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「かみかさ」第16話

翌日、目を覚ますと、眩しい光が目を刺した。
天気予報は晴れだ。

燈郎が出勤しようと玄関に出ると、弟の真巳が靴をあらっていた。
「おはよう。バッシュ洗ってるのか。」
「大学入って、買ってもらったから、大事に使おうと、初めて洗濯してんの。」
「そうか。今日学校は?」
「午後から。」
「そうか。俺行くわ。」
「いってら。」
と燈郎に水をかけた。
「またかぁ。そういう事をする。」
「いってきます。」

美容院に出勤して、身支度を整えたら朝礼が行われた。
いつものように輪になって、先輩の横井さんが、いつも皆川さんが立つ場所に立っていた。
「皆川店長はしばらくお休みされます。しばらく私が店長代理をさせていただく事になりました。よろしくお願いします。」
横井はオーナーの住川から連絡が受けていた。皆川さんが入院したと聞かされたが、皆には内緒にするように言われた。
「どうされたんですか?」
と燈郎が聞いた。
「体調不良だそうです。」
皆、黙った。
「じゃあ、留守の間もしっかりやって来ましょう。
では今日のトピックスを佐藤さん、お願いします。」
「はい。梅雨入りを昨日しましたが、今日は晴れで、しばらく雨は降らないようです。」
「天気予報って不思議だよね。
連絡はありますか。」
「はい。」燈郎が話し出した。
「昨日、傘の忘れ物がありました。色は緑色です。零宮さんの娘さんのだと思うんですけど、わかりません。よろしくお願いします。」
「はい。若尾さん、ありがとうございます。
他、ないですか。ラジオ体操しますか。」
と溜め息混じりに横井が言った。
外に掛け出して行く皆川はいなかった。
やはり皆、元気がなっかった。

ラジオ体操した後、傘を干した。
傘を広げた時に若葉がひらりと落ちた。
夕方には、しまい入れ「忘れ物 5/28  たぶん零宮いのり様」と
書いた紙を貼り、奥の部屋にしまった。


指し示した光
急に隠れた

光は隠れても
光り続けている

隠れた瞬間は
たじろごうとも
忘れないと誓えば
指し示してくれる

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熟成下書き

雨の日をたのしく

ごめんなさい。詩に夢も憧れもありません。できる事をしよう。書き出すしかない。書き出す努力してる。結構苦しい。でも、一生書き出す覚悟はできた。最期までお付き合いいただけますか?