの「ですます調」で喋る、ゴス系狂戦士パネトネ。
物理攻撃力の強さと運用の便利さゆえ、誰が呼んだか通称「パネキ」。
「聖戦の系譜」前半部主人公:シグルド。
過去作主人公達の中でも比較的年長者ゆえ、彼らを取りまとめるポジションに就いている。
「再行動」スキルが非常に便利。迷ったら彼とエンゲージすれば間違いない。
「覚醒」ヒロイン:ルキナ。
当該シーンのCV:小林ゆう氏の演技は必聴。背筋が凍った。
俺の「エンゲージ」最推し:ヴェイルちゃん。頭の羽根は自毛ではなくアクセサリー。
CV:上田麗奈氏が俺の脳味噌を溶かす。
彼女に関して多くは語らない。ぜひ本編で彼女と向き合って欲しい。

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