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過酷な勤務に耐える医師 平然と頼りすぎていた自分に反省ー④

分娩中止が相次ぐ産婦人科事情について調べていたら、医師の働き方改革における「2024年問題」と深く関わりがあることを知った。医師の働き方改革とはなんだろう。そして、2024年問題が地域医療に及ぼす影響とは?

医師の自己犠牲的な長時間労働により成り立ってきた
現代の医療

2018年3月28日に出された厚生労働省の「医師の働き方改革検討部会」の資料を読んでみた。

「我が国の医療は、医師の自己犠牲的な長時間労働により支えられており、 危機的な状況にある(…)。 特に、若い医師を中心に、他職種と比較しても抜きん出た長時間労働の実態にある。「自殺や死を毎週又は毎日考える」医師の割合が 3.6%との調査もある。(…)医師は、医師である前に一人の人間であり、健康への影響や過労死さえ懸念される現状を変えて、 健康で充実して働き続けることのできる社会を目指していくべきである。 とりわけ、女性医師の割合が上昇していること(…)を踏まえれば、育児等を行いながら就業を継続したり、復職したりできる環境を整え、多様で柔軟な働き方を 実現していかなければ、多様な人材の確保が困難となる」

至極当然のことが書いてあり、これまでが「医師の自己犠牲的な長時間労働により成り立っていた」という目を背けられない事実に申し訳ない気持ちになる。

資料によると、現状では多くの病院が年間1860時間超の勤務をこなす医師を抱えており、 中には年間3000時間を超える時間外労働をこなす医師もいるという。働き方改革は、2024年までに医療機関の水準に応じて時間外労働を960時間、または1860時間以内(例外あり)とし、勤務後9時間、当直後18時間は次の勤務に入らないという制限をつけ、医師の労働環境を守ろうという計画だ。

働き方改革後はどうなるの?

具体的に、改革が実施されると、医療にはどんな影響があるのか。湖北地域の医療構想を管轄する長浜保健所の担当者は例をあげて説明して見せた。

「現在多くの病院の勤務医は午前9時までに出社し、夜間の当直をこなして、翌日夕方まで働いている。それを、当直後、翌日昼までの勤務にするとなると、当直明け日勤の医師が足りなくなってしまう。例えば、医師が1人しかいない診療科の場合、その医師が当直に入れば、翌日はその科を開けないことになる。医師の頭数を揃えていくことが必要だ」。

 産婦人科なら分娩は朝夜を選ばない。急患もある。何人もの分娩を扱った後、翌日夕方まで外来も対応してくれていたのかと思えば、これまでの現状が過酷すぎたのだとわかる。

 担当者は「長浜病院は産科を5人の医師で回していた。働き方改革に合わせてこれまでどおりの医療を続けるためには、あと2~3人は増員しないとシフトが回らなくなることが予想されていたが、どこも産科医は不足し、働き方改革のための集約化が求められている。一方で、近くに県の地域周産期母子医療センターに指定される「長浜赤十字病院」がある。滋賀医科大の医局側からすれば、湖北の産科医療は日赤に任せ、多くない産婦人科医という医療資源を他に分配したいという思惑があったのかもしれない」と推察する。

 長浜保健所が管轄する湖北医療圏では、2019年より、医療機関と市側が県の方針に沿って地域医療構想の調整を図る「湖北圏域地域医療構想調整会議」の場が持たれ、機能分化と連携強化について話し合いが始まっている。それが、どうやら長浜病院の分娩中止問題の核心と言えそうだ。

(第5回へ続く)

こちらの記事は、「朝日新聞・滋賀県版」「滋賀夕刊・長浜版」に寄稿しています。両紙に掲載後、随時noteを更新して参ります。ぜひ、ご意見・ご感想をお寄せください。

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