見出し画像

738.愛されていることを知らない少年と、愛したいと思う少年と、愛する少女のお話。

A story about a boy who doesn't know he is loved, a boy who wants to love him, and a girl who loves him.
【お馬鹿なcoucouさんの逆さま論㉗】


さいかちの木©NPО japan copyright association coucou


世の中で、
in the world,

一番価値のあるもの、ってなんでしょう?
What is the most valuable thing?

それは、人をどれだけ、どこまでも、
It is how much, how far,

愛することができたかどうか、
whether I could love

信じることよりも、
than to believe

どこまで信じれるのかどうか、
how much can you believe

そんな気がする。
That's how it felt.


第1集.愛されていることを知らない少年と、愛したいと思う少年


愛されていることを知らない少年と、
愛したいと思う少年が出会った。

愛したいと思う少年は、
愛されていることを知らない少年を思い続けた。

二人には、共通の夢があった。
その夢は、夢のまた夢。
だけど、みんなに馬鹿にされても、
その夢を信じ続けた。

二人の夢は、
絵を描くこと、
そして、有名になることよりも、
何よりも上手く描けるようになりたい、
そう、考え続けた。

二人は、
会えば、絵の話ばかり。
他人が見たら異常かもしれない。
だけど、命がけ、真剣だった。

二人で、
スケッチに出かけた。
道端にひっそりと咲くの花が好きだった、
愛したいと思う少年。

愛されていることを知らない少年は、
街路樹とか、木の葉を書き続けた。
それは、お互いが違う道を選んでいたからかもしれない。

愛したいと思う少年は、
いつも、
愛されていることを知らない少年を見続けていた。
そして、目と目が合うと、お互いは視線を避ける。

愛したいという少年は、
いつも遠くを見つめていた。

愛されていることを知らない少年は、
いつも近くばかり見つめていた。

それは、遠くを見つめ続ける壮大な夢と、
近くの現実だけを追いかける、
愛されていることを知らない少年との違いだった。

愛したい少年は、
その違いを超えて、語り続ける。
時には、言い合いになったり、
時には、笑い合ったり。

でも、冗談なんてない。
二人とも真剣だったから。

二人は、いつも現実から突き放されていた。
学校には、友だちもいない。
だから、孤立していたもの同士が自然と、
繋がる。

なんだろう?
この寂しさと楽しさは?
なんだろう?
この嬉しさと喜びは?

まったく、言葉にできない。
まったく言葉にならない。

いや、言葉なんて必要ない世界。

愛したい少年は、
さいかちの木の下で生まれ、育った。
愛されているのがわからない少年は、
銀杏の樹の下で生まれ、育った。

二人とも、それぞれの樹に神秘性を感じていた。
なぜなら、一緒に生き続けているという実感があるからだ。

そして、その二つの樹は、
人に優しくて、道行く人々を守り続けていた。

秋には、輝くほど色づいた木の葉となって、町中を楽しませる。
風に舞い、風に散り、踊る。
まるでたくさんの人たちを楽しませて、
この世を去っていく様を見せ続けていく。

そして、春とともに若葉が目立ち始め、やがて青々と大きな葉となる。
この姿を60年以上、二人で眺めてきた。

その後、二人は40年以上の歳月とともに離れ離れとなった。
だが、心はひとときも離れたことがない。

なぜなんだろう?

その40年間の間に会う時があっても言葉を交わすときはない。
きっと、誰も信じてはくれないことだろうけれど、二人はいつも話し続けていた。

そう、声が聞こえる…。

もし、生霊というものがあるのなら、
それかも知れない。

人は生きていても、生霊という魂で繋がっていることを感じていた。

愛されていることを知らない少年と、
A boy who doesn't know that he is loved,

愛したいと思う少年が出会った。
I met a boy I wanted to love.

そして、二人の前に、
And in front of them

愛する少女が二人の前に現れた。
A beloved girl appeared in front of them.


