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施行が迫る働き方改革 県内の医師数は足りるのか?ー⑤

 これまで、医師の「自己犠牲的な労働」に平然と頼りすぎてきたことに気がついた前回。医師たちの働き方改革は待ったなしの状況、(実際には2024年4月の施行まで待ってくれている…)なのは理解ができた。

地域医療はどう変わるのか?

 だけど、働き方改革後、私たちの医療がどうなってしまうのかはやっぱり不安だ。地域医療はどう変わるのか。「地域医療構想」を考える県医療政策課で話を聞いた。
 県は「二次医療圏」を、保健所の管轄地域ごとに7ブロック(大津、湖南、甲賀、東近江、湖東、湖北、湖西)に設定している。


 最も充実するのは大津、湖南のブロックだ。ここに県内の病院57施設、一般診療所1089施設のうち、約5割が集中する(18年10月)。県内の医師は3386人で、うち医療機関の勤務医は3214人。県民10万人当たり239・8人(全国32位)で、全国平均(258・8人)より少ない。大津ブロック以外は、全国平均を下回っている。
 一方、国の「医師偏在指標」で、滋賀は医師「多数」県とされ、ブロック別でも「少数」はない。比較的若い医師が多いためだ。
 しかし県の担当者は「滋賀医科大の臨床系教員、大学院生501人が含まれる。24年に全国で1万人不足するとされ、県内でも医師は不十分」と言う。

産婦人科医の半数近くは女性、そのうちの半数は子育て中

 県内の産婦人科医に注目すると、15~49歳の女性10万人あたりの医師数は39・3人で、全国平均の44・6人を下回る。

 県は、周産期(妊娠22週~出生後7日未満)医療については、すでに医療資源の集約を進め、7ブロックをさらに4ブロック(大津湖西、湖南甲賀、東近江、湖東湖北)とする体制をとっている。


 それでも、産婦人科医の偏在指標では全国32位の「少数」県。東近江、湖東湖北ブロックは全国的にも特に「少数」地域とされる。
 産婦人科医には女性が多く、病院勤務医の47・9%を占める。その66・7%が20、30歳代だ。産休・育休、復帰後の時短勤務の統一した仕組みは未整備で、医療機関ごとに診療体制を維持するために、同僚が過重労働を強いられることも問題になっているという。 


 日本産科婦人科学会によれば、女性医師の占める割合は08年まで全体の約3割だったが、20年で5割弱にまで増加した。その半数近くは妊娠、育児中という。学会は「彼女たちが働きやすい職場づくりが、産婦人科医療を維持する重要な要素」と宣言している。

診療所の医師の半数以上が60歳超

 加えて、県内での分娩(ぶん・べん)の約6割を占める診療所の医師は、半数以上が60歳超と高齢化が進む。

紙面には書ききれなかった不安を吐き出してみる。 

先程の地図に気になることを書き加えてみた。
 高島市の分娩取扱施設は「高島病院」(医師1人)のみ。高島市民の多くが、お世話になる大津市北部のクリニックの先生は60代。
 東近江ブロックの診療所は3つ。その3つとも60代以上。毎年200人以上がお世話になるという診療所の先生は70代だ。
 産婦人科医は過酷な仕事だ。10年後、開業している診療所はほんのひと握りかもしれないのか…。

 県が公表している「周産期医療提供体制」(令和2年3月)も見てみる。
総合・地域周産期母子医療センターと協力して二次的医療を提供するとして書かれている「周産期協力病院」。そのうち、【大津・湖西ブロック】の大津市民病院は分娩中止、高島市民病院は医師1人だし、【湖東・湖北ブロック】に至っては、彦根市立病院も市立長浜病院も分娩中止している。
 このことについて、県に聞いてみると「協力体制は維持されていると考えている」ということだった。
 でも、彦根市立病院のホームページを見たら「本院の婦人科は非常勤による木曜日のみの診察」と書いてある。週6日は協力できそうにない。なんとなく不安だ。
 集約化されても心配はないよ、とその後のフォロー体制が理解できるような説明書きがほしいと思った。

分娩中止を発表した施設で出産予定だった妊婦たちが、駆け込む先の医療体制が心配になってきた。

(⑥回へ続く)

こちらの記事は、「朝日新聞・滋賀県版」「滋賀夕刊・長浜版」に寄稿しています。両紙に掲載後、随時noteを更新して参ります。ぜひ、ご意見・ご感想をお寄せください。

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