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アトツギ選書「ホールディング経営はなぜ事業承継の最強メソッドなのか」(中畑悟)

「この本、非常にわかりやすく納得感満載で、由紀HDではみんなに必読書として読んでもらっています。」

尊敬する先輩アトツギであるYUKI HOLDINGS / 由紀精密の大坪正人さんが上記のようにオススメしていたら、読まないわけにはいかない。

★★★

読む前までは、ホールディング経営って何個も事業がある大企業のオプションだと思っていたし、レイヤーが増えるから複雑性が増すんじゃないかなぁと思っていたけれど、以下2つの点で良いかもと思い直した。

①アトツギやヤル気のある社員が新規事業を立ち上げる際、新会社を立ち上げてリスク/リターンを明確化するのに便利。
②新しい事業分野を切り開くのに企業買収したり、逆に自社内では活かせていない事業を売却したりするのに便利。

①新会社設立

以前、「給料の決め方」という記事や「家業の地雷…それは就業規則」という記事で書いたが、老舗企業内で新規事業をやろうとすると、新規事業自体の難易度に加えて、これまでの事業や仕組みと整合性を取るという無駄な仕事も増えてしまう。これを避けるには別会社化するというのが一案。

また、老舗企業で親族以外を社長にするというのは、少しハードルが高い。その点、グループ会社の社長であれば、株式の範囲内でリスクが明確化されるので任命しやすいだろう。場合によっては設立時に本人からの出資を可能にしたり、株式報酬やストックオプションのような仕組みもできなくはない。

もちろんホールディングス化していなくても別会社を作ることはできるが、親会社の決済なども考えると、ホールディングス化している方がやりやすいだろう。(法人税などコストも掛かるけど)

②M&A

事業拡大や新規事業立ち上げに際して、M&Aは一つの選択肢だろう。

もちろんM&A自体はホールディング経営じゃなくてもできる。ただ、ホールディング経営であれば「うちのグループに入ってください。」と言いやすいけれど、そうでないと「うちの会社の子会社になってください。」となってしまう。

M&Aの成功には、経済合理性だけでなく、株主/経営者/従業員の気持ちも重要だ。そういう意味でホールディング経営はM&Aしやすいと思う。

前述の大坪社長も、

「うちのグループ企業の社歴を全て足すと500年超えるんですよ。重要な価値観やマーケティング/バックオフィス機能などは共通化しても、会社の歴史や文化を一つにまとめるのは無理があると思っています。」

とおっしゃっていて、とてもハラオチした。

また、長い歴史の中で、自社内では活かせていない事業がある場合、事業撤退や事業売却という決断がアトツギに迫られる。これもホールディング経営じゃなくてもできることだが、社内への影響も含めて、別会社化されていた方が新陳代謝はやりやすいだろう。

★★★

自社に取り入れるかどうかは別として、ホールディング経営というトレンドを知っておくことは有効だろう。読んでみて損はない一冊。

(ご参考)この本の目次
はじめに:「メリット・デメリット思考」では決断できない
第1章:なぜホールディング経営が選ばれるのか?
第2章:矛盾をマネジメントするホールディング経営
第3章:軸を据えポートフォリオで成長する
第4章:経営人材を育むためのグループ組織改革
第5章:ホールディング経営における財務・資本モデル
第6章:今、見直されるファミリービジネス
おわりに:経営者の思いの数だけドラマがある


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