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あふれる妊婦、ギリギリの綱渡りー⑥

 県内で分娩を扱う施設は、2012年に比べ診療所27→17、病院14→10に減っている。診療所の医師の高齢化や、医師不足による医療資源の集約化が原因という。分娩を休止した施設に行く予定だった妊婦が駆け込む先の医療体制は大丈夫なんだろうか。

湖東湖北ブロックは、「お産難民」が生まれる危険性

 例えば、湖東湖北ブロック(彦根・多賀・甲良・豊郷・愛荘・長浜・米原)。県の関係者によると、19年、ブロック内では計2425件の分娩があった。
 このうち、3月までにお産ができなくなった施設(彦根市立病院、佐藤クリニック=長浜市、市立長浜病院)での分娩は658件。今後、これを残る4施設(彦根市の神野レディスクリニック、同アリス、長浜市の長浜赤十字病院と橋場レディスクリニック)で受け入れることになる。
 19年、この4施設での分娩は1767件。県の調査に対し、21年は2180件の受け入れが可能と答えている。
 2019年と同じペースで、女性が妊娠すれば、お産ができなくなった施設からあふれる妊婦658人のうち、245人の受け入れ先がない、という計算になる。
 県の医療関係者は「今年はコロナ禍で妊婦の数が少ないのでなんとか大丈夫だろう」。しかし、綱渡りの状況は今後も続く。

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現場で働く医師が心配。医師の確保はできないのか?

 現場で働く医師の環境も心配だ。働き方改革を勉強して、現場の医師はこれまでもギリギリで働いてきてくれてきたことが十分にわかった。それなのに、彼らにさらに過重な負担が寄せられるのではないか。
 例えば、長浜赤十字病院の産科・婦人科の医師は6人(21年3月末)。医師の構成は、男性2人(1994年卒、96年卒)女性4人(2016年卒2人、17年卒2人)。女性4人は初期臨床研修を終え、専門的研修プログラムを実践中の専攻医だ。
 元公立病院事務部長の幸地東さんは「若く経験が少ない医師が4人なので、上級の医師の負担は大きいだろう。夜間当直がこの体制では、現場はかなりきつい。あと2〜4人は確保したいところだ」という。

医局同士の連携は困難

 長浜病院から引き上げた産婦人科医を、長浜赤十字病院に回してもらえないのか。長浜保健所の担当者は「長浜病院は滋賀医科大医局からの派遣。赤十字は京都大から。派遣元が異なり、調整がなかなかうまくはいかない。県は京大に増員を依頼しているところ」と教えてくれた。
 医局同士の連携は簡単ではないらしい。保健所の担当者は「産婦人科医の不足は全国的な問題。滋賀医科大でも、医師が余っているわけではない。引き上げたら、他に補填したい場所があるのだろう」。

(第7回に続く)

こちらの記事は、「朝日新聞・滋賀県版」「滋賀夕刊・長浜版」に寄稿しています。両紙に掲載後、随時noteを更新して参ります。ぜひ、ご意見・ご感想をお寄せください。

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