数十メートルあったてっぺんが切られている、さいかちの木(樹齢数百年)家はすべて解体された。©NPО japan copyright association coucou


二人は、いつも一緒だった。
せまい机に並び、絵を描く。
だけど、さすがに狭すぎるので机は二つになった。
何時間も会話もなく、音楽さえなく、
聞こえるのはペンや筆を洗う音と紙を触れる音。

カリカリ、カリカリと虫が鳴くような音。
今でも、不思議な空間。

でも、いつも愛したいと思う少年の視線を感じていた。
二人は、会っていても、会わなくとも同じ。
言葉なんて必要がない、不思議の世界。


そのまま40年という歳月が過ぎていった…。


そこに、突然と現れた愛する少女がいた。
愛したいと願い続けていた、少年との出会いは、
まるで、魂の出会い。まるで磁石のようにひきつけ合う。


それは、恋でも、愛でもない。
It's neither love nor love.

ふたつの魂が、ひとつを求めた。
Two souls want one.



それは、親子、兄弟、姉妹、友人という魂よりも激しく、結び付く。
まるで、前世から待ち望んでいた再来のように。

そして、わずか17か月で愛する少女から、愛したいと思う少年は去っていった。それは、1年前の7月2日のこと。

そして、その物語には終わりがない。
物語は、いつもはじまり。

そして、1年後。

二股に分かれているさいかちの木©NPО japan copyright association coucou




愛する少女と、愛されていることを知らない少年は、運命の悪戯のように出会う。それは、愛したい少年から、愛を知らない少年へのあの世からのメッセージのように、40年間の空白を埋めようとした。

そして、愛する少女を、愛されていることを知らない少年に託した。
それは、愛したい少年からの最後の頼みだった。
彼の17か月は17年以上の時のように、愛する少女のことだけを思い続けていた。

もう少し、あと少しだけでも生きたかっただろう。
もう少し、もう少しだけでも愛していたかっただろう。


愛したい少年は、愛する少女を永遠に愛したいと願っていた。
それ以外何もいらないし、必要はなかった。


残されたものの悲しみと、
With the sorrow of what is left behind,

去っていく者の悲しみがある。
There is the sorrow of the departed.

残されたものには愛が残り、
Love remains in what is left,

去っていく者には、心が残る。
For those who leave, the heart remains.

愛したい少年は、
The boy who wants to love

愛されていることを知らない少年に、
To a boy who does not know that he is loved,

愛する少女によって、
by the girl I love

愛しているという事実を伝えようとした。
I tried to tell you that I love you.

愛されているという真実を伝えようとした。
I tried to tell you the truth that you loved me.



愛されていることを知らないcoucouさんは、
愛したい少年のことを「さいかちの少年」と名付けた…。


さいかちの木©NPО japan copyright association coucou

第2集.さいかちの木の下の少年


 
さら、さら、
 
彼の住む家は、巨大なさいかちの木の下で生まれ育った。
この木の実で、昔は手でもむと泡が出るため、石鹸の木とも呼んでいた。
若葉は天ぷらで食べたり、実は去痰薬、利尿薬などでも使われていた。

さいかちにも花が咲き、花言葉がある。
「壮大」「見かけによらず」という意味だけど、あまりにも大きな巨木なのだが、見かけによらず人に優しいという意味があるそうだ。
その理由は、防風林、防御林(棘があるため)、家具や、建築材としても利用されていたという。
 
さら、さら、さら、
 
彼は樹齢四百年ともいわれ、さいかちの木の下で生まれ、育った。その巨大なさいかちの木は、まるで家全体を包み込むかのような大きな木。さいかちの木は、漢字では皁莢、梍と書く。
 
少年の名前はゆきみという。
 
彼は、この生まれた場所が大好きだった。この周辺は大自然と目の前にある山々、目の前にある川の渓流。子どもたちにとって天国のような場所だった。夏はその川で魚釣りや水遊び。さいかちの実で手を洗い、魚をバケツで育て、川からは川ぜりを取り、周りはブドウ園から畑ばかりの遊び場だった。

昭和39年(1964年)10月10日に第18回東京オリンピックが開催した。私たちが10歳のころだから、小学校4年か5年生のころ。このさいかちの木のある前がオリンピックの自転車競技場だった。ここも、オリンピック後は私たちの遊び場。まだ戦後、わずか19年後のことだった。

当時は、電話も、テレビや冷蔵庫、空調機なる贅沢なものはなく、飲み水はすべて井戸水。家の中は裸電球の時代。でも、彼の家は当時肉屋さんをしていたので、近所の人たちの冷蔵庫代わりのように商売を独占していた時代だった。

