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どうなる?お産

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主題は滋賀県内の産婦人科集約問題についてですが、医療資源の集約化は全国的な流れであり、医師不足は産婦人科だけでなく、どの科でも起こっている問題です。ぜひみなさんのまちの医療を考え…
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記事一覧

「産み育てたい街」守るのは私たちーどうなるお産⑨

「産み育てたい街」守るのは私たちーどうなるお産⑨

 「よりよい死(終末期)」を整えるように、「よりよいお産(周産期)」も整えてほしい、と訴えた私。

命を歓迎できない社会に、未来はない。 「若年女性(20~39歳)が少なく、若者の流出も止まらない自治体は、やがて消えてしまう」
 日本創成会議は、7年前の報告でそう指摘した。
 「若年女性が2040年までの30年間で半減」「40年に人口が1万人を切る」の2条件が重なると、新生児が数十人~数百人止まり

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お産に安全以外のものを望む気持ちをどう表現するかの葛藤ーどうなるお産⑧番外編

お産に安全以外のものを望む気持ちをどう表現するかの葛藤ーどうなるお産⑧番外編

さて、「どうなる?お産」をいつも読んでいただき、ありがとうございます。今回は同時に2本を公開します。なぜなら、ちょっと新聞紙面では伝えきれなかった、と思っている部分があるからです。今回はとても難しい回でした。
記事の中で、何度も何度も書き換えた箇所がありました。それは以下の部分です。

 お産ができる施設が減る中で、望まない分娩誘発(陣痛促進剤の使用など)や予定帝王切開が、私の町でも増えていないか

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出産に望むのは「安全」それだけかーどうなる?お産⑧

出産に望むのは「安全」それだけかーどうなる?お産⑧

 産婦人科医が不足する現状で母子安全なお産を守るためには、医療資源の集約化は仕方ないと納得した私。

https://note.com/noubisya/n/n153fdac76c8a

気になる「帝王切開率」の上昇
 とはいえ、どうしても気になることがある。帝王切開率の上昇だ。日本産科婦人科学会の調べで、1001施設(有床診療所を除く)での帝王切開率は、21・9%(2008年)→27・7%(20

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全国で不足する産科医 現場は「4K」?ー⑦

全国で不足する産科医 現場は「4K」?ー⑦

分娩取り扱い施設は減り、産婦人科医は不足している。ようやく知った現実。

とっくに悲鳴をあげていた現場 ネットで「産婦人科医 不足」と検索してみた。一番上に現れたのは、大阪府豊中市立病院の医師が書いた「産婦人科医師不足と医療崩壊」というタイトルの文献だった。

 最初の段落には「産科・周産期領域においては(…)医療崩壊の危機という段階を超えてすでに崩壊のプロセスにあると認識されています」と衝撃的な

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あふれる妊婦、ギリギリの綱渡りー⑥

あふれる妊婦、ギリギリの綱渡りー⑥

 県内で分娩を扱う施設は、2012年に比べ診療所27→17、病院14→10に減っている。診療所の医師の高齢化や、医師不足による医療資源の集約化が原因という。分娩を休止した施設に行く予定だった妊婦が駆け込む先の医療体制は大丈夫なんだろうか。

湖東湖北ブロックは、「お産難民」が生まれる危険性 例えば、湖東湖北ブロック(彦根・多賀・甲良・豊郷・愛荘・長浜・米原)。県の関係者によると、19年、ブロック内

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施行が迫る働き方改革 県内の医師数は足りるのか?ー⑤

施行が迫る働き方改革 県内の医師数は足りるのか?ー⑤

 これまで、医師の「自己犠牲的な労働」に平然と頼りすぎてきたことに気がついた前回。医師たちの働き方改革は待ったなしの状況、(実際には2024年4月の施行まで待ってくれている…)なのは理解ができた。

地域医療はどう変わるのか? だけど、働き方改革後、私たちの医療がどうなってしまうのかはやっぱり不安だ。地域医療はどう変わるのか。「地域医療構想」を考える県医療政策課で話を聞いた。
 県は「二次医療圏」

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過酷な勤務に耐える医師 平然と頼りすぎていた自分に反省ー④

過酷な勤務に耐える医師 平然と頼りすぎていた自分に反省ー④

分娩中止が相次ぐ産婦人科事情について調べていたら、医師の働き方改革における「2024年問題」と深く関わりがあることを知った。医師の働き方改革とはなんだろう。そして、2024年問題が地域医療に及ぼす影響とは?

医師の自己犠牲的な長時間労働により成り立ってきた
現代の医療
2018年3月28日に出された厚生労働省の「医師の働き方改革検討部会」の資料を読んでみた。

「我が国の医療は、医師の自己犠牲的

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決めていたのは、県だった。ー③

決めていたのは、県だった。ー③

医療資源の配分を決めていたのは県。自分の町だけ見ていちゃだめなんだ。
分娩中止を発表した市立長浜病院と長浜市。話を聞くと、両者とも「残念だがどうしようもない」と同じ回答だった。
(前回の記事はこちら↓)

湖北の医療構想をまとめる長浜保健所に行くと、担当者が日本の医療政策のプロセスを丁寧に教えてくれた。
日本の医療政策は中央と地方にまたがって構成されている。診療報酬額の決定、医師資格といった医療専

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市民病院だけど、市にできることは少ない?ー②

市民病院だけど、市にできることは少ない?ー②

まずは、当事者の長浜病院に話を聞いてみよう。滋賀県内の産婦人科で相次ぐ分娩中止に危機感を覚えた私は、県内の産婦人科事情を調べてみることにした。
(↓前回の記事はこちら)

まず、今年1月、分娩中止を発表した市立長浜病院に話を聞くと、担当者は「滋賀医科大からの産婦人科常勤医師4人の派遣がなくなるため」と説明した。今年度、病院では自治医大の1人を加え、5人で約160件の分娩を扱ったが、一旦全員3月末で

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市民の市民による市民のためのジャーナリズムへの挑戦。

市民の市民による市民のためのジャーナリズムへの挑戦。

自己紹介 琵琶湖の最北端の村で暮らしています。はじめまして。私は、滋賀県在住の堀江昌史(ほりえまさみ)と申します。琵琶湖の最北端にある賤ケ岳という山のふもとの集落で、ギター職人の夫と、2歳の男の子と、黒猫と一緒に暮らしています。

私の前職は、朝日新聞の記者でした。婦人病を患ったのを機に仕事を辞め、地に足のついた暮らしをしてみようと思いました。その後、夫と結婚することにしたとき、「せっかく一緒に生

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各地で相次ぐ産婦人科の分娩休止    一体何が起きているの? ー①

各地で相次ぐ産婦人科の分娩休止    一体何が起きているの? ー①

1月9日、「分娩受け入れ 4月から休止 市立長浜病院」と小さな記事が朝刊に載った。見出しも小さい、23行の記事に、私(35歳2歳児の母)は戦慄した。
2020年には彦根市立病院と守山市の坂井産婦人科が分娩休止を発表し、その前年には大津市民病院、長浜市の佐藤クリニックも止めていた。県内の産婦人科が次々と分娩中止を発表している。私の町に、一体何が起きているんだろう。
私が「佐藤クリニック」で長男を出産

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