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tomokosan.s
2023年10月11日 23:38
波の音がゆっくりと遠ざかって、軽い眩暈が襲う。あと一呼吸、ひとつだけ数を数えたら、このまま目の前の彼女を押し倒してしまうかもしれない。我慢が限界に達しそうだった。次に息を吸う瞬間、ポケットの中に入れたiPhoneが鳴った。「はい、もしもし…」俺は落胆と安堵が混ざり合ったような、微妙な気持ちを抑えなら電話に出た。相手はマネージャーだ。「元気か?飯は食べてる?」とまるで母親のように心配
2023年5月21日 22:59
疲れていた。ひとりになりたかった。ずっと、憧れていたアーティストの世界だったのに身を置いてみると皮肉なものだ。自分の意図するものとは全く違う解釈をされ、言葉は独り歩きをし、イメージはどんどん崩されていく。音楽だけを聴いてほしい。紡ぐ言葉だけを受け取ってほしい。ただそれだけなのに…いつからか、それ以外で注目されるようになった。俺はSNSを捨て、極力人目を避けて過ごす事を望んでいた
2023年5月28日 22:28
ママが言ってた日本人…ってこの人?どこかで見た事あるような…どこだっけ?思い出せない。ママが知り合いから頼まれて、面倒を見ることになった日本人の男の子。暫くこの島に滞在すると聞かされてたから、どんな子かとドキドキしてたけど…想像してた人と全然違う。ラフに整えられた短い髪、薄いシャツから綺麗に鎖骨がのぞいている。腕には程よい筋肉がつき、大きな手と長い指が大人っぽい。口元にたくわえら
2023年6月4日 13:37
二日間、誰にも会わずにひたすらベッドで眠り続ける。新鮮なフルーツとシリアルがキッチンに届けられていて、時々起きては口にした。後はミネラルウォーターをサーバーから、たっぷりと注ぎ、飲み干し、また眠った。三日目の朝、電話のコール音で目が覚めた。「おはよう!さすがに寝てばかりじゃ、体によくないわよ…迎えに行くからランチでもどう?」コンダクターの女性の声。さすがに心配をかけてしまったようだ
2023年6月7日 22:52
ママに頼まれて、マーケットで買い物をする。シリアル、オートミール、ミルク…アボガド、バナナ…ベジタリアンの人って初めて会ったけど、本当にこんなシンプルな食生活なんだ…不思議な感覚になる。私は会計を済ませると、荷物を車の後部座席に置いた。夕方には、彼のコンドミニアムに行く事になっていた。それまでに心を落ち着かせないと。私は軽くシャワーを浴びて、濡れた髪を乾かす。何て言おう…軽
2023年6月9日 23:33
あんなに大きな声で顔を真っ赤にして叫んでいる。ちょっと面食らいながらも俺は断わる理由もなくOKをした。携帯と鍵だけをポケットにしまい、ビーチサンダルを履く。「とっておきの場所があるの。凄く夕陽が綺麗なんだよ。大好きな場所なの。あなたもきっと元気になるよ。」そう言うと、並んで歩き始める。長い髪が揺れる度に、ほのかな香りが漂う。短めのTシャツから、腰に青いバタフライのタトゥーが見えた