さいかちの木の実©NPО japan copyright association coucou


 
何もない時代。
でも、何もない時代だったけれど、こんな幸せなときはなかったと今でも思う。どこも、争いごとなどなくて、お互いが支え合っていた時代。貧しくとも、笑顔が絶えない時代。
何もないことでみんなが本当の幸せを味わっていた時代。
 
さら、さら、さら、さら、
 
彼と、coucouさんは小学生のころから絵描きともだちだった。
紙と鉛筆さえあれば何でもできるし、どこえでも行ける、毎日が絵を描くことだけが楽しみで、会えば話すことは絵の事ばかり。
当時は数少ない仲間たちが彼を入れて4人。
心を許し合える親友たちだった。
 
だけど、現在は、coucouさん一人だけが残された…。
みんなこの世からいなくなってしまったから。
 
 
少年は、大人になっても少年の目を保ち続けていた。
子どもの頃から自然や花が好きで、夕焼けが大好き。山々に向けて夕陽が沈む。晴れた日、青々とした空に浮かぶ雲を眺めるのが好き。彼には、見えない友人たちはたくさんいて、いつもひとりで語りかけ続けていた気がする。

彼は、自然と言う友人たちと、四人の仲間以外いないし、誰とも口を利かない。そのため彼を覚えている者はほとんどいないかもしれない。
誰もが彼は言葉を話せないのか、話さないのか、話したくないのかわからないが、無口、無言というイメージ強い。
だけど、当時は、私たちの仲間の中では一番話し続けていた。

決して寡黙ではない。
 
そう、群れを成すのが嫌いだった。
そのため人との関係は一切絶っていたようにも思える。
正直、それだけ絵の好きな仲間たちだったが、彼の絵は上手くなかった。ただ、違いは精密で丁寧さは誰にも負けない力を感じていた。


©NPО japan copyright association coucou



そして、あれから40年の時を過ぎて、愛する少女が、彼の作品を見せに来てくれた。最初は何の意味かもわからない、でも、意味があると感じていた。
彼の最後の作品は、逆に誰にも負けない作品、独自性のあるアートに変身していた。coucouさんは魂を揺さぶられた…。
 
改めて、振り返って思うことは、人生で60歳代まで、あのときの少年のまま、純粋の固まり、様々な嫌な思いさえもすべて封印してこの世を去ってしまった。
 
あれから、1年、現在は建物が壊されて、主を失ったさいかちの木だけが残されている。

coucouさんは彼と高校生から離れ離れとなっても40年近く彼のことが頭から離れなかった。それが何を意味するかはわからない。
おそらく彼も同じだと確信している。
その空白の40年間でもお互いが1年に数回出会うときがある。お互いに何も会話はない。なくても何も問題がない。言葉なども必要ない不思議な誰にも理解のできない関係かもしれない。
 
ただ、40年前と現在で何が変わったのかと問われれば、信じられないことかもしれないが、何も変わらない。お互いがあのときのままの少年になっているからだ。
彼が私を見つめる、私はわざと目をそらす、そしてまた見上げると、彼はあのときのままの優しい目と、ニャリと微笑む。そう、もうお互いが話すことなどないくらい凝縮した少年時代だった気がする。

 
さいかちの木は「再勝」とも言われている。
サイカチの花言葉は、「壮大」「見かけによらず」、見かけによらずとは悪い言葉ではなくて、サイカチの木は見た目こそ良くないが、優しいという意味通り。
彼はサイカチの木と同じように、まるで道端にひっそりと咲き誇る名もなき草花のように、人を、人間を愛し続けているような気がしている。
 
 
 
彼は、私を愛し続けていた。
  
 
さら、さら、さらとかれの風が吹く…。
 
 


小さな光のオーブが見える©NPО japan copyright association coucou


 

第3集.あれから



 もう、どのくらいのときが過ぎたのだろう。
 
四人の少年たちは、いつも明日を信じてきたのに、
それが四人の唯一の希望だったのに、
生きている意味もわからず、
存在さえも彷徨い続けて、
少年たちは信じられないくらい、思いやった。
 
もう、夢見るころは過ぎ去ってしまったのに、
あの日の姿は今でも蘇る。
そこには、みんなが在る。
 
会えていた時間も、会えない時間も、同じ時間。
その時間にいまだに距離がない。

 
さら、さら、さら、

 
もう、どれくらいのときが過ぎたのだろう。

 
愛されていることを知らない少年と、
A boy who doesn't know that he is loved,

愛したいと思う少年が出会った。
I met a boy I wanted to love.
 
