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#エッセイ 記事まとめ

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noteに投稿されたエッセイをまとめていきます。
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#エッセイ部門

Wow-WowWar-そこに意思はあるんか。

気持ちのいい秋晴れ、平日に休みをとった。 来年から小学生になる長男の就学時検診があり、午後から幼稚園を早退してはじめて小学校にいく。次男もプレスクール。子どものイベントが重なると、どうしてなかなか回らなくなる。フレックスなので在宅でもなんとかなったけれど、思いきって一日有休にした。気持ちが楽である。 朝のバタバタをやり過ごして長男を送り出し、一息つく。次男とパートナーは2階の子ども部屋で遊んでいる。ざっくり片付けを済ませてソファにもたれこんだ。ここのところデスクワーク続き

娘を畳で産んだ話。

私は30も半ばにして注射を心底怖がるような女だ。チクッと可愛らしい音で形容されるあの痛みが怖い。 だから妊娠が発覚したとき、歓びの次にやってきたのは出産の恐怖だった。 鼻からスイカ、お股から赤ちゃん。 諸先輩方は壮絶な例えを使って後輩たち恐れさせてくる。 先にこの修羅場を潜り抜けた友人たちも、強烈な出産ストーリーで私を震え上がらせた。 絶対に、絶対に回避せねばならない。 そうだ 無痛で、産もう。 無痛分娩。字面がそのまま私の望むものを表している。 即座に無痛分娩が可

生まれて初めてメガネを買った私、その姿を見た友人が私に放ったひと言

私は幼少期からずっと視力がいい。学校の視力検査ではずっと両目1.5をキープし続け、大人になってからも裸眼のままで視界は良好。そのため、メガネをかける必要がなかった。がしかし・・・ 実はひそかに憧れていた。 メガネをかけることに。 頭が良さそうに見えるし、もしかしたらなんかビミョーな私でも少しぐらいはカッコよく見えるかも、などといった淡い期待を抱いたりしていたからだ。 日常的にメガネをしなければならない人からすれば、極めてワガママで贅沢な願望なのだが、そこはまさ

あの花屋さんのような人でありたい

 仕事帰りに立ち寄った花屋で自宅用の小さな花束を買い求めたところ、満開のラナンキュラスをいただいた。  私は13年前に母を、夫は2年前に父を亡くしている。  それぞれ仏壇は実家にあるのだが、部屋にも小さな遺影を置いてお茶やお花を供えている。いつもは自宅近くのスーパーで食材買い出しのついでに花を買っていたのだが、生花販売コーナーは18時閉店のところが多い。残業が続くと花を買いそびれてしまう。  冬の間は室温の低さのおかげで花も長持ちしていたが、梅雨入り以降は萎れるのも早い。先

奇跡って本当に起こるんだなあ

いつものようにスタバで作業をしていると、女性がすぐ横に立ち止まった。 なんだろうと思って振り向くと、彼女はぼくの目をじーっと覗き込んでいた。 「あなた・・・旅行の?」 「え?」 「あなた以前、旅行のお仕事をされてなかった?」 「はい・・・。え、もしかして」 「やっぱり! 中村さんでしょう? えー、なんてこと! 私あなたと昔、オーストリアのインスブルックへ行ったのよ! 」 「あ~! あのときのまりこさん! 覚えてます! なんという・・・!」 それは2012年8月

ガソリンを入れる、コロッケを揚げる

夏には少し早いけれど 夏は夜、だと思う。 高校生で、初めて枕草子を読んだときは感動した。 春はあけぼの、夏は夜、秋は夕暮れ、冬はつとめて。 ああ、まったくその通りだ。 春になったら使い倒そうと思っていたバルコニーは、早々に午後の日差しに焼かれてしまった。 極端に、暑いか寒かで、なかなか快適には使えないなあ、と思っていたけれど この季節の夜。 夕暮れの、少しあと。 太陽の残り香と、デスクライトで照らされたバルコニーの幸福たるや。 仕事が終わって、体力が残っているそのときに

傘とネクタイピン

人生で一度だけ、告白をした事がある。 付き合ってください、とは言えなかった。 「ずっと好きでした」 その言葉を伝えるだけで、精一杯だった。 *** 高校生の頃。 駅を降りて高校に向かって歩いている間に、突然、スコールのような雨が降ってきた。 私は傘を持っておらず、走ったけれど、学校まであと半分という所で諦め、本屋さんの軒下で雨宿りをする事にした。 その時、傘をさした一人の先輩が、私の前を通り過ぎた。 その先輩とは、一度も話したことはない。 先輩が、しなやかな身体を使っ

