teaまるお
モテるのはどんなオトコ??カフェで繰り広げられる女子たちの会話から、その謎を解き明かすエッセイ風連載小説。
teaまるおと申します。 現在、ライターの仕事をしています。もともと脚本家としてキャリアをスタートしましたが、映像業界に未だ根強く残るパワハラ、モラハラ、イジメ等々そしてギャラ未払い(約100万円ほかタダ働きは数知れず)にウンザリし、今はそこから離れた場所で細々とライター活動をしています。 脚本家としては劇場公開作品を2つ(1つは東京国際映画祭のある部門に出品、もう1つも某映画祭に出品)、その他映像作品を複数本書き、プロットもいくつか書きました。 ずっと脚本仕様の
今行っている美容室あるいは理容室、通って何年になりますか? 私は今の美容室に行くようになってちょうど1年になりますが、その前の美容室には20年ほど行っていました。成人年齢の引き下げによって使いにくくなりましたが、少し前までは20年といえばこのフレーズ「生まれた子が成人になる」それほどの期間です。 気になりませんか? 20年通っていた美容室から今の美容室に変えた、その理由。 それはとても些細なきっかけから起こった、とても大きな出来事でした。 20年通っていたその
スタバが「なんとなく」苦手だ。 今でこそスタバは全国どこにでもあり、イオンモールとかアウトレットモールではあって当たり前のような存在だが、スタバが日本に上陸した1996年当時、既にオトナ年齢だった私はコーヒーを飲む習慣がなかったこともあり、スタバデビューの機会を完全に失っていた。 初めてスタバに行ったのはおそらく2000年代に入ってからだったと思う。 その時には世間的にも私的にもスタバのイメージが定着していた。 「おしゃれ、コーヒー通、センスいい、意識高い系」
数年前に親父が亡くなった。 その時は悲しいよりも、正直ホッとした。お酒に溺れてロクに仕事もせず、日々母が苦労しているのを見ていたから。 高校を卒業したのち、私は大学進学のために上京した。 都会に憧れていたわけではなく、とにかく田舎を出たかった。窮屈でイヤなことばかりだった田舎から、一日も早く出たかった。 小学校低学年から小学五年生までイジメられていたのもあるが、中学に入ったころから、家では親父とはほぼ毎日といっていいくらい言い争いをしていた気がする。
ウイルスは目に見えない。顕微鏡をのぞかない限り、おそらく一生目にすることはないだろう。 人々はその見えない敵に怯え、恐れる。それはまるで自分が暗闇の中にいて、どこに何がいるのか全くわからないという恐怖だ。 もしウイルスが目に見えるものだとしたら、ワクチンや特効薬がなくても人はそれほど怖がらないのではないかと思う。だって、目に見えるならそれに触れないよう、関わらないようにすればいいのだから。 けれど残念ながら、近い将来においてもウイルスが肉眼で可視化される可能性は高く
最初に断っておきますが、YouTubeにあがっているような面白いむき方を意識的にやるのではなく、あくまで無意識的にむく場合の話です。 いわゆる、コタツに入ってみんなで団らんしながらおもむろにミカンを食べる、みたいなとき。 私が今までに遭遇した「むき方」はおもに2つ。 1つめはフラワー系。 ミカンのヘタあるいはお尻から放射線状に皮をむいていく、おそらく一般的かつメジャーなむき方です。 そして2つめ、ワイルド系。 侍が刀を振り下ろしたかのような真っ二つに割るむき方・・
好きな人・モノ・コトについて私は時々なぜそれを好きになったのか、そのマイルーツというか発端について考えるのですが、今回は今最も好きなアーティストについて書いてみようと思います。 藤井風さんです。 藤井風さんを知ったのは2020年の秋ぐらい、CSでMTV VMAJ 2020の受賞作品として選ばれていた「何なんw」のMVを見たのが最初の記憶です。 「な、な、なななな・・・」と歌い出したのち「チッ」という舌打ちが入り、そのあとカレの風貌が明らかになった時、すぐにチャンネ
ウチの近くに小さな信号機がある。 小さな道から大きな道路へ合流する車のための信号機なのだが、利用する車が少ないことから、歩道側が赤であっても車が来ていなければそのまま渡る人が多い。 ある日の午後、私はその小さな信号機へと続く道を歩いていた。視界の先では青が灯っていたが、やがて赤に変わった。それを合図に車が数台通ったが、もう車は来ない様子だった。 信号機に到着した私はいつものようにその赤信号を渡ろうとしていたのだが、私の少し前をおそらく母親であろう女性二人と小さな男の