そこに、
there,

愛する少女が二人の前に現れた。
A beloved girl appeared in front of them.
 
そして、
and,

愛されていることを知らない少年は、愛を知り、
A boy who does not know that he is loved knows love,

愛したいと思う少年は生れてはじめて愛された。
The boy who wanted to love was loved for the first time in his life.

それが、愛する少女からの言霊。
That is the Kotodama from the girl he loves.

魂から、魂への伝言だった。
It was a message from soul to soul.


小さな光の輪オーブ、太陽ではない©NPО japan copyright association coucou



 
六〇年という歳月も、わずか一年半という時も、離れ離れの四〇年も、
何も変わらない時という時間のいたずら。
これは、何を意味するのだろう。
 
この世からいなくなっても、彼の言葉と思いが届く。
彼はcoucouさんに何を望んで、何を託すのだろう。

彼の言葉が聞こえる…
 
彼はいう、幸せだったんだよ、って。
He said he was happy.

彼はいう、こんなにも人を愛せたんだよ、って。
He said, how could he have loved someone so much?

彼はいう、こんなにも人を愛したんだよ、って。
He said he loved people so much.

彼はいう、後は任せたよ、って。
He said, leave the rest to me.
 
 
そして、いつもここにいる、と。
And I will always be here.
 


第4集.はじまり 


愛したい少年によって、
愛する少女と出会った、愛されていることがわからない、知らない少年。

愛したい少年は、愛する少女を通して、愛を知らない少年に何かを伝え続けようとする。まるで40年間のひずみを埋めるかのように、彼女から彼の言葉が伝えられ続けている。

彼女は、愛を知らない少年である私に、ただ愛を伝え続ける。
きっと、彼女も意味がわからないかもしれない。
彼のたくさんの写真、彼と彼女の笑顔の写真。
彼の描き続けていた未完成の作品群、彼の生前のたくさんの言葉。
彼のつくった創作家具や部屋の写真。
絵の道具、トレース代、部屋の隅々までの写真。
元気なころの写真。
抗がん剤で骨と皮だらけの変わり果てた姿。

最後の終わりの写真…。

彼を愛し続ける少女は、
愛を知らない少年に、彼の愛を話し続ける。

なんだろう?

すべて意味を感じる。

きっと、誰に話しても信じてはくれないし、信じてくれなくともいい。
だけど、感じてしまう、彼の考えや思い、願い、祈り、幸せと無念。
そこには後悔などひとかけらも存在しない。

しばらく、coucouさんは頭の中が混乱に陥っていた…。
今まで、たくさんの人たちと離れ、別れて来たのに、
こんなことは生れてはじめての経験だった。

なんだろう?

何を託したの?

はじまり、って?
何がはじまるの?
もう、coucouさんは終わりなんだよ…。

任せる、って?
何を任すというの?
もう、coucouさんには何も力を残されてはいないんだよ…。


今度、coucouさんが行く新しい病院は彼が入院していた最後の病院となった。



ここにも光が©NPО japan copyright association coucou



これにも何か意味があるの?

愛する少女は、coucouさんに語り続ける。
まるで、愛したい彼から頼まれたかのように。
愛されていることのわからないcoucouさんに、愛する少女の口を借りて、身体を借りて、彼の言葉が次々に聞かされる。

愛する少女は、愛した事実を伝えているのだけれど、coucouさんには愛されている人を伝えているように聞こえてしまう。

なんと不思議な出来事なのだろう。

愛する少女と、愛したい少年はたった1年と7か月なのに、coucouさんには10倍の17年以上に感じる、それぐらい深い濃厚な時間なんだろうか?

