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「かみかさ」

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小説「かみかさ」 傘を美容院に忘れてしまうところから始まる、恋愛未満小説。
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#バスケ

「かみかさ」第26話

「かみかさ」第26話

数日後。
燈郎は仕事を終え、自宅に戻ると、真巳から燈郎に電話があった。
「今、市営体育館にいる。兄貴ごめん。バッシュ忘れたから、持って来てくれないかな。」
「えっ。」
「雨も降ってきたし迎えに来て欲しい。」
「帰ってきたばっかなんだけど。」
「二つも理由がるんだから、お願いします。」
「ん。わかった。」

バッシュを持って車で迎えに行った。
体育館に着いた。コートを覗く。
弟の栄成大学の男子バスケ

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「かみかさ」第23話

「かみかさ」第23話

「びしょ濡れじゃないですか。」
髪がガタガタに切られてる事に気づいた。
「ポニーテールなんですね。」
「バスケの時はポニーテールなんです。」
「そうなんですか。弟もバスケやってますよ。今日は練習ですか。」
「練習というか引退式。でも、しんみりしたりしない、楽しい引退式でした。」
「その話をしながら店に、傘を取りに行きませんか。」
「そう、傘ですよ。」
目を、まあるくした。
足を美容院の方に向けて、

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「かみかさ」第22話

「かみかさ」第22話

翌日から、家でも学校でも、髪を一つにまとめた。
もちろん綺麗に切れてないからだ。
下の方で結んでいた。

大学は試験期間。
友達の美琴は言う。
「試験でも気合い入れる時は一つ縛り?」

試験が終わると、部活の引退式があった。
とはいえ、4年でも練習に来たい先輩は、練習に参加してもいい、という伝統があった。なので、涙のお別れ会と云う風ではなかった。
最後にレクリエーションとして4年生全員対1.2.3

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「かみかさ」第20話

「かみかさ」第20話

おじさんから、もらった傘を使う事なく梅雨は明けた。

試合が近づいてきて練習を毎日していた。キャプテンとして考えなけえばいけない事も山ほどあった。
髪を切る時間もなく試合当日を迎えた。

しっかりポニーテールを高い位置に結び、気をひきしめた。

いよいよ相橋総区決勝戦を迎えた。
優勝したい。
いのりは髪を試合毎に結び直してきた。

試合での、いのりは、いつものように強気だった。

「絶対ここは抜い

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「かみかさ」第6話

「かみかさ」第6話

いのりは、普段学校では髪をおろしていて、艶々とした黒髪は変わらなかった。
バスケになるとポニーテールにして、気合いをいれた。
親友の美琴の言うようにバスケの時は人が変わった。
自信に満ち溢れ攻撃的であった。

ドリブルシュートのフォームは美しく伸びやかでしなやか、ディフェンスは、まるでステップを踏んでるようだった。それはバレエをしているかのよう。

大学3年になるとキャプテンになり皆の憧れの的とな

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