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#エッセイ 記事まとめ

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noteに投稿されたエッセイをまとめていきます。
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2018年10月の記事一覧

母の優しさと不安と・・・今の僕

「ゴホッ!ゴホッ!!ゴホッ!!!」 気がついた時にはどこか知らない家にいて、おばちゃん、と呼びそうなくらいの年齢の女性が僕の背中に手を入れて 「少し落ち着いたかな。このままゆっくりさせてあげてね。」 と母に伝えていた。 その家から自宅までどうやって帰ったかは覚えていない。 でも1つ覚えていることがあって、自宅のテーブルに座った僕は恐怖の中で目の前に置かれた温かな紅茶を見ていた。 これが5歳だった僕の紅茶のある風景。 大人になってからも疲れたり無理をすると喘息が出

あいしているから

息子氏の国語の教科書(三省堂出版)にある「あいしているから」という文章がすてきだ。 宿題で音読してくれるのだけれど、そのたび、ぐっときて、何かがのどにせまってくるくらい、いい。 あらすじはざっとこんな感じ。 主人公のもぐらのモールくんが弱っていた雛を助けて育ててあげるのだけれど、モールくんは、その雛が大きくなっても鳥かごの中で飼おうとする。パパやママが、野生の鳥だから離してあげなさいと言っても「あいしているから」、一緒にいたいと言う。 そんなある日、おじいちゃんがモ

渋谷の真ん中で

今日、すごい瞬間を見た。 渋谷のスクランブル交差点を、ちょうど渡り終えたときだった。アメリカ人とおぼしき観光客のカップルが、楽しそうにキスをしていた。 「ああ、こんな姿を撮らせてほしいな」心の中でそう思ったけど、話しかける勇気なんてさらさらなかった。 ところが。その瞬間、カメラを持ったおじいさんが突如現れた。 おじいさんはにっこり笑うと、カップルに向けてこう言った。 「ショウミー、ユア・ハピネス・キス!」(あの幸福そうなキスを、もう一回してみせて!) そう言われたふ

100円ショップで働く男の値段

こんにちは! フルカワカイです。普段は京都を舞台にした小説をアップしていますが、今日は番外編として、前職で人材派遣会社につとめていた時のエピソードを紹介します。つい最近までFacebookで友人限定で公開していたのですが、そろそろ主人公のタカシさんも怒らないだろう(というか連絡先も知らないのですが)と思い、noteでも楽しめるようにしました。派遣登録って実際行ってみないと分からないし、事実、どんな風に仕事紹介がされているのか謎めいてますよね。これは個人的なエピソードにもなりま

裸を撮らせてた花魁VTuberにいま、何ができるか

おいでなんし〜♨️日々性のことについての動画をyoutubeに投稿している、バーチャル花魁由宇霧(ゆうぎり)と申します〜♨️ 普段の動画はこんな感じ♨️ 先日こんな記事が出ていました。 ドキっとする、わっち。 そりゃね自己肯定感低低でエロ好き好きの学生時代を過ごしましたから。 すっぽんぽん写真なんてめっちゃ送ったし撮られたよ。いつだってリベンジポルノに怯えているよ。 でもね、そりゃ当時から 裸の写真送っちゃダメだよなんてもちろん言われてたの。 そりゃわっちもわかって

未来を見てすすむ人、過去を見てすすむ人

最近、人には未来を見ながらすすむ人と、過去を見ながらすすむ人がいるのではないかと思っている。 未来を見ながらすすむ人は、自分の将来やこれから起こることを楽しみにしたり、目標をきめたり、ああなりたいと憧れをもったりして、それを原動力に前に進むことができる。 過去を見ながらすすむ人は、自分の今までしてきたことを積み上げて、そこから材料をあつめてこれからすることを決めて前に進むことができる。 「夢組と叶え組」の話でいうと、未来を見ながらすすむ人は夢をもてる「夢組」で、過去を見

吉玉サキと本名の私

先日、仕事の関係である場所に行き、数人の方と名刺交換をさせていただいた。 名刺を渡すときは当然、「はじめまして、吉玉です」と言う。 家に帰ってきて、「そういえば私、吉玉を名乗ることにまったく違和感がなくなってるな」と気づいた。 6月、はじめて編集者さんとビデオチャットで打ち合わせをしたときは、「吉玉さん」と呼びかけられるたびにいちいち「えっ、私ですか?」と思った(言わないけど)。 それからたった4ヶ月で、もう吉玉に慣れている。意外と適応が早い。 そういえば、結婚した