愛する少女は、coucouさんの目の奥をじっと見る、coucouさんも少年に戻り、その少女の瞳の奥を見る。

そして、感じたことがわかった。
それは、愛したい少年と、愛する少女は同じバイブレーション、いや魂を感じた。そう、二つの魂が一つ。

目の前の瞳の中に愛したい少年が在る。

ああ、ここに在るんだ。

愛する少女は彼のすべて持ち物のすべてを受け取った。それは、物だけじゃあない。彼の思い、彼の願い、彼の祈り、そして彼の愛…。

愛する少年と、愛したい少年の凝縮された1年と7か月、372か月、11,160日間、267,840時間。もしかすると、17年分以上の時かもしれない。

丁度、地上に出た蝉たちが、わずか1週間ぐらいでこの世を去るけれど、蝉時間は1日が1年、7日間で7年、人間時間で10倍の70年と言う話もある。
だから、人間の考えた時間の間隔などあてにならないかも知れない気がする。

愛する少女は、本気で人を愛したかった。どんな愛も一時的であったり、いずれ、やがて冷めていくものかもしれないが、愛されることよりも、ただ愛したかった。
それは、どんなに人に愛されたとしても、愛する愛は自分で実感できるものだから。実感したかった。
それは、破滅的かもしれない、それは、狂うほどかもしれない、それは、思う以上に苦しいかもしれない。
でも、真剣に人を思い、人を愛することは変わらない。

愛したいという彼は、愛されたことがない。coucouさんと同じで愛されているのがわからなかったのかもしれないが、愛したい、愛するという気持ちは持ち続けていた。それは、少年のころとまるで変わらない。

その寂しさと、幸せと喜びが、絵を描くことだった気がする。

その後、coucouさんはメジャーな商業の世界に飛び込み、彼は自分の技術を磨き続けていた。彼は、商業ペースで自分の魂を売りたくなかったからだ。二人はこのことで、いつも激論を交わし続けてきた。

こうして、二人はこのさいかちの木のように太い枝が2つに分かれて行った気がする。


愛する少女は、彼の最後の最後まで看病し続けた。まさか、こんなに二人で愛し合っているのに。だから、彼がこの世を去るなんて信じられなかった、信じなかった、ただ一日でも長く生きていてほしいと願い続けた。

彼だって、同じ。
人生で生まれて初めて女性と出会い、真剣に心底信じきり、愛したのだから。だから、とても苦しく、辛くともその愛を愛し続けた。

でも、生きられない。

愛したいという少年は、この1年と7か月のすべての時間、24時間を彼女の事だけを考える時間にした。
何かをしてあげたくとも、何もしてあげられない苦しみ。
自分より残こしてしまう彼女のことばかりが頭の中をめぐる。
だから、一日でも、わずかな時間でも生きようとした…。

愛する少女は、してあげる苦しみと、してあげられなくなる悲しみが同居する。それでもできることは涙を見せないこと、悲しい顔をしないこと、甘えてはならないこと。二人はまるで合わせ鏡のよう。

残されたものの悲しみと、
With the sorrow of what is left behind,

去っていく者の悲しみがある。
There is the sorrow of the departed.

残されたものには愛が残り、
Love remains in what is left,

去っていく者には、心が残る。
For those who leave, the heart remains.


少女は彼を一部散骨した©NPО japan copyright association coucou

第5集.去りゆく者の優しい嘘


愛されたい少年は自分の死期を知っていた。
だが、それでも奇跡は信じていた気配がある。

彼はたくさんの嘘を残し続けた…。

それは、愛する少女からの彼の言葉の中にたくさんあった。
愛されたい少年は、いつのまにか愛する少年に変身していた。
それは、いかに少女の悲しみを少なくできるか、考え続けた。こんなに愛してしまったのだもの。
こんなに、命以上の愛があるなんて、彼はその奇跡を感じていたが、同時に、これ以上とない苦しみを味わう。すでに病気のことなど眼中になくなっていたかも知れない。

人生で生まれて初めて愛を知る。
人生で生まれて初めて愛する人がいる。
そして、離れなければならない。

なんて、苦しい愛なのだろう。去りゆくもののいのちよりも、残された者のいのち。こんなに愛おしいものはない。
本来であれば、ひと時も離れたくないし、話したくはない。最後の最後までいのち尽きるまでそばに居たい。人間なんだもの、誰もがそう甘えたい。だけど、彼は一切の無理強いはしない…。

