第1章:現在の判断は正しいのか ①

 ここ1週間でマイナス金利が解除されたが、解除理由に“企業の賃上げが一定程度進んだ”という項目が出てきていたことが印象的だった。


 確かに、現在の賃上げ状況を見ると大手企業などの大企業は満額回答が多いのだが、中小企業を見ると賃上げ率にばらつきがでているだけでなく、次第に企業間の賃上げ率格差が拡大していることで賃上げが鈍化しているもしくは後ろ向きである企業からは離職者が増加している傾向が見えてくる。


 そのため、これまでは大手企業の下請け企業であった企業も次第に自社では対応できなくなり、孫請けなどの提携企業への協力依頼を出すなどして人員を確保している現状もある。


 私は中小企業の賃上げを進めるためにはベースの部分もそうなのだが、適正提示給与額(=企業の業務内容等から算定した基本給に対する基準額)といった実業務に対して相対的な賃金額を提示できる状態を定常化できる組織作りを進めていくことも大事だと思う。


 なぜなら、現在は“下請法”などで業務改善命令や取引改善を求められる大手企業が増えているが、これらの対象企業の下請けだけでなく、全ての企業の下請け企業に対しても調査する事や中小企業間の取引状況なども対象にして組織構造や相関関係から企業に対して指導や介入等を行うことも必要になってくると思うのだ。


 そのうえ、現在の賃金算定方法では賃上げを意識できるだけの拘束力がなく、経営者によっては“労働搾取”や“やりがい搾取”を行いながら、自社利益を増額させてしまうことや内部留保を増やしてしまう原因になり、これらの価格転嫁分が賃金に上乗せされる率が低くなることも考えられるのだ。


 これらの背景にあるのが”原材料価格の高騰“や”取引状況の悪化“など企業間の要因もあるのだが、企業の”賃上げ“に対するスタンスや方針と雇用形態における業務比率のあり方が適正ではないという事も考えられるのだ。


 例えば、正規雇用は7%賃上げを実施するが、非正規雇用は現行賃金を維持し、新たな賃上げを行わないという企業方針が通達された場合に正規雇用である社員にとってはポジティブなニュースだが、非正規雇用である正社員以外にとってはネガティブなニュースである事は間違いないだろう。


 しかし、現在の社会構造を見ると正規雇用の社会的評価と非正規雇用の社会的評価が大きく乖離している事から、正規雇用は社会的評価から考えても条件改定されやすく、労働契約を締結していることから、昇給や昇進のタイミングで待遇が改善されることも想定することが可能なのだが、問題としては賃上げ=引き留めという考え方を正規雇用の社員などにされてしまうと社員が萎縮するという事も考えられるのだ。


 一方で非正規雇用の場合は契約書を交わしているケースと交わしていないケースが存在することや就業時間を会社都合で自由に操作してしまうことで景品表示法などに抵触するおそれのある判断をされることで個人の所得に個人差が生まれてしまう状況になり、短期離職を引き起こす原因となってしまうおそれもあるのだ。


 特に非正規雇用であっても常時勤務“と”非常時勤務“といった勤務形態や“有期雇用”や“短期間雇用”といった雇用方式が複数あることから、不正行為および違法行為が発覚したとしてもこれらの告発が受理される内容と受理されない内容がある事やこれらの行為が常習的に行われているのか、発覚時のみなのかでもその後の指導や処分に大きく影響してくるのだ。


 しかし、ここ数年は法の抜け穴を使って、企業側が支払わなくてはいけない給与を支払わないという傾向があることから、このような部分に関してはきちんと“所得保障”や“契約遵守”いずれかを選択させることで“労働搾取”や“利益搾取”を回避するだけでなく、企業に対する“掲載責任”や”雇用責任“など雇用形態にかかわらず履行することを義務化するなど”賃上げ“を行う前に個人に対する支払いに滞りがないか、個人に提示している給与額や労働時間を遵守しているかをきちんと確認する事も経済格差や所得格差を生まないためには必要だろう。


これは理想ではあるが、現在は労働基準法上の扱いとして非正規雇用に関しては“従量労働額の支払い”という働いた分を支払うことで違法とならないのだが、このような扱いを合法化することでこれらの法的事項を濫用する企業や拘束時間を提示していたとしても企業の判断で時間が変わってしまう、業務に関しても掲載外の業務をやらせるなど本来は守らなくてはいけないことや経験値が求められる業務を担ってもらわなくてはいけない企業の事情があることは理解することは出来る。


 ただ、これらの理由を正当化するには“相対賃金”や“相対条件”といった雇用条件をきちんと整えて、働いている量に対して適正な所得を支払うことも当該人材を雇用し続けるためには必要であるだけでなく、きちんと提示した条件を遵守する事を義務化することやいかなる理由があったとしても個人の生活を脅かすことは企業における社員や従業員の生活を保護する観点から責任として行うべきではない。

現在、小説とコラムを書いています。 コラムに関してもこれから完成している物を順次公開していく予定です。 自分の夢はこれまで書いてきた小説を実写化することです。まだまだ未熟ですが、頑張って書いていきますので、応援よろしくお願いいたします。