名字なんてさ。

たとえば仮に、旧姓でのわたしのフルネームを「佐藤ぽこ」、新姓でのフルネームを「鈴木ぽこ」としよう。 結婚をして入籍届を出すと、その後いろいろな書類の名義を「佐藤」から「鈴木」に変更してゆくことになる。 その中で感じたのは「ああ、佐藤ぽこという人物はこの世からもういなくなったのだ」という、なんともいえない思いであった。 * * * 結婚前は今考えればたぶん浮かれていて、というか幸福感がまさっていて、実際に必要な手続きや、自分に起こる変化というものにあまり思いが馳せられて

Who are you? 問題

前回は、自分のペンネームについてあれやこれやと書いたわけだが、親切な知り合いから、世の中の大半の人にとっては、「お前のことなんかしらん」「聞いたこともない」というのが現実だから、まずはnoteを読む人々に自己紹介をした方が良いと指摘された。もっともなことである。 えーと、改めて自己紹介をすると、私はものを書いて生きている40代女子。本とかインタビューとか、エッセイとか。 いままでに出した本は4冊。パリが舞台の本が2冊(「パリでメシを食う。」「パリの国連で夢を食う。」、バン

はじめて同性とキスした時のこと

 たどり着いたフランスの片田舎の駅のホームは夏の日差しを反射して鏡のように白く、私は炒り豆になった気分で列車が吐き出す無数のバカンス客に紛れ迎えを待っていた。ホームステイ先のホストが迎えにきてくれる、と留学エージェントからの手紙には書いてあった。  夏期休暇に一ヶ月半の語学留学を決めたのは、友達のいない夏の過ごし方を知らなかったからだ。大学はつまらない。滑り止めで受かったこの学校なんかに私の話し相手になる人間はいない。一方でパリを選ばなかったのは、私なぞがあの華々しい街でや

妻の写真。

病気になってから写真が変わりましたか? よく聞かれる質問だ。 写真が良くなったとか、撮らなかったものを撮りだしたというような趣旨の答えを期待されるのかもしれないけど、現実はそんなにスイーティーではない。 撮りたいもの撮るというシンプルな価値観なので、健康だろうが病気だろうが撮る写真は変わらない。べつに写真家だからとかではなく誰だってそうだとおもう。 ネコが好きな人はネコばかり撮るし、美味しいご飯が好きな人は料理の写真ばかり撮る、自分が好きな人は自分ばかり撮る。 スマホ

やりたいことがない人とある人は何がちがうのか考えた(夢組と叶え組の話)

ちょうど去年の今頃、こんなnoteを書いた。 やりたいことがある人とない人を「夢組」と「叶え組」として、やりたいことがないのは悪いことではなくて、役割がちがうだけだからチームで組み合わせるととてもいいよ、というようなことを書いた。 わたし自身が「叶え組」で、やりたいことがなくても得意なことやできることがたくさんある。だからやりたいことがなくても大丈夫。それは今でもほんとにそう思うんだけど、どうしてこうなったんだろう、ちがいはどこにあるんだろうと考え続けていた。 いち

「M-1敗退、そして、財布は盗まれた」の巻。気づき。仮説と検証。

10月3日。水曜日。「M-1グランプリ2018」の2回戦。 イラストレーター工藤陽之とともに、コンビ名「306号室」にて挑む。ネタ上のミスはなかった。しかし、1回戦、新宿シアターモリエールにてそこそこウケていた漫才も、2回戦、雷5656会館では会場反応が薄かった。 結果。敗退。 当日、他コンビ漫才を見た上での“気づき”を書こう。(天竺鼠、馬鹿よ貴方は、チョコレートプラネット……力あるプロの方々が、同じ舞台に上がっていた) ------------ ----------

「よくある話」だからつらくない、わけじゃない

娘の発熱で保育園に呼び出され、終わっていない原稿に悲鳴を上げながら園に猛ダッシュ、病院、「寝ついたら続きを書こう」とソロバンをはじいていたけれど40度の熱にひんひん泣き続ける娘につきっきりでそれも叶わず。 昨日はそんな一日だった。今日は夫と二交代制を取って、朝7時に家を出て昼過ぎまでゴリゴリと原稿を進めた。 そしていまこうしてnoteを書きつつ、「きついなあ」と思っている。 1歳を過ぎて、夫婦ともに仕事量が産前レベルに戻ってきた。でも、子どもはいくら大きくなったと言って