彼は、夜、愛する少女の家の外に静かに立ち尽くす。
誰にも気づかれないように…。
もしかすると、愛する少女にその気配だけは伝わっていたかもしれない…。

あたたかな光、かすかに聞こえる話し声。
彼はそのたびにやきもちもあるし、嫉妬だってある、憎しみだってあって当たり前。こんなにも愛しているのだから。
それでも朝早く、夜遅く、身体がちゃんと動かないのに立ち尽くす。
それは、神さまに与えられているいのちの時間。

さいかちの木はその少年と少女の姿を見続けていた…。

彼は、少女に会うたびに、冷静な冷たい顔で、笑顔で答える。自分の今の状況をわきまえながら、少女をこれ以上傷つけたくない。
だから、こんなに苦しい愛の話などできないし、しないと決めた。

そう、何にも気にしていない素振りという優しい嘘をつきまくる。そのたびに少女は安堵を覚える。少女も誰も傷つけたくないと思う。
お互いがずうっと一緒にいられない悲しみと、わずかでも過ごせる命の時間を味わうことしかできない。

しかし、こんなにも、どうにもならないくらい愛していることが伝えられない苦しさは、去り行く病よりも苦しい。
これが彼の選んだ最後の少女に対する愛情表現。

少女にはその意味がわからなかったぐらい、少年の態度がぶっきらぼうで冷たく感じていた。少女も泣き続けていたかもしれないが、少年は一人になるといつも、ただ泣き続けていた…。

彼の愛は、
嘘をつき通すこと、
それをcoucouさんは優しい愛の嘘と名付けた。

これは、悲しい話なのだろうか…。
これは、とても辛い苦しい話なのだろうか…。

そんなことはないよ、と言う彼の声が聞こえる。


愛されたい少年は、愛する少年と変わり、愛されていることがわからないcoucouさんに少女からの伝言を伝えたかった。

少女にも、coucouさんにも幸せになって欲しい、愛して欲しい、という言葉を残したかったことが、意味がやっとわかった気がする…。

それが去りゆく者の最後の愛、願いだったんだね…。



不思議な石が挟まれている©NPО japan copyright association coucou

運命のいたずらか、奇跡なのか彼と私の好きなアンデルセン童話「空飛ぶトランク」がこの日のnoteの最後の順番となった。
意識なしのあくまでも一枝さんの作品順が、この7月2日となった。

毎日紹介する歌も「私たち上手くやっていたよ」となった、
どうしてこの曲なの?

なんだろう?

何もかもが何だろう?

彼はcoucouさんに何を伝えたいの?

でもね、本当はわかっているよ…。

ここでは、書ききれない…。

わかるよね、親友なんだもの。


さら、さら、さら、

彼は風で話しかけている。
 
そこは、サイカチの木とともに。


残されたものの悲しみと、
With the sorrow of what is left behind,

去っていく者の悲しみがある。
There is the sorrow of the departed.

残されたものには愛が残り、
Love remains in what is left,

去っていく者には、心が残る。
For those who leave, the heart remains.

愛したい少年は、
The boy who wants to love

愛されていることを知らない少年に、
To a boy who does not know that he is loved,

愛する少女によって、
by the girl I love

愛しているという事実を伝えようとした。
I tried to tell you that I love you.

愛されているという真実を伝えようとした。
I tried to tell you the truth that you loved me.


                     2023年7月2日記 coucou

1年目の命日に、coucouさんの親友の愛したい少年、と愛する少女へ贈る。

彼の名は、いしいゆきみという。

また会えんことを。



©NPО japan copyright association 

coucouさんです~
みなさん、ごきげんよう~
久しぶりの10,000文字突破~

本日は、彼の命日。
このしばらく、彼のことが頭から離れられない。
たったいまも、coucouさんは、その意味を考え続けている。

偶然が偶然重なり、まだまだ偶然の出来事が続く。
これから入る病院も偶然が重なる…。
coucouさんは偶然とか、必然なんてあまり信じないんだけれど、この偶然に出会った少女との出会い、今日まで、あまりにも不思議な出来事が続いているんだ。