こうして文章を書きながらこんなことを言うのはおかしいかもしれませんが、私は文章を書くことに対して苦手意識があります。 あるトラウマのためです。他の言葉に言い換えるとしたら「呪い」です。 小学1年生の時、読書感想文の課題がありました。提出後に担任の先生からひと言・・・ 「まるお君は作文が下手だね」 彼女は笑いながらそう言いました。指導者として率直な指摘だったのかもしれませんし、あるいはちょっとしたジョーク的な意味合いがあったのかもしれません。 その先生は既に
平日の午前中、だいたい10時から11時ぐらいの間に、ウチの前で賑やかなパレードが行われる。小さな子供たちがちょっとおバカなことを言って保育士さんを困らせたり、テンションが上がり過ぎて奇声を発したために怒られたりしていたり。 数人の保育士さんがそんなカオスな状況を何とか取りまとめて散歩に出かける日常の風景だ。 人によっては騒音にしか聞こえないであろう子供たちの騒ぎを、私は日々楽しみにしている。なぜなら、私にとってその声は「エネルギーの塊」であり、聞くだけで元気をもらえる
Vol.23 最終回「さよならゲーム ~人生は続く、そして~」 先日、カフェで笑顔の素敵な女性店員さんが手渡してくれた白いハンカチ。洗濯をしたのち、どこかにしまい込んでいたアイロンを引っ張り出して、何年か振りにアイロンをかけた。 アイロンをかけながら、ふと思う。 昔読んだ村上春樹の小説で、アイロンをかけることで主人公が自分の気持ちを落ち着かせるくだりを読んだ気がする。 実際に自分がアイロンをかけている時は落ち着きよりも緊張が大きかったが、幾度目かのシューという蒸
Vol.22 延長十二回表裏「絶望と希望、その先にある虹の橋を越えて」 あの日以来、週末はただひたすら眠っていた。 目覚めては眠り、また目覚めては眠る繰り返しの中で時々、現実と夢の境目が曖昧になる。現実はカレをあの日のカフェに連れ戻し、夢があの日を忘れさせてくれた。 眠っている時だけが、カレのココロを慰めてくれた。 あとどれくらい眠れば自分は起き上がれるのだろう。微睡の中でぼんやりそんなことを思いながら、ありふれた言葉がやたらと頭の中に浮かび、そして消えてゆ
Vol.21 延長十一回裏「慣れれば馴れるほど失っていくもの」 軽いめまいを感じながらも、カノジョたちの会話を聞き逃さんと、カレは微かに震える手でゆっくりと、コーヒーを口にした。 コーヒーは、カレにとって自分を支える唯一の「仲間」だ。どこでも、そしていつだって、カレの隣にはコーヒーが寄り添っていたから。 「例えば、仕事とか趣味とか、やるべきことや、やりたいことをひたむきに頑張って、その結果モテてるっていうオトコだったら全然アリなんだよ」 「モテることが目的じゃないから
Vol.20 延長十一回表「慣れれば馴れるほど失っていくもの」 靴を履き、自宅を出ようとドアに手をかけたその時、玄関先に置いてあるスノードームが目に入った。カレはゆっくりとそのスノードームを逆さにし、元の場所に戻した。 ドームの中でキラキラと雪が舞う。 電車の中でふと思う。 カレがカフェ巡りを始めてから、もうすぐ一年になる。 数か月前まではオンナゴコロなど微塵もわからなかった。しかし今は違う。 カフェで数多の女性たちが繰り広げる本音トークを聞き続けてきたこ
Vol.19 延長十回裏「趣味とは、純粋なる本能と不純な欲望の合わせ鏡」 「正解は、占い」 「占い?」 「それも『手相』」 例えば、血液型占いなら基本的には4つ、星座占いは12のタイプしかないので「君だけ」という特別感がない。 しかし「手相」は一人ひとり違うので「君だけ」という特別感のある鑑定ができるのだ。 「手相見てくれるオトコがいたら見てもらいたくない?」 「うん!」 なるほど、思わずカレも唸る。 「趣味を訊いて、ドライブとかゴルフとか読書とか映画鑑賞
「あなたの命、売ってくれない?」 そんな殺し文句で藤田優司が入社したのは、ひなた不動産『特別賃貸営業部4課』通称 4課。 急激な「事故物件」人気によって需要に供給が追いつかなくなっていた。他殺や自殺、自然死などで発生する事故物件を待っていたのではせっかくのビジネスチャンスを失うことになる。 そこで4課が始めたのは事故物件を作ること。廃墟や事故現場などで彷徨っている幽霊と交渉し自社物件へと誘う。幽霊に部屋に住んでもらい事故物件にするのだ。 今や事故物件は「生まれる」