95歳のおばあちゃん

わたしの祖母は今年95歳の誕生日を迎えた。 戦争時代を駆け抜けた過去と未来を懸け橋する貴重な存在。 長寿大国と言われるここ日本の象徴であった。 祖母の姉と兄にあたる子が生後、間もなくして亡くなった。 次産まれてくる子は長生きできるようにと願いを込めて、祖母にはツルヨと名付けられた。 鶴は千年 亀は万年 ありがたいことに十分名前にあやかってご長寿である。 祖父は10年以上前に他界した。 以来、祖母はひとり暮らし。 高齢なこともあり同居や施設暮らしも提案したが、

ラジオ 深夜特急を聴きながら

TBSラジオで「朗読 斎藤工 深夜特急 オン・ザ・ロード」が始まった。 『深夜特急』といえばバックパッカーの愛読書であり、バイブルとも称される沢木耕太郎の名著だ。 その昔、友人からすごく面白い本があるよ、と勧められた。一人の青年(著者)がインドのデリーからイギリスのロンドンまで乗り合いバスだけを使って旅する話だと言う。これは面白そうだ、読んでみたいと思った。でもその反面、こんなことも思った。 そんな旅、男だからできるんだよね、読んだらきっと女の自分には到底できない旅だろうか

ピアスと父と…父のピアスの穴は、わたしが開けました。

「一緒に、あけるぞ!」 そう言って、バツンとわたしの耳に穴を開けたのは、他ならぬ実の父でした。 もともとファンキーでアクティブな父。 自分が、明るい色に自宅で髪を染めたとき、 染粉が余ったからと 「なぁ、塗ってやるって!」 と言って、 今で言うインナーカラーにされたのは、 わたしが中3のときでした。 受験なんておかまいなし。 「余ってるのに勿体無いだろ?」 と笑顔で言い切り、受験を考慮して、ハーフアップの下のところを 有無を言わさずに、染め上げました。 (今で言う裾カラー

ドイツ閉店法 寝坊した日のこと

先日、久しぶりに寝坊をしてしまった。 仕事には間に合ったけれど、ヒヤッとした。 寝坊をすると、ある一日のことを思い出す。 今日は、ドイツの閉店法について。Ladenschlussgesetz 私が学生だった頃、私の住んでいる街の商店街は、土曜日は14時までしか営業していなかった。 因みに、日曜日は営業していない。 学生寮は、街から少し離れたところにあったのでバスを利用していたが、そのバスは土日は一時間に一本しか走っていなかった。 私はある時、予定より大幅に寝坊をしてし

ある夜の、サウナ室内で

銭湯にいるおっちゃんたちはとてもユニークだ。 各地域の銭湯でおっちゃんの生態も違うのかもしれない、とさえ思う時がある。 僕は大阪の銭湯でアルバイトをしていた時期があった。銭湯の浴室内を点検で見回る機会があるのだが、彼らはみな、幸せな、いや、完全に力が抜けきっている、脱力した表情を浮かべながら、湯に浸かっている。 スタッフの僕は知っている。 客観的に彼らの表情を見ていると、1日の疲れを癒し、肩まで湯に浸かり、銭湯の暖簾をくぐることでしか感じ得ない幸せが、浴室にあることを知っ

父のお土産

「お土産」が好きだ。 旅のお土産はもちろん、たとえばコンビニで買ってくれたちょこっとした何かでもとても嬉しい。 母方の祖父はお土産をしょっちゅう買ってくる人だったそうだ。 夜中に酔っ払って帰ってきては、ぐっすり眠っている幼い頃の母たち(6人姉弟)を片っ端から叩き起こしていたという。 「キャラメルやチョコレートなんてなかなか買えなかったから嬉しかったよ。」 「アイスキャンディーなんか取り合いして食べたっけね。」 祖父の夜中のお土産は母たち姉弟にとって、とても嬉しかったようで

靴を探しに~初めてのGUCCIで泣いた話

良い靴を買おうと決めた。 今季買ったBIRKENSTOCKは2足ともめちゃくちゃ気に入っているけれど、何せショートブーツとボア付きサンダル。春が来たら履けなくなってしまう。 カレを買ってエルメスの魅力に取りつかれた私は、ひそかにほくそ笑んだ。そうだ、エルメスで靴買えばいいじゃん。1つ買えばまた欲しくなる、そこはエルメス沼の入り口だ。 問題は私の足。マノロ?ルブタン?おいしいの?な幅広甲高ワガママフットはヨーロピアンとまさに逆。たぶん入らないけど、エルメスの靴、一度でいい