この数か月、coucouさんは公私ともに苦しい日々を送っていた。
病気ももちろん、たくさんの仕事もかかえ、止めるわけも行かない。スタッフに迷惑もかけれない、家族を不安にもさせれない、病院との軋轢も続く中、入院も手術も問題があり過ぎ伸ばし続けていた。

そんなときにこの少女と出会った。
そして、coucouさんは何か救われたような錯覚が起こる。

いや、救われた…。

なんだい、ゆきみ。
後を頼むって、なんだい?
coucouさんが頼むんだよ~これから~

さいかちの木の下にひっそりと咲く「つゆくさ」花言葉は、尊敬、なつかしい関係、恋の心代わり、密かな恋という、彼の好きな花が咲き誇る ©NPО japan copyright association coucou


さて、ここまでの長編を読んでいただいて、心から感謝申し上げます。
これは、すべてリアルストーリー。長い話で申し訳なく思います。
ここまで読むのは大変だと思います、後書き以外、書くのも昨日まるまる一日かかってしまった。

考えて見たら初期のcoucouさんは毎日10,000文字を書き続けていたんだよね。567で世の中が止まって時間がたっぷりあったんだもの。

今思うと、ちょっと信じられない~
5,000文字以内にしたのも今年に入ってからかなあ~

このnoteの世界はよほど素晴らしくないと10,000文字の世界はむずかしい。その理由はほとんどの人がスマホで読んでいるんだもの。
coucouさんは、スマホ文字だとどうしても読みにくいからパソコンで打って、読み続けているけどね。

そして、続編物でなくて、1回1回の読み切りシリーズにしている。読む人も大変だもんね。そこがペーパーブックとデジタルの世界の違いのひとつかも知れない。



さて、次の最終の大仕事が待っている。
3日に出発準備、4日は、coucouさんの久しぶりの講演会。
3年間、オンラインか限定YouTubeでの講演だった。
久しぶりのライブ、約200名参加。
これは今年の初めから日程が決まっており、キャンセルができない。
だから、この最後の大仕事が終われば、安心して病院送り~

でもね、とっても嬉しい~

だって、反応がすぐさま出るんだもの。
無人のオンラインとはわけが違う。
これはね、正直、coucouさんの欲求不満のはけ口なんだ。

人前で話すこともできなかったcoucouさん、noteにも書いたけれど豚も褒められれば木に登ってしまった。
でも、登ったら最後、降りられない~

もちろん、毎回のことだけど、観光の時間なんてない。

4日の朝5時に出発、羽田に7時出発、福岡空港に11時くらい、それからバスに1時間乗り、現地に1時30分着。下打ち合わせして午後3時から5時まで2時間。その2時間のために往復、12時間、驚き~
講演終了後施設見学、午後6時より意見交換会2時間。8時過ぎにホテル。
翌日5日、午前10時出発、午後4時過ぎに地元着、暗くなる前に父の月命日、父と母に会いに行くんだ。
10年間毎月どんなことがあっても会いに行く約束をしている。

おっと、大切なnoteは生れてはじめてスマホから送ることになっちゃう~
ああ、失敗したらどうしよう…。
ああ、書くひまもない…。


では、また、あしたね~

have a wonderful day


文字数13,272文字

【和訳】"私たち上手くやってたよ" So Good -Halsey-


※後半に、Ⓒひとえさんコラボ作品~【ちょっぴり悲しい癒しの童話】聞いてくださいね~



coucouさんのアーカイブス(過去作品)だよ、みてね~

coucouさんのお気に入りnoteの素敵なクリエイターさんたち~


coucouさんのホームページだよ~みんな、みてね~

Production / copyright©NPО japan copyright coucou associationphotograph©NPО japan copyright association Hiroaki
Character design©NPО japan copyright association Hikaru


©NPО japan copyright association

82.【癒しの朗読】

【アンデルセン童話】空とぶトランク(ハンス・クリスチャン・アンデルセン)【癒しの読み聞かせ】

Ⓒ一技(ひとえ)YouTubeチャンネル~仕事やご自宅、眠る前にスマホでもお聞きくださいね。


Ⓒ一技(ひとえ)【癒しの朗読】

【アンデルセン童話】空とぶトランク(ハンス・クリスチャン・アンデルセン)【癒しの読み聞かせ】


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?